おまけ1 毒島レイのバイト面接
第1話の少し前のお話です。
悪の秘密組織ディアボロスの最高幹部、シャウラ・バロネスこと毒島レイ。ディアボロス最高幹部では1番若手でありながら、その戦闘能力は最高幹部の中でもトップクラス。その圧倒的な強さと容姿の美しさで戦闘員達から神格化すらされていた彼女だが、3ヶ月前、10年もの長い間対立していた戦隊ヒーロー、ジャスティファイブによって組織が壊滅してからはその栄光も過去のものとなってしまった。初めは仲間をどうにかもう一度集めてディアボロス復活を考えたが、暫く組織やヒーロー達との闘いから離れ、平和な日々を過ごすうちにこの生活も悪くはないと思うようになっていた。しかし、そんな彼女に危機が訪れる。
「…貯金が、底をつきかけている…!ディアボロス時代の腐る程あった貯金が…」
レイは通帳を見てそこに印字された貯金残高を見て血の気が引いた。このままでは現在住んでいる高級タワーマンションの家賃が払えなくなる。ジャスティファイブ5人を1人で相手したときですら余裕だった彼女が今は己の貯金残高に恐れ慄いていた。
「しまった…!ディアボロス時代の金銭感覚が抜けていなかった!税込220円のジャスティファイブウエハースを調子に乗って毎日のようにまとめ買いし過ぎた!他にもあの頃の癖で無駄に贅沢し過ぎたな…とにかくマズいぞ!働かなくては…!」
(くっ…ディアボロスNo.2と言われたこの私が一般人の下で働く事になるとは…背に腹は代えられないのだが)
それからレイはいきなり正社員というのは中々難しいので、先ずはバイトから始めて、バイトをしながら職探しをしようと考えた。
「私が就職先を見つけるまで、ここで働いてやってもいいぞ!」
「いえ、結構です。お帰りください」
「なに!?貴様、本気で言っているのか?」
「お帰りください」
しかし、現実は甘くない。手当たり次第にバイトの面接を受けるも全て断られたのだった。
「何故だ…!?何故全て断られるのだ!?学歴だって問題ない筈なのに!」
レイは1人夕暮れ時の街を肩を落としながら家に向かってトボトボ歩いていると、ふとあるビルの看板が目に入った。
「2Fスナック『トリカブト』?なんだこのふざけた名前は?」
そう言えば、こういう店にはまだアタックしていなかったと思い、レイは吸い寄せられるように『トリカブト』のドアを開けた。
「いらっしゃ〜い」
「バイトの募集はしているか?」
「あら、ちょうどウチで長いこと働いてくれてた子が独立しちゃって、誰か雇おうかと思ってたのよ!さぁさ、ここ座って。形式的なものだけど面接するから」
「失礼する」
「あたしはここでママやってる紅緒よ、よろしくね。あなたは何ちゃんかしら?」
「私の名は毒島レイだ。おっと、渡すのを忘れていた、履歴書だ。受け取るがいい」
「なるほど、毒島だからぶすちゃんね」
「…ぶす…ちゃん…?」
「メンゴメンゴ、ぶすちゃんは流石にないわよね〜。あたしってばよくネーミングセンスがないって言われるのよね。ぶすちゃんが駄目ならなんて呼ぼうかしら?」
「…じゃあ、レイちゃんで…」
「オッケー!じゃあ面接続けるわね。レイちゃんはこういうお店で働いた経験とかある?」
「いや、初めてだ。そもそもバイトなどしたことがないのでな」
「あらそうなの?でも大丈夫よ。未経験者でも1から丁寧に教えるから。それで、ウチで働くとなったら、週何日くらい入れそう?あたしとしては週3は来てほしいけど…」
「定休日以外毎日でも問題ないぞ」
「あら!本当?助かるわ〜。じゃあもう採用よ!あなたとっても可愛いし、お客さんにも絶対気に入られるわよ」
「本当か!?…ふ、ふん、まぁ当然だが。寧ろ今まで何故不採用にされたのか理解出来んくらいだ」
「う〜ん、あたしはなんとなく分かるわよ〜」
こうしてレイは無事にバイトを始められる事になった。