挑戦者の末路
マチルダが高らかに号令をかけた。
「始め!!」
ガルドが砂を蹴り上げ、一気に間合いを詰めた。低く身を沈め、足払いを仕掛ける。
「甘いですわ!」
リリィは瞬時に地面を蹴って跳躍し、屈強な体で軽やかにそれを飛び越える。
着地を狙ったガルドの拳が風を裂く。だが、リリィは半歩ほど体を引いてひらりとかわした。
彼の裾が翻り、拳は空を切る。
「ちょこまかと……!」
苛立ちを隠さずにガルドが腕を広げ、リリィを覆い被さるように組みついた。
リリィは体をひねり、逆にその勢いを利用して投げ技を狙う。
「おっと、まだまだ!」
ガルドが踏ん張り返し、二人の腕が絡み合う。
お互いの譲り合わない攻防戦に、鍛錬場にどよめきが広がった。
「それがリリィの本気かぁ?」
ガルドがおちょくるようにニヤリと笑った。
「でしたら——全力でいきますわ!」
リリィの瞳が鋭く煌めき、闘志がさらに燃え上がった。
力比べの時間は、ほんの一瞬にすぎなかった。
リリィが重心をわずかに崩し、体幹を軸に流れるようにひねる。
ガルドの巨体は宙を舞い、背中から地面へと叩きつけられた。
砂煙が収まる頃には、彼は仰向けに転がり、肩で大きく息をしていた。だが、その顔には清々しい笑みが浮かんでいる。
「ははっ!……やっぱりお前には敵わねぇな」
「素晴らしい戦いでしたわ、ガルド」
リリィは一歩近づき、静かに手を差し伸べた。
一瞬ためらったあと、ガルドはその手を力強く握り返した。
会場のあちこちから「いい勝負だった!」と歓声が上がる中、二人は並び立つ。
彼らに応えるようにガルドは片手を上げ、リリィは品よくカーテシーを決めた。
また次回
毎日が筋曜日!




