4話 バレた!
前回のあらすじ。純は再就職を果たし、その帰りに寄ったスナック『トリカブト』にて酔った勢いでレイに自分が元ヒーローだとポロッと喋っちゃった。
「ジュン、貴様、今ヒーローと言ったな…?」
「え、あ、えぇ〜?ぼ、ぼく、そ、そんなこと言いました〜?」
「確かに聞いたぞ!貴様、何を企んでいるのだ!?まさか他のメンバーに私のことを喋ったのではあるまいな!?」
レイは純に掴みかかる。
「は、はわわ~、何言ってるかわからないです〜」
純は冷や汗を滝のように流しながらもこの場をなんとか乗り切ろうとすっとぼける。
(俺だって伊達に10年ジャスティファイブやって来てないぜ。これくらいの修羅場は、何度も潜り抜けてきてんだよ!)
「貴様、とぼけるのもいい加減にしろ!…かくなる上は、ここで殺るしか…!」
レイはアイスピックを純に突きつける。
「ちょっ、それはシャレになんねーって!!」
「あらあら、2人共何やってるの?…はっ、ま、まさか…!KISS!?」
「は!?マ、ママ!?な、にゃ、何を言っているのだ!そんな訳…!」
「え、それじゃあ何してたの?」
「そ、それは…!」
(来た!紅緒ママ、俺はこれを待っていた!レイが怯んだ、今だ!)
「ママ〜、このおねぇちゃん怖いナリ〜!あの、あの、あのね、急にね、このおねぇちゃんがね、掴みかかってきてね、そんでね…」
「よしよし〜、落ち着きなさい純ちゃん。びっくりしたわね〜。大丈夫よ〜。」
「ママ、違うのだ!これは…」
「いいのよレイちゃん。ママもごめんね、タイミング悪くて」
「だから、違うと!」
「ママね、こう見えて恋バナとか大好きなのよ。え、ちょっとレイちゃん、いつから?いつから純ちゃんのこと意識してたの!?この前追いかけていった時?あの時何かあったの?ほらカウンターになんて立ってないで、ここ座って!ママがごちそうするからほら!ゆっくり聞かせて?」
「あ、ちょっとママ!?」
紅緒ママはレイを強引にカウンター席に座らせ、カクテルをレイに用意する。純は隣りに座ったレイに彼女だけに聞こえるように、
「毒島レイ、お前、ここでママの誤解を解いたらどうなるか分かってるよな?客に対してアイスピック突きつけるなんて、バレたらどうなるかなぁ?クビかなぁ?そうなりたくなきゃ、ここはママと話を合わせな」
「くっ、貴様…!」
(この外道め…!これまでただすっとぼけているだけだと思っていたが、これを待っていたのか!やられた!ママが恋バナが好きなのを知っていて、そこに導くためにわざとすっとぼけて見せて、私を苛つかせ、掴みかからせ、ママが勘違いする状況を作り出したのだ!こいつ、ただの情けないドブネズミではなかった、とんだ策士だ!)
「ねぇねぇ、どうなの?」
「くっ…殺せ…!」
「あーっと、もうこんな時間だぁ!明日も仕事だし、俺もう帰らなくちゃ!それじゃ!」
「あ、ジュン、待て貴様!」
「ふっ、アリーヴェデルチ!」
純は紅緒ママに捕まったレイを残して店を出た。
「さ、邪魔者はアリーヴェデルチしたわ!今日はもうお店閉めるから、ゆっくり話聞かせてね!」
「だから、違うのだママ!詳しくは言えないのだがこれには理由が…!」
こうして夜は更けていく。