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第71話 他国の特殊アイテムを奪って自国の強化に使う領主がいるらしい

 領主館に着いた後は、ルリはもちろんメラニペ、ウルカとも、会えなかった時間を埋めるように求め合った。


 そしてその翌日、俺はとあるモノを渡す為、ユキノの姿を探していたのだが……。


「あれは……ユキノとヤエ、か?」


 領主館の庭先で、ヤエと話しているユキノの姿を見つけた。


「どうした、ヤエ。ユキノに興味があるのか」

「あらあら、主様。はい、少々お話を伺おうとしたのですが……」

「――、――」


 ヤエを前にしたユキノは、プルプルと震えていた。涙目になっている様子は可愛らしいが……。


「ユキノが泣きそうじゃないか。何をしたんだ、ヤエ」

「いえ、まだ何もしておりませんが……」


 珍しく困り顔を見せるヤエ。本当に心当たりはないらしい。


「――、――」


 ユキノが俺の袖をくいくいと引っ張り、ふるふると首を左右に振る。

 ヤエが悪い訳ではない、と伝えたいのだろうか。


 さてどうしたものか、と困っていると、2mほどの小型魔獣――キュルル、と鳴くレッサーパンダに似た魔獣さんだ――に乗ったメラニペが通りがかった。


 「――――!」


 メラニペを見つけたユキノは、タタタッと駆け寄ると、身振り手振りで何かを伝える。


 それを見たメラニペはこくんと頷いて俺たちの方にやって来た。


「ユキノハ、ヤエノ“力”ヲ感ジテ怯エテイルラシイゾ!」

「メラニペ、お前ユキノの言いたい事が分かるのか?」

「ン! ユキノニ宿ル“力”ハ、ヤエノ“力”ト相性ガ悪クテ、勝手ニ身体ガ震エルラシイ!」


 つまりユキノ自身にもどうにもならない理由で涙目になっている、と。


「それは……しょうがないな。ヤエ。ユキノの事は、しばらく遠くから様子を見るに留めてくれ」

「あらあら、残念ですが、仕方ありませんね」


 心底残念そうな様子のヤエを見て、ペコペコと申し訳なさそうに頭を下げるユキノ。


 そんなユキノに苦笑しながら、ヤエはその場を去っていった。


 ヤエと相性が悪い力について気にはなるが、今はそれよりも優先すべき事がある。


「さて、それじゃあユキノ、ちょっと良いか」

「……?」


 こてん、と首を傾げるユキノに、白いハチマキを手渡す。


「プレゼントだ、受け取ってくれ」

「――!」


 目をまんまるに見開くユキノ。


 驚き一色だった顔に赤みが差して、やがて真っ赤になってうつむく。


 このハチマキはフソウ領内で回収した原作アイテムの一つだ。


 拳で戦うユニットにのみ装備可能で、1対1の戦いにおいて戦闘力が大きく向上する。


「綺麗ダナ! 良カッタナ、ユキノ!」

「――、――!」


 まなじりに涙を浮かべてこくこくと頷くユキノ。


 そんなに喜ばれると思わなかったので、こちらまでビックリしてしまった。


「ふーん、良いセンスじゃない。流石はユミリシス、やるじゃないの」


 庭先にやってきたルリが感心したような声を上げる。


 そんなルリに向けて、ユキノがハチマキを差し出した。そして、申し訳なさそうにモジモジとする。


「はいはい、やってあげるわよ、ユキノちゃん」


 姉のような表情になったルリが、ハチマキを手に取ってユキノの額――ではなく、頭に結ぶ。


 いや、これは。


「リボンか……」

「ン? リボン以外ニ使イ道ガアルノカ?」


 まさかハチマキがリボンに変わるとは思わなかった。


「はい、出来た。でも次からは自分で結ぶのよ。やり方は教えてあげるから」

「――!――!」


 こくこくと頷いて頭のハチマキ……いや、リボンに触れたあと、嬉しそうな笑みを浮かべるユキノ。


 ぐっと可愛らしさがアップした彼女を見て、思わずドキッとしてしまった。


 すると、通りがかったウルカが目敏めざとく反応する。


「うわぁ、おにーさん、目つきやーらしー。遂にユキノちゃんみたいな小さな子まで毒牙にかけちゃうんですか?」

「ご、誤解されるような事を言うな!」


 慌てて声を上げる俺。

 やれやれと溜息を吐くルリ。

 煽るように口元に手を当てるウルカ。

 キャッキャと笑うメラニペ。

 顔を真っ赤にしてモジモジするユキノ。


……外堀が埋められつつあるのは気のせいだろう、うん。


 なお、ルリがこっそりユキノの胸を見て安堵の溜息を吐いていたのは、見なかった事にしてあげた。


――そして。


 それからほどなくして、カフカス崩壊の日……すなわち、世界規模のプレート移動が起こる日がやって来た。


 メンショウ帝国がカフカスで拠点作りに着手し、ディアモント王国が避難・救助用の人員配置を完了したその同時刻。


 俺は、大陸南東部にある大国・クロスエンド共和国を訪れていた。

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