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43 シヴァとシャロン 自分の気持ち

「……シャロン様、どうしたのですか?」

「……ごめんなさいね、シヴァ。急に訪ねて」

「それは別に構いませんが……顔が赤いのですが、体調は大丈夫ですか……?」

 その言葉に更に顔が赤くなるのを感じて、シャロンはうつむいた。

「なんでもないの……それより聞きたいことがあって」

「なんでしょうか……?」

 シヴァがお茶を淹れてくれる優しい音がする。シャロンはうつむいたまま、ありがとうとつぶやくように礼を言った。椀を両手で挟めば温かく、ほっと気持ちを解いてくれる。

「また、なにかあったのではないでしょうね……?」

 あった。確かにあったが、それはシヴァが思うのとは別のことだ。

「あの、シヴァに聞きたいのだけれど……相手の心を操る能力とかってあるのかしら……」

「え……? 暗示をかけるとかいう能力ならあったと思いますが、どうしてですか?」

「そう……あるの」

 シャロンはうつむく。アルクトゥールスと口づけをした。短い触れるだけの口づけを。そして、もう一度と願ったーーあれは、自分の能力が無意識に彼に働きかけたのではという疑念が拭えない。

 そうでなければ、なぜ、2度も口づけをしてくれたのか、説明がつかなかった。同じ寝室で幾夜も眠った。回帰前には手を握ることさえなかった。その彼が2度も口づけをしてくれると思えない。それとも、知らず、自分が誘惑したのだろうかーー。

「なにがあったのかは詳しくはお聞きしませんが、もし、悪いことではないのならば、きちんとアルク様とお話すべきだと思います」

「え?」

 慌てて顔を上げると、シヴァは困ったように笑った。

「心を読んでなんてないですよ。シャロン様のお心を惑わせるのならば、それはアルク様かな、と思っただけです」

「シヴァ……」

「シャロン様は、アルク様がお好きでしょう?」

 その言葉にシャロンは小さく頷く。

「レアルの民同士だって話をしなければお互いの心はわかりません。ましてや違う民族同士です。話をしなければ、なにも、はじまりませんよ」

 そう諭されてシャロンはもう一度、頷いた。

自分はアルクトゥールスが好きだ。好きだから、回帰してからも、嫁ぐことを決心したし、好きだから、寝顔を見たいと、触れ合いたいと、口づけをしたいと思った。

 唇に残った優しい感触は、甘く自分の心を震わせる。シャロンは自分の唇に触れる。

 自分の気持をきちんと、伝えようーーそう思った。

「あリがとう……シヴァ」

「いいえ。お役に立てたなら良かったです」

 自分の気持ちに手一杯で、シヴァが切なそうに目を伏せたのにシャロンは気づかなかった。

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