57 深夜の密談
深夜。アルファルドの宮には3人が集まっていた。宮の主であるアルファルドと、アルクトゥールス、そしてシヴァだ。
人払いをした部屋は、蝋燭の灯りだけが頼りげなく揺らめいている。
シヴァはアルクトゥールスを見て口を開いた。
「アルク様、あの王がシャロン様に手を出そうとしたのはこれで2回目です」
その言葉に、アルクトゥールスは瞠目する。
「ご心配なく。1度目は僕がお止めしました。アルク様にご相談しましょうと言ったのですが、母上様のことでご心痛のアルクさまにご心配かけたくないと……」
「そうか……」
アルクトゥールスは下唇を噛む。レグルスが漏らした一言で今回の最悪の展開になった。レグルスから聞き、いち早く知らせてくれたことに心から感謝をして頭を下げる。
「ありがとう……シヴァ」
「僕はシャロン様の従者ですし、当たり前の事をしただけです」
そして、とシヴァは、アルファルドとアルクトゥールスを見やる。
「僕は正直、シャロン様がご無事ならアルーアがどうなっても良いとさえ、今は思っています。けれど、それはシャロン様が望まないでしょう。また、シャロン様には、幸せになって欲しいと思っていますーーそこで、いちばんの障害はおふたりのお父上である王です」
「……シヴァの言う通りだ。父上がいる限り、秩序は保たれない」
アルファルドも溜息を漏らす。政にも興味を持たず女色と酒に溺れ、今では政務はほとんどアルファルドとアルクトゥールスが担っている。
「アルーアの現状も調べさせていただきました。貧富の差、孤児の多さ、スリの横行。これも皆、政治がまともに機能していないからだと思われます」
アルファルドとアルクトゥールスは言葉も出ない。その通りだからだ。自分たちの少い権限でできることはやってきたが、限界はある。アルーアは王に権限が一極集中しているからだ。
「シャロン様には止めてと言われましたが、僕はアルーアでのシャロン様のご様子、アルーアについて、逐一、レアルに報告しています」
「……そう、だろうな」
アルクトゥールスが低い声で肯定する。そうでなければ、従者をわざわざつける必要はない。
「そこで、ひとつ、おふたりに提案があります」
シヴァは、真面目な顔で二人を見た。
「おふたりのお心ひとつで決まります。そしてこれは、天主さまのご内諾も得ています」
三人の密談はまだまだ、終わりそうに無かったーー。




