ワン、ツー、拳
「皆さま、ごきげんよう。リリィ・フェザースノウと申します。この度は、ロゼリナ様主催のお茶会にお招きいただき、至極光栄でございますわ」
そう言い終えてから、リリィは手始めに丁寧にカーテシー——軽いジャブをお見舞いする。
その所作は洗練されていて、火の打ちどころのない完璧な所作であった。
リリィの纏う風格に気圧されながらも負けじとロゼリナもジャブを返す。
「……あっ……あら、ご丁寧にどうもありがとう。お座りになって」
口の中が渇き、ロゼリナの第一声が裏返る。
言葉の合間に小さく息を吸い、震える心を押さえ込むように吐き出す。
「……早速だけれど、お茶を——」
そばに控えていた侍女にロゼリナが指示を出そうとしたその瞬間——リリィの涼やかな声が響いた。
「いえ、大変申し訳ありませんが……こちらの茶器ではいただけませんわ」
リリィがすかさずワンツーパンチを繰り出す。
「「「なっ!?」」」
彼女が放った衝撃的な一言に、三人は目を見開いた。
咄嗟に繰り出されたパンチを必死に避けながら、カミラとドロアが追撃にかかる。
「そそ、そんな!ロゼリナ様が用意してくださった紅茶が飲めないっていうんですのぉ!?」
「なっ、なっ、なんて非常識な!!︎」
しかし、二人の追撃もリリィはバックステップで後ろに半歩ほど後ずさり、さらりとかわす。
「いいえ、誤解ですわ。……マチルダ!」
リリィが名を呼ぶと、筋肉質な侍女が一人。ガゼボに音もなく現れた。
彼女の小脇にはスチール製の折りたたみ椅子。そしてもう片手には、重厚感のあるティーセットが添えられていた。マチルダはテーブルの側に椅子をセットし、卓上にティーセットを丁寧に置いた。
リリィは椅子に優雅に腰掛けながら、話を続ける。
「わたくし、こちらの特注の鋼鉄製ティーセットでないとお茶がいただけませんの。……何故なら、普通の茶器ですと破壊してしまうからですわ」
「「「こっ、鋼鉄製!?破壊っ!?」」」
三人が同時に叫んだ。
テーブルに三人分の動揺が走り、ティーカップの紅茶が波立つ。
「ええ。わたくし、こう見えて……ほんの少しだけ握力が強いんですの……」
少し目線を落としながらリリィが呟いた。
(どこからどう見ても、強いでしょう!!)
三人の心の声が綺麗に揃った。
戦いは始まったばかり!
また、次回
毎日が筋曜日!




