第68話 しっかり管理できず崩壊する事もあるので実際大事
作戦会議の翌日、ヒョウカとの通話二日目が終了。
その後カフカスに到着した俺は、通話から得た詳細な行軍日程をルリに伝えた。
「うん。それならカフカスでしか取れない高純度の魔石は、ギリギリ採り終える事が出来そうね」
「凄いな……」
素直な賞賛を口にすると、ルリが不本意そうな表情になる。
「……ヴィブラレット先輩が魔力発生機を持ってきたから、稼働時間が倍に増えたの」
「そんなモノがあるのか」
「ユミリシスのお陰なんだって」
「えっ?」
ジト目のまま言葉を続けるルリ。
「ユミリシスが陣法を完成させたから、持ち運び可能になって魔力生成効率が飛躍的に上がった、って」
不満そうな声を聞いて、ピンと来た。
「ルリ、もしかして嫉妬してるのか?」
「そ、そんなんじゃないわよ! そ、そうじゃなくて……アタシはほら、戦う為の技術しか思いつけないけど、先輩は内政特化で……それって、今のユミリシスの求めてるものだし」
ルリがギュッと杖を握り締める。
「先輩のそれは、アタシには絶対に出来ない役立ち方で……そう思ったら、胸がモヤモヤして」
「そうか、そんな事を考えてたのか」
「ん……ごめんなさい、変な事言っ――ひゃっ!?」
ギュッと後ろから抱きしめてやると、真っ赤になって可愛い声を上げた。
「きゅ、急に何するのよ!」
「戦争用の技術は、保有する事に意味があるんだ。使う必要がないならそれが一番良い。分かるよな?」
「分かってる。だから自分でも馬鹿な事を言ってるって思うけど……」
……よし、じゃあこの話題でどうだ。
「ネネドリア草が今後の戦略に生かせそうなんだ」
「えっ?」
ヒョウカとのやり取りを掻い摘んで説明する。
「ルリが魔法で育てた薬草のお陰で、メンショウの中枢にさらに食い込める。これって凄い事だと思わないか?」
「ふ、ふーん、そう。アタシのネネドリア草が、ユミリシスの戦略にね」
ルリの顔に浮かぶニヤケ顔。それは、嬉しさを隠しきれていない表情。
「って事だから、カフカスから撤退した後はまず、ネネドリア草の畑を作ってもらう事になる。忙しくさせて悪い」
「任せなさい、アレの微細な魔力調整はアタシにしか出来ないんだから」
そんな会話を交わしていると、簡易ハウスからヴィブラレットが出てきた。
「思いついた理論ちゃんたちが纏まったので、魔導都市に帰ろうと思いますぅ」
「分かった、怪鳥さんを使って移動してくれ」
「ありがとうございますぅ。ちなみに流出の心配はないので安心してくださいぃ。私以外入れない地下の開発室で作りますからぁ」
その言葉を聞いて、もしや、と思う。
「一人で理論構築から開発までやってるのか?」
「だって、皆さん足手纏いなんですよぉ。いても邪魔にしかなりませんからぁ」
どうやらヴィブラレットは、ベクトルは違えどルリ同様の規格外らしい。
なるほど、ルリがライバル視する訳だ。
「という事で、私は退散しますのでぇ。ユミリシス様はルリちゃんとゆっくりしてくださいぃ」
「ちょっ、ヴィブラレット先輩!?」
「えへへ。新婚さんなんだからぁ、素直になって、いーっぱい甘えて、愛を確かめ合うんだぞぉ」
そんな言葉を残して、ヴィブラレットは魔導都市に帰って行った。
「……ゆ、ユミリシスは今日は時間、平気なの?」
腕の中にいるルリが耳まで真っ赤にして尋ねてくる。
「ああ、問題ない。ルリも採掘は大丈夫か?」
「ん、今日はもう魔力発生機の分も使い切ったから、大丈夫」
つまり、夫婦の時間を邪魔するモノはないという事だ。
「あ、でも待って。その前に汗、流したいかも……」
「じゃあ一緒に入るか」
「――っ!? ま、まぁ、ユミリシスがどうしてもって言うなら、あ、アタシは構わないけど?」
「ああ、入りたい。洗いっこしたい」
「ば、馬鹿ぁ! へ、変な言い方しないのっ!」
――そんなこんなで、俺たちは湖で仲良く水浴びしつつ、互いの愛を確かめ合うのだった。
ちなみに、しばらくヒョウカと毎日通話をする事になりそうだ、と告げた所……。
「嫉妬が全くないって事はないけど……ユミリシスがその、あ、アタシにベタ惚れなのは分かってるし。第一夫人としてしっかり愛してもらえてるし、本当に平気よ?」
「もし仮にヒョウカや、他の女の子とそういう仲になっても、か?」
「ユミリシスが心から好きだ、って言える相手なら良いわよ。それに……」
「それに?」
ルリが躊躇いがちに言葉を続ける。
「ユミリシスの夜のそういうの、受け止めるの……もっと人数がいるかな、って」
「そ、そうなのか」
「今のままだと翌日以降の仕事にも影響が出ちゃうし、複数人でローテーションを組む必要があると思うの」
「俺が我慢すれば……」
と、言いかけて、軽くデコピンされる。
「世継ぎを残すのもユミリシスの大切な役目なんだから。それに、我慢しすぎてハニトラに引っかかったらどうするのよ」
「世継ぎに関しては納得だけど、ハニトラは平気だぞ、流石に」
「でも、我慢するのは辛いでしょ」
辛いの事実なので、口ごもってしまった。
「っていうか、ユミリシスはただでさえ普段、気を遣い過ぎてるんだから……夜くらい我慢してほしくないし、何も考えないでほしい……みたいな」
照れくさそうに告げられた言葉に、胸が熱くなる。
「ありがとな、ルリ」
「ん……アタシが第一夫人でいるからには、しっかりハーレムを管理してあげるんだから、覚悟しなさいよね」
ルリのその言葉には、俺への愛情と第一夫人としての誇り、その両方が込められていた。
……本当、幸せ者だよな、俺。




