リリィ専用の二人掛けソファ
工房でカイゼルとの邂逅を終えた数日後。リリィは王宮内の応接室に招かれていた。
室内には上質な調度品が並び、王族の威厳をあらわすような厳かな空間が広がっていた。
中央には長テーブルが置かれ、それを挟むかたちで設えられた二組のソファ。その片側にはすでにセラフィナが座り、少し離れた窓際にはカイゼルが静かに椅子に腰を下ろしていた。
「……どうぞ、お座りになって」
「失礼いたしますわ」
勧められた二人掛けのはずのソファはリリィが座ると、たちまち“リリィ専用”と化した。
スカートのボリュームもさることながら、広い肩幅に堂々とした座り姿が加わると、もう誰も「お隣、いいでしょうか?」などとは言えない。
ソファがほんの少し、抗議の声をあげたのは気のせいだろう。
彼女のそんな姿を目にしたセラフィナは広げた扇子を口元に添え、思わず声をもらした。
「……まあっ!」
すぐに笑みで取り繕ったが、その目尻には確かな驚きが滲んでいた。
王族であろうと、社交界であろうと“規格外”の令嬢を目の前にしたら思わずリアクションせずにはいられないらしい。
そんな彼女らを尻目にセラフィナ付きの侍女が、丁寧に入れた紅茶をリリィの前にそっと差し出した。
「あら、ありがとうございます。……いただきますわ」
ゆらゆらと湯気が立っているティーカップの持ち手を優しく摘むように素早く持ち——一気に煽る。
「えっ!?」
部屋にいた全員が一斉に驚きの声を上げた。
カイゼルは思わず立ち上がり、リリィの元へ駆け寄った。
「火傷は!?」
表情を一切崩さず、涼しげな面持ちのままリリィはカイゼルへと告げる。
「カイゼル殿下、心配はいりません。魔力で口内と喉、胃を瞬時に守りましたので火傷はしていませんわ」
「いや、しかし……そんな……」
カイゼルは絶句しながらも心配そうにリリィを見つめる。
「皆さん、驚かせてしまい大変申し訳ありませんでした。これには理由がありますの……」
リリィはソーサーの上に戻したティーカップをじっと眺めてから、セラフィナに視線を向けた。
「王妃陛下に謝罪しなければならないことがございますわ……」
「……どういうことかしら?」
セラフィナは驚きながらも彼女に問いかけた。
「恐れながら、こちらの素敵なティーカップを壊してしまいました。後ほど、フェザースノウ家より相応の償いをさせていただきたく存じますわ」
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また次回!
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