魔力より筋力
王宮の馬車からカイゼルが降り立つと、孤児院の敷地内からリリィと一人の子供の会話が聞こえてきた。
「ぼっ、僕……リリィみたいに魔力が多くないみたい……。だから強くなれないよね?」
声を震わせながら語る少年に、カイゼルは胸を痛めた。
魔力の保有量。それは生まれながらに決まる、残酷な現実だ。
(生まれが悪ければ、魔力を使う術を学ぶことすらできない。孤児院の子供たちも……きっとそうなのだろう)
カイゼルは沈痛な面持ちを浮かべる——だが、聞こえてきた彼女の声音には悲嘆の色など微塵もなかった。
「あら、そんなことはありませんのよ?魔力が少なくても、皆さんが等しく持っているもので勝負すればよいのですわ」
俯きながら話す男の子をリリィの優しい声が包んでいく。
「皆が、持っているもの……?」
「そう……それは、筋肉ですわ!筋肉は裏切りませんもの。鍛えれば鍛えるほどに、わたくしたちの想いに応えてくれる」
「……筋肉」
「魔力をもっている者は魔力が剣にも、盾にもなる——しかし、筋肉も剣になり、時には盾にもなりますわ。ですから、魔力が少ないからと諦めることはありませんのよ」
「諦めなくて……いいの?……」
男の子はパッと顔を上げて、お腹の前で両手をギュッと握りしめる。そしてその小さな瞳でリリィを真剣に見つめた。
「ええ。己を信じ、鍛えれば自ずと答えは見えてくるものですわ。一緒に頑張りましょう」
「……はい!……僕、頑張ります!!」
男の子は力強く頷いた。
「ふふっ、その意気ですわ。それでは、皆さんの元に戻りましょうか」
「はいっ!」
二人の足音がゆっくりと遠ざかっていく。
「筋肉……か」
——彼女らしい答えに心の奥底に温かなものが落ちていく。
カイゼルはふっと笑みをこぼしながら、孤児院に向かって歩き出した。
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