木こりのリリィ
ヴェルティエ王国の東側は魔獣の住処が多く、“獣棲東域”と呼ばれ、人の手がほとんど入らず、原生林で覆われたままになっている。
国王であるベラミスでさえも、その土地の活用方法に頭を悩ませ、手を焼いていた。
稀に討伐部隊が足を踏み入れることはあるが、開拓までは行われていなかった。
そんな場所に、巨木を斧で打つ音が響き渡る。
斧を振り下ろすたびに地面が震え、魔力による暴風で土埃が舞う。
柄を握る手に力を込め、最後の打撃を木の根元へ打ち付けると——巨木がメキメキと音をたてながら地面へと倒れていく。
地響きが周辺を駆け、小動物が慌ただしく巣から飛び出し、鳥たちがけたたましい鳴き声を上げながら空へ向かって舞い上がった。
(……まだ……まだ足りない)
体内の魔力は枯渇するどころか全身を巡り、心臓がどくどくと脈を打つ。
リリィは完全な暴走にいたる一歩手前で、なんとか踏みとどまっていた。
倒れた木に再び斧を振り下ろし、丸太にしたものを断面に置き、ひたすら薪を作っていく。
リリィの傍らには開けた空間が広がり、薪の山が積み上がっていた。
一心不乱に作業を繰り返していると、異様な気配に体がピクリと反応した。
すぐさま手を止め、わずかに残る理性を総動員し、神経を研ぎ澄ます。
林立する木々を縫い、風を切る音が一瞬混ざる。
足元からは、地面を蹴るような振動を感じた。
(——何かが、来る!)
こちらへ一歩、また一歩と近づくごとに空気が押され、緊張が走る。
リリィは斧を地面に置き、気配の先へ向かって構えをとった。
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本日は、少し短めではありますが引き続きお楽しみいただけていますと幸いです




