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第117話 悪霊の屋敷、攻略開始

 朝の時間を目一杯使って水妖さんと過ごした後、昼はクロスエンド共和国へ。


 マロリーと昼食を取ったのち、俺は十二番目の氏族である“銀の氏族”の長と会っていた。


「銀ってよぉ、白よりピカピカしててキレイじゃねぇか。なのに白の方が上って言われてんの、よく分かんねぇよな」

「十三の氏族は対等だから、どっちが上っていうのはないぞ」

「そんなのタテマエってやつだろ。みんな白のほうがすげーって言ってんぞ」

「よし、俺が銀の氏族や銀色の素晴らしさについて語ってやろう、長くなるぞ」


 と、銀の氏族長――ガラの悪い銀翼娘だ――に対して、キミたちが如何いかに凄いか、銀色が如何に素晴らしいかを語って聞かせた。


 銀翼娘が真っ赤になってギブアップを宣言するまで褒めそやした後、その長所をさらに伸ばす為に頼ってほしいと提案。


「魔術師サマの瞳がキレイだから文句ねぇ。それに、その……、あぁあ、何でもねぇ! とにかく細かい事は分かんねぇから任せる、よろしく頼む」


 そんな言質を取った俺は、堂々と銀の州の中枢を視察するのだった。


 とは言え提案書を作るのは明日に持ち越しだ。


……今日はスノリエと会う約束をしているからな。



「せんぱあああい!」

「おっと、はは。よしよし」


 デメルグ聖王国の首都たる聖都、その大聖堂前。


 勢いよく抱きついてきたスノリエを受け止めながら、肩口で切り揃えられた亜麻色の髪を撫でる。


 性的魅力にあふれたスリット入りのシスター服をまとう、純朴な顔立ちの女の子。


 そのくせ胸は大きめで、お尻から続く太股ふともものラインも魅惑的な聖女様。


「んーっ、はあぁ……えへへ、先輩成分、補充中~」


 俺の胸元に頬を擦りつけたスノリエが、思いっきり息を吸い、幸せそうな表情を浮かべる。


「良いのか、聖女様がこんな公衆の面前で男に抱きついて」

「いーの! ボクが先輩のモノだってみんなに分かってもらえるし!」


 チラリと周囲を見やれば、ショックを受けたような男性信徒たちの姿。


……やっぱり人気、出るよなぁ。


 今をときめく聖女として、国内各地を巡りながら人々の治療に当たっているスノリエ。


 根明ねあかで誰にでも優しい彼女は、今や聖王国のアイドル的存在である。


「そろそろ行くか」

「うん! えへへ」


 こちらの腕に抱きついてきたスノリエが、ここぞとばかりに胸を押しつけてくる。 


 智略を高めて胸の高鳴りを抑えても良いが……婚約者なのだから、ドキドキにひたるのも悪くないだろう。


「それにしても先輩、本当に良かったの? わざわざ悪霊が住んでる屋敷を選ぶなんて。はらうのも大変だよね?」

「悪霊を抜きにすれば一番良い条件だからな」


 大災害と共に現れて、屋敷に住み着いた悪霊。討伐第一陣を撤退させた強大な存在。


 これから本編開始までの二年弱、討伐出来ずに放置される事になるが……。


 サクッと浄化して、影響力を高める礎になってもらおう。


――という事で、聖都の一等地にある屋敷にやってきたのだが。


「ね、ねぇ先輩。手を出さない限り大人しい悪霊って聞いてたけど……そんな感じじゃないよね、これ」


 俺たちが屋敷の門前に到着した途端、悪霊の気配が強くなった。


 それは見る見る内に渦巻き、台風もかくやの勢いで黒い瘴気をあふれさせる。


「……、……」


 この展開は知らない。


 ただ、あふれる力が解き放たれたら周囲一帯は更地と化すだろう。


 絶大な力の気配を感じ取ったらしく、騎士や神官たちが続々と集まってきて、流石の迅速じんそくさではあるが――。


「足手まといだな。スノリエ、騎士たちには周辺住民の避難誘導を。神官たちには全力で結界を張ってもらってくれ」

「先輩はどうするの!?」

「突入する」

「!?」


 あの渦の中に力の源を感じる。

 それをどうにかすれば、瘴気も消えるだろう。


「き、危険だよ! 何があるか分からないのに! ぼ、ボクも――」

「騎士や神官、民たちを動かせるのはお前だ、スノリエ。聖女として彼らを導くんだ」

「――!」


 原作と異なる展開が起きたという事は、十中八九、俺の影響だろう。


 そのせいで聖王国に不要な被害が出るのは避けたい。


「終わったら、お家デートしような」

「……っ!」


 ポンポンと頭を撫でた後、頬を赤らめるスノリエに背を向けて、屋敷の敷地内へと入る。


……さて、鬼が出るか邪が出るか。

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