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第130話 問:忠義を捧げた主が悪徳侯爵にメロメロになっている姿を見た心情

 パンドラとの話し合いを終えた俺は、サリヌスとドゥルキスの元を訪れていた。


 向かい合う牢屋の右にサリヌス、左にドゥルキス。どちらも力を封じる枷を付けられている。


「まんまとしてやられマシタ……。私の身体に向ける好色の眼差しは、演技だったのデスね……」


 酷く落ち込んだ様子のサリヌス。


 自分の落ち度で情報を全て暴かれた事が、よほどショックなのだろう。


 一方のドゥルキスは――。


「きゃはは、サリヌスってばずーっと落ち込んでてウケるー。ま、脂肪が全てじゃないってコトで」


 マイクロミニ丈のピッチリとしたレギンスと緑色の腰マント、そこから伸びる足をバタつかせながら、赤茶色の盛り髮を揺らして愉快そうに笑っていた。


 上半身に着ているのは、こちらもピッチリとした素材のチューブトップ。


 露出過多な上にピッチリしているぶん、色々な形がくっきりしていて目に毒な、褐色ギャル系ロリだった。


「って、あっれー? 侯爵サマってば、あたしを見る目、なんかアヤしくなーい?」

「いや、これがスプリガンかと物珍しさで観察していただけだ」


 智略を上げているから性的な目では見ていない。はずだ。


「ちぇー、なーんだ。サリヌスにキョーミないって言うから、てっきりあたしみたいに小さい子が好きなのかと思ったケド、つまんなーい」

「可愛いとは思うが、それだけだな」

「きゃはは、カワイイとは思ってくれるんだー。だったらココであたしとシちゃう?」


 扇状的なポーズを取るドゥルキスを見て、出来るだけ自然な態度で目線をらすようにする。


「仮にそういう趣味があったとしても、そんな誘いに乗る訳がないだろ。油断させて逃げ出そうって魂胆こんたんだろうしな」

「ちぇー、バレてるかー。出してアタマがバカになってるトコロで逃げようと思ったのに」


 不貞腐ふてくされた態度を取るドゥルキスに向けて、サリヌスが勝ち誇ったような表情をする。


「ヴァッサーブラット卿は、私の誘惑を物ともしない殿方デスからね。ドゥルキスみたいなお子様が誘惑出来る道理はありマセン」

「自分の負けを誤魔化す為に相手を持ち上げるの、カッコ悪いからやめた方が良いと思うケド」


 バチバチと火花を散らす二人だが、俺は知っている。

 この二人が、心の中では相手を大切に思っている事を。


 二人のやり取りをもっと見ていたいが、とは言えこのままでは話が進まない。


 俺は早々に“彼女”を呼ぶ事にした。


「パンドラ、入ってきてくれ」


 二人がハッとした表情でこちらに振り向く。


「こんにちは、サリヌス。ドゥルキス。良い待遇を受けているみたいで何よりなの」


 背後の扉から入ってきたパンドラが、ステップを踏むような優雅さで隣に降り立つ。


「ぱ、パンドラ様!?」

「ウソ、なんで……」


 二人の驚愕きょうがくは、パンドラが俺の身体に抱きついたからだろう。


「わたし、ユミリシスの妻になる事にしたから。貴方たちもそのつもりで仕えてほしいの」


 はにかむように告げるパンドラの頭に軽くチョップを入れる。


「さも確定した事実みたいに言うのはやめような」

「むー、乙女の告白を無下にするの?」

「正直、まだお前の事はそんな風に見れないんだ」

「ふふ、これからじっくり攻略してあげるの」


 俺たちのやり取りを見て、呆気に取られた表情になる二人。


 こんな主の姿を見るのは初めてなのだろう、全身で驚きを表現している。


「ま、とにかく見ての通りだ。パンドラは俺の軍門に下った。俺に仕える必要はないが、パンドラの元で今まで通り力を振るってほしい」


――その後、パンドラに忠実な二人は仕える事に合意。


 さまざまな感情を浮かべながらも、俺の指揮下に入ってくれた。


 それぞれに指示したい事は色々あるが……。


「まずはドゥルキスからだな。一緒に来てくれ」

「あっれー、もしかして侯爵サマってぇ、やっぱり小さい子が好き系?」

「いや、お前の病を治せるかもしれない奴の所に連れて行く」

「――ッ!?」


 スプリガンは現存する種族の中で特に歴史が旧く、その起源は第一の時代まで遡る。


 ドゥルキスが抱える病はその第一の時代に由来するもので、今の時代では治す事が出来ないが――。


「ウチには、第一の時代から続く知識と技術を継承した水の精霊……ニミュエがいる。彼女なら、お前の病について何か分かるかもしれない」

「な、なんで侯爵サマ、あたしの病のコト……」

「俺はあのパンドラが恐れた男だぞ? 理由はそれで十分だろう」


 その言葉は絶大な説得力があったらしく、ドゥルキスが押し黙る。


 という事で俺は、大人しくなった彼女を連れてニミュエの工房に向かうのだった。

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