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持ち手がとれたティーカップ

予想だにしない言葉にセラフィナは、卓上のティーカップへと視線を落とした。


「あらっ?壊れてなど——」


言いかけたその時——持ち手部分がソーサーの上へコトリと音を立てながら落下した。


「えっ?」


全員の声が揃う。


「ですので、紅茶は一杯で差し支えございませんわ」


リリィはそう呟きながら、ほんの少しだけ眉を下げた。

その表情をみたセラフィナとカイゼルは彼女の言いたいことを瞬時に悟った。


(握力がお強いのね……)

(握力が……強いのか)


セラフィナは柔らかな表情を浮かべながらリリィに声をかける。


「償いなんていいのよ。ふふっ……それだけしっかり握れるということは、健やかな証拠です。むしろ羨ましいくらいだもの」

「ご寛大なお心遣いに感謝いたしますわ」


セラフィナの一言で、室内に再び穏やかな空気が流れはじめる。

リリィの表情も少し和らいだようだ。


「カイゼル、本当に平気そうに見えますので席に戻りなさい」

「……はい」


命じられたカイゼルは元いた場所へと戻っていく。

セラフィナがコホンと咳払いをしたあと、静かに褒賞の儀を執り行い始めた。


「それでは、そろそろ……本題に入りましょうか」


リリィは姿勢を正し、改めてセラフィナを見つめた。


「一年前。あなたはカイゼルが前線に立った時、この国の未来を一人で護った……とお聞きしました。それは事実なのかしら?」

「ええ、王妃陛下。その通りでございます」


「では、国を挙げて王族が褒賞を与えなければなりません。あなたの望みは何かあるのかしら?」

「正直、褒美などは恐縮に存じます。しかし、王族としての立場もよく承知しております。ですので、僭越ながら褒美の代わりに、述べさせていただきます」


セラフィナはリリィの言葉を肯定するように、ゆっくりと頷いた。

また次回!

毎日が筋曜日!

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