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第40話 不器用だから気付けなくて、でも

 にらみ合いの中、先に口を開いたのはウルカだった。


「そう言えば、ルリおねーさんは魔法分野の天才なんですっけ。だったら勝負しませんか? 私が勝ったら第一夫人の座を降りてもらいます」

「勝負、か。何で勝負したいの?」

「何でも良いですよ。私の心を折る事が出来たらルリおねーさんの勝ちです。あ、でも私を害する行為はなしでお願いします」

「良いわ、やりましょうか」


 トントン拍子で決まっていく会話に思わず口を挟んでしまう。


「お、おい、ウルカ。ルリも。流石にそれは……」

「任せなさい、ユミリシス。ええ、気持ちは分かるもの。自分より劣る人の下になんて、つきたくないわよね」

「分かってるじゃないですか、そういう事です。メラニペお姉様は凄いので、私の上にいても良いです。でもルリおねーさんの凄い所は私、知らないので、下につくのは嫌です」


 口元を斜めにして不敵な笑みを浮かべるルリと、ニヤニヤと試すような笑みを浮かべるウルカ。


 どうしてこんな事に、と思う俺の横では、相変わらずメラニペがすやすやと可愛らしい寝顔を浮かべていた。


 その後、ルリが開けた場所が良いと言うので、俺たちは領主館近くの丘の上までやって来ていた。


「少し待ってなさい。今準備するから」


 虚空から杖を取り出したルリが、地面に何か魔法陣めいたモノを描き始めた。


 興味深そうに見つめているウルカからいったん離れて、ルリに話しかけに行く。


「ルリ、大丈夫なのか?」

「何よ。ユミリシスはアタシが負けると思ってる訳?」

「いや、この勝負どう考えてもお前に不利過ぎるだろ。害するのが禁止な上に、ウルカが“まだ折れてない”って言うだけで負け判定になるんだぞ」


 俺の言葉を耳に入れながらも、ルリは真剣に杖を動かす手を止めない。


「ええ、分かってる。だからあいつ、期待してるんでしょ。自分を心の底から参ったって言わせるような何かを、私に」


 それは考えすぎではないだろうか。


「ま、一回勝負とも言ってないから、私に何回も繰り返し色んな事をやらせて、それを全部否定してやるとか、意地の悪い事を考えてるのかもしれないけど」

「そうだったら、どうするんだ? ああ見えてウルカ、かなり諦めが悪いし粘るやつだぞ」


 その言葉を聞いてもルリは表情を変えない。

 何かしらの思いを込めるように大地に刻み続けている。


「良いじゃない。そんなやつの心を一発で分からせるのはきっと最高に気持ち良いわ」

「……ルリ、もしかして怒ってるか?」

「別に? メンショウ帝国から帰ってきて少しはゆっくり出来るかなって思ったら、すぐに演習に向かって、早く会いたいなーって思ってたら新しい婚約者を紹介されて、それで思う所があるなんて全然、これっぽっちも思ってないんだから」


 思う所しかないじゃないか。


「何ていうか、すまん」

「良いのよ、別に。ユミリシスじゃないと出来ない事も、ユミリシスが一番上手くやれる事も多すぎるのが悪いんだから。それに……」

「それに?」


 ルリが眉根を寄せて、悔しそうな表情を浮かべた。


「……アタシ、ユミリシスがそんな孤独を抱えてるなんて気づかなかった」


 動かしている杖を、ギュッと握りしめる。


「アタシの方がずっと長く一緒にいるのに、気づかなかった。負けた、って思っちゃった」

「ルリ……それは、」

「だけど!!」


 ザクッと地面に杖を突き立てて、ルリが力強く俺を見据える。


「負けっぱなしでなんて終われない。まずは勝って気持ちをスッキリさせる。それでもって、改めて今まで以上にユミリシスをしっかり見るの!」


 それは、ネガティブな気持ちをねじ伏せた言葉。


 負けず嫌いな所と、失敗から学んで成長する所がよく出ている、彼女らしい決意表面だった。


「ははっ……今よりも見つめられたら、穴が開くな」

「その時はアタシが魔法で塞いであげるから安心しなさい」


 俺の笑いにつられたのか、ルリもニッと笑って言葉を返してくれた。


 どうやらルリの中で自己解決したようだが、しかし、少なからず寂しがらせた事も事実である。


「それはそれとして、今度埋め合わせをさせてくれ。一緒に出かけよう」

「ふ、ふーん。そ、そうね、あんたがどうしてもって言うなら行ってあげても良いわよ」


 言葉だけなら突き放したように聞こえるが、声や表情には隠しきれない嬉しさが現れていて、可愛いなぁと思う。


「ああ、どうしても一緒に行きたいんだ」

「~~~~~~っ! ああもう、分かったからほら、そこにも線を引くんだから、あっち行ってなさい!」


 明らかな照れ隠しに苦笑しながら距離を起き、見守る態勢を取るのだった。

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