王妃からの手紙
身支度を軽く整え、応接室にて使者を待つ。
しばらくすると、部屋にノックの音が響いた。
「どうぞ」
「失礼致します」
王族の側近である侍従が、恭しく礼をしてから室内に足を踏み入れる。
きっちりと整えられた身なりに——胸元には王家の紋章を模したピンがシャンデリアの光を受け、煌めいていた。
「公爵令嬢リリィ・フェザースノウ様に、王妃殿下よりの御文をお持ちしました」
彼はそう告げ、ソファに座っているリリィの元へ歩み寄った。
胸元の書状入れから封筒を取り出し、両手で丁寧に差し出す。リリィも彼に倣い、丁重に受領した。
侍従は彼女に向かって、ふっと柔らかく微笑んだのち、再び礼をして退出していった。
手元に収まるほどの封筒——だが、緻密な模様は金箔で施され、封蝋には王家の印章が刻まれている。
それだけで、その便りが格調高いものであるという何よりの証拠でもあった。
マチルダからペーパーナイフを受け取り、封筒と封蝋の隙間に差し込んで剥がしていく。
部屋に控えていたノエルが、ティーセットの用意をしながら問いかけた。
「なんて書いてありました?」
「王宮への召集ですわ」
便箋に綴られた文字に視線を落としながら、リリィは静かに答えた。
覚悟はしていたが、現実というものはあっという間に迫ってくる。
婚約者を公募した場に、カイゼルも参加していた——しかも、国王と王妃の署名が入った許可証を持参して。
それは、リリィが次期王妃になることを、認可しているようなものでもあった。
カイゼルと心を寄せ合う仲なのだと知った時は、喜びが全身を駆け抜けたように気持ちが華やいだ。
だが、王族の一員になるということは、幾多の責務を背負うことでもあった。
(認められているというのは、大変光栄なことですわ……。ですが——)
リリィは決意を改めるように深く息を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。
「より一層、気を引き締めなくてはいけませんわね」
前を見据えた彼女の瞳には、強い覚悟の光が宿っていた。
また次回
毎日が、筋曜日!




