一令嬢にすぎませんもの
その時、二人の小さな男の子が、通りの向こうからこちらへ駆けてきた。
子供たちは二人のそばでぴたりと足を止め、その頭がもう曲がらないというほど上を見上げて、口をぽかんと開けた。
そんな彼らにリリィは微笑みながら視線を落とし、眥を下げた。
再びカイゼルへ顔を向けると、静かに答え始める。
「……わたくしは、あくまであの場所を偶然にも通りかかっただけ……。それだけのことですわ」
それは肯定とも否定ともつかぬ返事だった。
カイゼルは足早に彼女よりも数歩先に進み出る——そして振り向き、立ち止まった。
そんな彼に合わせるように、リリィも足をとめた。
二人は向かい合ったまま、真剣な眼差しを交わし合う。
「リリィ嬢の功績は、十分に称えられるべきものだと俺は思っている」
彼の言葉にリリィは即座に首を振る。
「そのようなことは、わたくしにとって勿体なきお言葉ですわ。わたくしは英雄でもなんでもない……ただの、一令嬢にすぎませんもの」
「だったら大々的でなくていい。応接室でも、控えの間でもいい。ただ、君のしたことに俺たちは心から感謝している。それだけは形にしたいんだ」
熱のこもった声にリリィは静かに目を見開き、カイゼルを見つめた。
一瞬、何かを言いかけ——やがて、ふっと微笑んだ。
「……でしたら、少しだけ。場所はお任せいたしますわ」
その笑みは優しい温かさに溢れていた。
二人のあいだを柔らかな風が吹いていく。
それはカイゼルの背中をそっと押すようだった。
しばしの沈黙のあと、カイゼルはリリィに告げ始めた。
「俺は、君のような人たちを護れる国王になってみせる」
目の前に立つカイゼルの輪郭を夕陽が優しくなぞり、静かな決意をさらに際立たせる。
(やっと、伝えることができたな)
彼の目は確かな意志に燃えていたが、面持ちはどこか穏やかだった。その表情が、かすかな揺らぎのようにリリィの胸に残る。
リリィは目を細め、何も言わず——けれど、どこか嬉しそうにカイゼルを見つめていた。
やっと真実が解明されました
また次回!
毎日が筋曜日!




