45 眠れぬ夜
その頃、シヴァはひとり、眠れずに起きていた。
昼間のシャロンの姿が目に浮かび、ため息をつく。
昼間に言ったことは紛れもない本心だし、シャロンのためには能力も使えるようになると良いと思っている。そう強く思っている自分と、今頃、アルクトゥールスと話しているのだろうか、と考えて切なくなっている自分がいる。
レアルにいる頃から、シャロンのことは見知っていた。妃候補でもあるし、天主を除けば、最高位にある彼女は目立った存在だった。また、養い親でもあるレヴィアからも、彼女の話は聞いていたから親しみを持っていたのも事実だ。
だからアルーアへ嫁ぐのがシャロンに決まったと聞いて驚いたし、その護衛をレヴィアを通して打診された時にもふたつ返事で了承した。
異郷へ嫁ぐ彼女の、僅かでも支えになれたら……そう思ったのも確かだった。
誤算だったのは、自分がシャロンに対して親しみ以上の感情を持ったことだ。
レアルにいた頃は妃候補で、異郷に嫁いでからは、アルクトゥールスの妻。どちらにせよ、自分がどう頑張っても何とかなるものではない。
頭では理解していても、実際にアルクトゥールスのことで悩むシャロンを見るのは、想像以上に切なかった。
シヴァはもう一度、大きくため息をつく。寝返りを打って掛布を、引っ張り上げる。
考えても仕方のないことだ。自分は、ただのシャロンの従者なのだから。彼女が信頼して頼ってくれるだけで、もしもの危険な場合は察知することができるだけで、自分の存在意義はあると思っている。だけど。
「レヴィアさま……僕、挫けそうです」
珍しく弱音を吐いてみる。こんな状態の自分を見たら、レヴィアは笑うだろうか、呆れるだろうか。
久しぶりに養い親に会いたくなって、シヴァはこれではいけないと、ぎゅっと目をつぶる。
自分の役目は、シャロンを守ることと、支えること。それ以上を望んではいけないのだ、とシヴァは自分に言い聞かせた。
夜が明けるのは、まだまだ先。早く明ければいいのに。そうしたら、こんな物思いに沈むことはないのに……とシヴァはもう一度、ため息をついた。




