表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

118/137

魔獣の住む森で

足取りが分かるように、護身用に選んだ斧で木の樹皮にバツ印をつけながら、さらに森の奥地を目指していく。


しばらくすると、小高い山の麓に辿り着いた。

そこには雨風を凌ぐには十分な岩陰があり、かつて獣が寝床にしていた痕跡が僅かに残っていた。


足に魔力を宿し、走り回っていた時に偶然みつけた場所だった。


「今夜は、久々の野宿ですわね」


さっそく寝床作りを始める。

まず、最奥まで進み、岩肌を背に、体を休めるのに適した場所を決めていく。


足元の小石や枝を払い、地面を均一になるように整え、その上に乾いた草を層になるまで敷き詰める。

革袋から油布を取り出し、広げて端を石で押さえた。


荷を用意してくれたのはマチルダだった。

別れ際にした会話が脳裏によぎる。


『わたくしは、獣棲東域へ向かいますわ!』


王宮から疾走しながらフェザースノウ邸へと舞い戻ったリリィは、マチルダの前で開口一番にそう告げた。


(皆さまを巻き込むことになってしまうのなら——いっそのこと……)


瞳孔が開き、視界が僅かに揺れる。

身体中の血が沸き立つように熱くなり、今にも暴れだしそうだった。息は乱れ、意識が飲み込まれそうになる。


マチルダはリリィの表情を一目見るなり、全てを察したように頷いた。


『かしこまりました』     


彼女は言葉少なに、いくつかの品を口紐のついた革袋に詰めてくれた。


『こちらは肩に掛けられますので、両手は空けておいてください。斧の手配はノエルに。東地区の入口付近に置かせます』

『ありがとう、マチルダ』


手際良くリリィの身なりを整えながら、マチルダは静かに続けた。


『リリィお嬢様。無事に、戻ってきてください』


いつもと変わらぬ表情——けれど、声音にはリリィの身を案じる気持ちが込められていた。


『ええ、必ず』


マチルダの想いに応えるように力強く頷き返すと、リリィは荷を携え、足早に屋敷をあとにした。

また次回

毎日が筋曜日!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ