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思いがけない挑戦者

突き飛ばされてもなお——意識がある者たちは、他の候補者と共に拳闘を安全圏で見守っていた。


腕に包帯を巻いた男が素直な所感を口にする。


「それにしても、綺麗に飛んでいくな」

「ほんとだよなぁ。俺なんてよぉ、殴られて空中で何回転かしたぞ」


隣に座っていた短髪の男が、彼の言葉に同意するように首を縦に振った。


「それだって結構、芸術点が高いだろ」

「だったら、私だってすごいぞ!聞いてくれ!」


彼らの後ろにいた男も自然と会話に加わっていく。その輪は次第に広がり、勝負の見学そっちのけで楽しそうに語り合っている。


そんな彼らを横目に見ながらも、リリィは候補者へと振りかざす拳を止めることはなかった。




その後も何人もの候補者が降参していく中、彼女と瓜二つの体躯の男が堂々とした足取りで前へと進み出た。


「まさか、あなたも参加しているなんて……意外ですわね」

「よぉっ!楽しそうなことやってんなって思ってきた」


ガルドは軽い調子で片手を上げてみせた。


そんな二人の軽快なやり取りを、目深に被ったフードから覗き見ている男がいた。


彼はフード付きの外套に身を包み、周囲の男たちからは完全に浮いていた。

それも相まって、彼に話しかけようとする者はいなかった。


男の澄んだ碧い瞳には、焦燥の色が滲んでいた。

無意識に汗が滲む手を握りしめる。


(……リリィ嬢の幼なじみまでも、参加していたのか)


彼がもし、勝利してしまった場合、フードの男はリリィを諦めるしか選択肢はない。

そんな懸念を抱えながら、男はリリィが勝つことを心の中で祈るしかなかった。




「俺はガルド・ブランフォード。リリィとは幼馴染で恋心なんてねぇけど、二人であの店を一緒にやれたら説得力も増すし利益も上がると思うんだよなぁ」


ふっと軽く笑みを浮かべながらリリィが返す。


「面白い理由できましたわね。とても魅力的なお誘いではありますわ」

「まぁ……それに恋心があとから出たとしても、それはそれでおもしれぇかなって思ったんだよ」


ガルドはそう言いつつも居心地が悪そうに、斜め上を見つめながら頭を掻いた。


「あら、まあ。そんなことも考えていたのね」

「意外と相性がいいかもしれねぇしな。俺と一緒にあの店を盛り上げようぜ!筋肉だけに、ってな!」


いつもの調子に戻ったガルドは腰に手を置き、背を逸らしながらガハハと豪快な笑い声を上げた。


「あなたがわたくしに勝てたのなら考えないこともないですわ」

「よっしゃ!いったな」


にやりと笑ったガルドと、闘志を瞳に宿したリリィの視線が交差した。

また次回

毎日が筋曜日!

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