意味深な笑みを浮かべて
カイゼルは王城まで戻ると、そのままの足でセラフィナの自室を訪れていた。用件はリリィとの会話の報告だ。
向かいのソファに座り、優雅に紅茶を嗜むセラフィナは、まさに王妃に相応しい品格と知性を持ち合わせている人物だ。
彼女ならきっとリリィの願いを聞き入れてくれるだろうとカイゼルは考えていた。
セラフィナはことの成り行きを、静かに伺っていた。
デビュタントで対面した令嬢が一年前の戦場でカイゼルの前に立ち、拳だけで敵兵を退けていたこと。
あの戦いに勝てたのはリリィの助力あってのことだったと。
最後まで話を聞き終えたセラフィナは、ゆっくりとティーカップを持ち上げた。
(……ふふっ。よく気づいてくれましたね、カイゼル)
彼女は声には出さず、密かに目元を和らげる。
口元は微動だにしない。だが、その胸の内では——。
(デビュタントでお見かけした時から気になっていましたの……。まさか、またお会い出来る機会がこんなに早く訪れるなんて…… )
と、秘かな喜びが膨らんでいた。
ティーカップをソーサーに戻しながら、セラフィナはカイゼルに視線を向けた。
「……わかりました。この事は、私から陛下にお伝えいたします」
そう言ってほんの一瞬だけ、意味深な笑みを浮かべた。
「……ご対応のほど宜しくお願い致します」
カイゼルはその反応に不思議げにセラフィナを見つめたが、すでに彼女の表情はいつもの落ち着き払ったものへと変わっていた。
工房編、これにて閉幕です
次回、褒賞の儀編スタートです!
毎日が筋曜日!




