斧の山
工房内ではザムエルの怒号が飛び交い、熱した鉄を大槌で叩く音が響き渡っていた。
出来上がったばかりの斧たちが、テーブルの上を次々と占領していく。
「お忙しいところ、すみません。納品数を増やしていただけませんか!」
叫びながら室内に入ってきたのはノエルだった。
ザムエルは彼女に一瞥もくれずに、作業を続けながら声を荒げた。
「俺たちだって急いでる!新しい斧の製作に——こちとらぁ、手一杯なんだよ!」
「だったら私も手伝います!」
腕まくりをしながら、ノエルがずけずけとザムエルの元まで歩いていく。
「素人の嬢ちゃんに何ができるってんだ!大人しく受け取って、さっさと早く届けてやれ!」
「私を舐めてもらっちゃ困りますよー!フェザースノウ家の侍女です。道具さえあればなんでも作れます!」
ああ言えばこう言う。埒が明かないやり取りに、ザムエルは痺れを切らしたようにさらに声を張り上げた。
「言い合ってる時間すらもったいねぇ!!やれるっていうんなら端でやれ!」
「はいっ!」
ノエルは厚めの前髪をゴムでひとつに纏め、視界を確保する。
髪の束がおでこの上でぴょこんと立った。
おかしな前髪のまま——他の職人から道具を受け取り、さっそく斧作りに加わる。
それから、ほんの数時間後。
「出来ました!!」
誇らしげに斧を掲げたノエルが大きな声で叫んだ。
「早ぇな!」
間髪を入れずに、ザムエルが顔を上げながら突っ込みを入れる。
若手の職人たちも作業の手を止め、ノエルの元へと歩み寄っていく。彼女の斧をしげしげと見つめたのち、思わず息を呑んだ。
「普通は仕上げるのに早くて半日、遅くて一日はかかるんだぞ!?」
「出来栄えもいい感じじゃないか?」
「少し離れてください!」
これ見よがしに、ノエルは斧を振ってみせる。
「どうですか?」
弟子たちから称賛の声が上がると、ノエルは腰に手を当て満足げに胸を張った。
その様子にザムエルが唖然としたのも——つかの間。
すぐさま空気を切り替えるように、拳で机を強く叩いて全員の注意を引いた。緩んでいた空気が一気に引き締まっていく。
「どうやったのかは分からねぇが、とにかく俺たちもしっかり作っていくぞ!」
「はい!」
男たちの腹に響くような返事が室内を揺らした。
また次回
毎日が筋曜日!




