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実演紹介

「リリィ嬢、この壁についている鉄のリングはなんだろうか?」


二人の視線の先——壁際に、左右で一組となる鉄製リングが取り付けられていた。それは店内の奥にいくにつれて段々と高さが大きくなり、最後は天井付近に達している。


「こちらの二つのリングはそれぞれ均等な幅で対になっていますわ。その真ん中に体がくるように立ち……」


説明しながらリリィは最上段のリングの前へと進む。そしてそれぞれに指をかけ、壁に体を寄せるようにして前腕だけで懸垂を始めた。


「この様にして全身を持ち上げ、鍛えるのですわ!」


リリィは手本をみせるようにゆっくりと繰り返してみせる——だが、徐々に彼女の瞳に静かな闘志が揺らめき始める。

上腕二頭筋、広背筋、僧帽筋。それら全てを意識しながらひたすら体を持ち上げる。


「……フッ!……フッ!……」


周りの音が消え、己の呼吸だけが耳にこだまする。


筋トレとは自分自身との戦いだ。

今日より明日、明日よりも明後日。さらなる高みを目指し、筋肉を磨き上げる。

体幹にブレが生じないように意識するのも忘れない。


「——嬢……リリィ嬢!」

「……えっ?どうかいたしましたか?」


はっとしてから懸垂の手を止め、彼女は肩越しに振り返った。


「集中しているところ、すまないのだが……他の商品も見てみたいと思ったんだ」

「そうですか?では……」


リリィはリングから指を離し、体を完全にカイゼルに向けてから、小さく頭を下げた。


「カイゼル殿下、申し訳ありません。一旦、スイッチ入ってしまいますといつもこうなってしまいますの……」

「いや、謝らなくて大丈夫だ。……ところでリリィ嬢、こちらの袋も売り物なのだろうか?」


カイゼルは店の隅に積まれているずっしりと重量感のある革袋の山に視線を向けた。


「ええ、そうですわ。こちらの大きさの違う袋には砂と小石がはいっているのです。こちらを……」


大きなものを一つ手に取り、軽々と肩に担ぎ上げる。

脚の筋肉である大腿四頭筋やハムストリングスを意識しながらスクワットを始める。


「フッ!……」

「リリィ嬢!次にいこう」


また始まったとばかりにカイゼルが彼女を即座に引き止める。

このまま放っておいたら彼女は勝手に無我の境地へと向かってしまうと悟ったのだ。


「え?」

「リリィ嬢、あれは……」


カイゼルが指さした先には鎖付きの鉄球が壁にかけられていた。彼女が革袋を置き、説明に向かいかけた——その時。


「こちらは」

「待て待て待て、店内でそれを振り回すなよ!」


焦ったように足早に近づいてきたガルドが咄嗟にリリィの腕を掴んで止めに入る。

リリィは少しムッとしながら彼の手をやんわりとふりほどいた。


「失礼ですわね。そんなことはいたしません」

「やりそうだから怖ぇんだよ!」

「——ふっ、くくっ」


突如、響いた笑い声に二人はカイゼルに視線を向けた。

彼は手の甲を口元に添え、おかしそうに肩を震わせている。


「すまない……くくっ……」


二人の軽妙なやり取りと筋トレを心から楽しむリリィの姿を思い出し、自然と笑みが溢れる。


「まあ!笑っていただけたのでしたら筋トレ冥利に尽きるということですわ」


そんな彼に対し、リリィも嬉しそうに柔らかく微笑んだ。

勝手に筋トレを始めてしまうリリィ

また、次回!

毎日が、筋曜日!

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