65 手紙
レアルから手紙が届いた。蜜蝋の封は天主からのものであることを示していた。
シャロンはそっと手紙を開いた。そこには懐かしい流麗な文字が丁寧に綴られている。
「シャロン、元気にしているだろうか。シヴァからの報告を聞くと、元気そうで安心している。
いろいろ大変なことがあったようだけれど、いまは幸せそうで良かったと思っている。
シャロンの夢を何度か見た。手紙に書くのは憚られるような夢だった。予知夢かと思って不安に思っていたけれど、そうではないようで安心しているよ。
シャロン、これは私の予測でしかないのだけれど、君は回帰能力を持ってはいないだろうか。
私が最初に見たのは予知夢ではなく、過去視だったのではないだろうかという気がしている。
もしもそうなら、シャロン、君は辛い過去から舞い戻って、また、アルーアへと自分で嫁いで行ったことになる。
過去視で見た君は、とても寂しく辛そうに見えた。けれどもシヴァの報告を聞くと、今、とても幸せそうに思える。
もし、シャロンに回帰能力があったとしても、今の幸せをつかみ取ったのは、シャロン自身の努力があったからだ。そう、胸を張って良い。
どうか、いつまでも幸せであって欲しいと願っている。
シャロンの幸せを心から願っているよ。体には気をつけて。
幸せになるんだ」
ぽたりと雫が落ちて、インクの文字が滲んだ。シャロンは慌てて涙を拭った。その手紙を胸に抱き、遥か遠い故国を想ったのだった。




