恒例の腕相撲!
「リリィが来たってんなら、あれをやらなきゃ始まらないだろ!」
声高らかに言い放った後、ガルドはレジの奥へと素早く引っ込んでいく。戻ってきた彼の腕にはずしりと重い樽が抱えられていた。
それを店の中央へドンッと据え置く。
「あれ、ですわね」
すぐに察したリリィは樽を挟んで向かいに立ち、右肘を天板代わりの樽の上へ置いた。
ガルドも同じように左肘を置き、互いの掌をしっかりと掴み合う。
にやりとした笑みを浮かべながらリリィを見つめ、彼は聞く。
「準備はいいか?」
「ええ、いつでもどうぞ」
「では……始め!」
号令と同時に、リリィの前腕が唸りを上げる。
瞬きするほどの間に勝負は決していた。
激しい音を立てながらガルドの腕は外側へと勢いよく叩きつけられた。
その衝撃で樽のリベットが外れ、側板がバラバラと崩れ落ちて床に散らばる。
「クソッ!やっぱり今日もリリィの勝ちか」
「ガルド、カイゼル殿下の前ですわ。そのような汚い言葉は謹んでくださいませ」
「ああ、わりぃわりぃ。そうはいってもなぁ。いつもの癖が抜けねぇんだよ」
「仕方がない方ですわね」
軽い口調で「すまん、すまん」と適当な返事をしているガルドと一緒に床に散らばった樽の残骸を拾い集める。
二人が片付けをしている間、カイゼルは唖然としたまま立ち尽くしていた。
阿吽の呼吸で繰り広げられているやり取りを、理解する前に勝敗が決していた。
(……いや、待て。何なんだこれは)
そんな彼の心境をよそに、二人は当たり前のように談笑を続けている。
しゃがんでいるリリィの背に向けてカイゼルは問いかけた。
「リリィ嬢?……この方と仲がいいのだな」
「あらっ!」
彼女にしては珍しく慌てながら立ち上がり、カイゼルへと体を向けて説明を始めた。
「カイゼル殿下、紹介が遅れてしまい大変申し訳ありません。彼はわたくしの幼なじみであるガルド・ブランフォードですわ」
「……幼なじみ」
「ええ。彼とは幼い頃からの筋トレ仲間ですの」
「筋トレ……」
「親父にしこたま鍛え上げられたから二人ともこんな図体がでかくなっちまったんだよなぁ」
両手に樽の残骸を抱えたガルドも立ち上がりながら会話に加わる。
「ええ。そうですの」
「なるほど、そんな経緯があってその姿に……」
カイゼルが納得げに頷いた。
「さあ、それでは商品を見て回りましょう」
樽の残骸をガルドに渡したリリィは気を取り直して、カイゼルとともに店内をゆっくりと見回り始めた。
似たもの同士、現る
また、次回!
毎日が筋曜日!




