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静かな帰り道

その後、リリィはいくつかの商品を吟味し、ガルドに頼んで屋敷へ届けてもらうよう手配する。

滑らかな動きで重さや握り心地を確かめていく彼女の姿は、まるで舞踏会用のドレスを選ぶかのようだった。


やがてリリィの買い物がひと段落した頃、カイゼルも鉄製のリングを手に取った。


「カイゼル殿下は、そちらを?」

「ああ、これなら自室でもトレーニングが出来そうだ」

「まあ!自室で?それはストイックなことですわ」


リリィが尊敬の眼差しを向けると、カイゼルはわずかに表情を崩し、小さく咳払いをした。


「……いや、それほどのことではない」

「いいえ、それは立派なことですわ。誰もが出来ることではありませんもの」


一瞬の沈黙ののち、カイゼルはリリィへと視線を向け、ふっと笑った。


「……そうか。ありがとう」

「いいえ」


リリィも穏やかな笑みを返した。




買い物を終えた二人は、ガルドに礼を告げて店を後にした。


外へ出ると、沈みゆく陽が静かな街並みを橙に染めながら、今日の終わりをゆっくりと告げようとしていた。


「あっという間に、夕暮れ時ですわね」

「そうだな」


カイゼルは頷きながら、隣を歩くリリィに視線を向けた。


「リリィ嬢」

「なんでしょうか?」


リリィはカイゼルへと視線を向けた。


「今日はとても充実した一日だった……」


そう言って彼は、ふとスワンボートでの出来事を思い出す。


「スワンボートがあんなに速いものだとは……知らなかったよ」


自然と口元がほころんだ。


「お望みでしたら、次もご一緒いたしますわ」

「……また今度な」

「ええ。また今度」


当然のことのように交わした約束に、二人の間に柔らかな沈黙が訪れる。

水面を揺らす光がきらめき、心地よい余韻がその場に残っていった。




湖からの帰り道、リリィは足取りも軽く歩いていた。


「マチルダ、本日はとても……」


少し言葉を切ってリリィは遠くを見つめる。


「……とても有意義な一日でしたわ」


口からついて出た言葉は彼と同じものだった。自然と口元がふわりと緩む。


マチルダは隣を歩くリリィをちらりと横目で見やり、ほんの少しだけ口角を上げた。

これにて、湖編は閉幕です

また、次回

毎日が筋曜日!

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