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61 貴女の幸せを願って

 質素だけれども厳かな戴冠式が終わり、アルファルドが王になった。新王は広く民にも受け入れられた。前王に阿っていた臣下は遠ざけられ、これから改革が行われていくのだろうと誰もが期待している。

 リラが王妃になり、レグルスが王太子として立った。アルファルドはアルクトゥールスに王太子を打診したが、彼は自分の柄ではないと断っていたのだ。 

「僕はね、シャロン様。正直、もうアルーアなんてどうでもいい、という心境になっていました」

 昼下がり、シヴァはシャロンとふたりで話していた。天気の良い気持ちの良い日だった。時折吹く風が緑なす木々を揺らしている。

 だけど、とシヴァは話を続けた。

「シャロン様はそれじゃあ困りますよね。それにレグルス様は僕に良く懐いてくれましたから」

「シヴァ……」

「それと僕は謝らなければいけません。レアルに報告はしないってお約束しましたが、僕はそれを破りました。全部、レヴィア様に報告していました。ごめんなさい」

 レヴィアに話したと言うことは、天主にも逐一話が伝わっていたと考えて良いだろう。シャロンはゆっくりと首を振った。

「シヴァがそうして頑張ってくれたから、アルーアとレアルを繋いでくれたから、アルファルド様が王になれたのだもの。ありがとう、シヴァ」

 そう言って手を取ると、シヴァは少し泣きそうな顔になる。

 風が吹く。シヴァとシャロンの間を通りすぎて行く。

 シャロンが好きだったから、彼女に幸せになってほしかったから動いたのだと、そう伝えることはできない。自分の想いは、閉じ込めて封印しなければいけない。だから。

「幸せになって下さい、シャロン様」

 シヴァは笑う。できる限りの笑顔で。シャロンが微笑む。この上もなく優しく。

 ああ、自分がいた意味はきっとあったのだと、シヴァは心からそう思った。

 例え自分がレアルに戻ったとしても、きっともう大丈夫だと、シヴァは一抹の寂しさと共にそう、思ったのだった。

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