シリルからみたリリィ
シリルはカイゼルの執務室を訪れていた。
ソファに座り、紅茶を飲んでいた彼はふと思い出したように顔を上げた。
「……そういえば。兄上、ロゼリナ嬢の茶会にリリィ嬢が招待されたらしいです」
「リリィ嬢が?……あの、グランシェ家のか?」
向かいのソファで報告書に目を通していたカイゼルは、驚きながらシリルへと視線を向けた。
「そうです」
シリルは静かに頷き返す。
ロゼリナ・グランシェは令嬢泣かせで社交界では有名だった。デビュタントを終えたばかりの令嬢を呼び出しては権高に振る舞い、相手の反応を見ては優越感に浸っているという。
「しかし、なぜシリルがそれを……?」
「いつもの通り彼女自身が声高々に吹聴して回っていたので……」
カイゼルは納得したように頷いた。
「そうか。それは……心配だな」
「いや、兄上。あのリリィ嬢ですよ?」
「ああ、あのリリィ嬢だ」
「兄上の、あのには別の意味がありませんか?」
「いや?シリルの意味と同じだと思うが……?」
「んんー、……なるほど」
「リリィ嬢に何もなければいいのだが……」
深刻な表情で虚空を見つめるカイゼルへ、軽い口調でシリルが言う。
「でもリリィ嬢なら絶対に色んな意味で強いと思うので大丈夫だと思いますよ?」
「いや、だがな……」
そうこぼしながらカイゼルの視線は再びシリルへと向けられる。
その瞳にはリリィの無事を願わずにはいられない、真剣な眼差しが宿っていた。
「いくらリリィ嬢が胆力に優れていて、強いといっても……彼女の心が傷つかないということはないだろう?」
シリルは、はっと息をのんだ。
確かにそうかもしれない。
彼女の屈強な見た目に惑わされ、リリィなら何がきても大丈夫だろうという勝手な考えに囚われていた。
カイゼルは彼女のことを”一人の人間”として対等に扱っているのだと悟り、シリルは反省した。
「そう……ですね」
シリルは眉を下げたまま、少し俯いた。
そのまま短い沈黙のあと、ふっと息を吐いて顔を上げる。
「やっぱり、兄上は凄いです」
「何がだ?」
「そういうところが、ですよ」
そう言いながら、今度はしっかりとカイゼルの瞳を真っ直ぐ見つめる。
尊敬と少しの照れが混ざったような笑みを浮かべながら、シリルは静かに目を細めた。
次回は、いよいよ女同士のマウント合戦が始まります!
毎日が筋曜日!




