王太子妃への道
セラフィナは二人を包み込むような眼差しを向けながら、円滑に進めていく。
「公募での婚約者面談にカイゼルが参加するという形ではありましたが……実は、王太子妃候補の名簿にあなたの名前も記載されていたのよ」
リリィは目を見開き、セラフィナからベラミスへと視線を向けた。彼は頷きながらセラフィナの言葉のあとを継いでいく。
「家柄といい、なにより国を重んじて行動に移すなど容易ではあるまい。他者を思いやり、護ることもできる。そんな稀有な存在を王家が放っておくはずもない」
ベラミスの言葉に、リリィは一瞬だけ息を呑んだ。だが、即座に表情を整え、深々と頭を下げた。
「勿体ないお言葉ですわ。ですが……心より感謝申し上げます」
再び顔を上げたリリィの表情には、誇らしげな笑みが浮かんでいた。
「それでは……お二人の意志は一致している、ということでよろしいのね?」
「はい」
「……はい」
「まずは、それで十分です。後日の正式な手続きについては、改めてお伝えいたします」
「今日のところは、これでよかろう。よく話してくれたな。セラフィナ、我々はそろそろ席を外そうか」
「そうですね。陛下もゆっくりお休みになられないといけませんもの」
セラフィナが小さな声で「ごゆっくり」と囁き、ベラミスと共に部屋から退出していく。
室内に穏やかな静寂が訪れる。すかさず、カイゼルが侍女たちに紅茶の用意を命じた。
手際よく準備を進めていく彼女たちを見つめながら、リリィはふっと肩の力を抜いた。
「父上もいるなんて、緊張しただろう?」
「ええ……少し」
支度を終えた侍女が、見慣れたサイズのティーカップを卓上へと差し出した。リリィは思わず目を丸くし、カイゼルへと視線を向けた。
「こちらは?」
「ん?……ああ。ザムエルに頼んで同じものを作ってもらったんだ。リリィがいつでも来ていいように」
「——っ!」
心臓が跳ね上がり、言葉が喉でつかえた。
カイゼルの言葉や行動には、いつだってリリィを重んじる気持ちが込められている。
恥じらいを誤魔化すようにティーカップを手に取り、紅茶を口にした。ルイボスティーの優しい香りが鼻腔を抜けていく。
「これは、あの夜の……」
本当の意味で心が解けていく。
自然と眉が下がり、本音がもれた。
「カイゼル殿下には……本当に、敵いませんわ」
彼女の言葉に、カイゼルは心から嬉しそうに微笑んだ。
それから程なくして、両家の意思確認も滞りなく整えられ——リリィは正式に、王太子妃となる道を歩み始めていった。
また次回
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