10 シヴァとの出会い
「初めまして、シャロン様。僕……いえ、私はシヴァと申します」
青銀の髪をした少年が綺麗な礼をとる。
「シャロンです。よろしくお願いします」
シャロンも礼をとり挨拶を返した。
うららかな午後の陽射しが天窓から差し込んでくる。シヴァの青銀の髪が光を受けて煌めいた。
王宮にある植物園の中で、シャロンは初めてシヴァと対面した。シヴァは少し緊張した面持ちで口を開いた。
「シャロン様の従者を仰せつかりました。頼りないとお思いかもしれませんが、一生懸命頑張ります」
「そんなことないわ。一緒にアルーアまで来てくれるんでしょう? こちらこそ迷惑かけてしまうけれどよろしくね」
シヴァの手を取り頼むと、彼は慌てたように首を振った。
「とんでもありません! 見聞を広げる良い機会をいただきました。あリがとうございます!」
聞けば年はシャロンと1歳しか違わないという。青銀の髪をひとつに束ね、穏やかで優しげな瞳が印象的な少年だった。
レアルの民は髪を滅多に切らない。その髪には霊力がこもられていると、外では高値で取引されるほどに、出回ることが少ない。だから男性でも髪を伸ばしているのが普通のことだった。
素直でまじめな子なんだな、とシャロンは好ましく思った。
「シヴァはアルーアの言葉や作法はわかる?」
「急いで勉強します。幸い語学は得意なのとアルーアの言葉は勉強しはじめていたところなので、シャロン様が出立されるまでには間に合うと思います」
「優秀なのね……」
感心して言うと、シヴァの顔が赤くなり慌てて否定する。
「そんなことはありません。シャロン様こそ、語学も作法も完璧だと聞きました。とてもすごいです」
「そんなことないのよ」
自分は回帰前の記憶がある。そのおかげで早く進められているに過ぎない。
「これからよろしくね、シヴァ」
シャロンは微笑む。回帰前には誰もいなくて心細い思いをした。天主の心配りも、シヴァの見聞を広げられるという物言いも、どちらも本当にありがたかった。自然と頭が下がる。
「そんな、顔を上げてください……!」
シヴァが慌ててそう言って、僕の方こそ……!
と頭を下げた。
そのままふたりで見つめ合い、ふふ、と吹き出してしまう。優しそうな子で良かったと、シャロンはしみじみと思い天主に感謝をした。
「これから、アルーアの衣装の採寸があるの。シヴァも一緒に行きましょう」
「僕もですか?」
「ええ。顔合わせの時には、あちらの衣装を身に着けていた方が良いと思うから。何着か仕立てようと思っているの。シヴァもそうしましょう?」
「わかりました。……シャロン様はアルーアのことを良くお考えになってるのですね」
感心した風のシヴァに、シャロンは少し笑った。この考えも1度目があってこそ、だ。
「じゃあ、行きましょうか」
「はい!」
シャロンとシヴァは連れ立って採寸に向かった。シヴァの存在は、やがてシャロンにとって大きな支えとなるのだが、今はまだ知る由もなかった。