17話 クロエの別荘に遊びに行こう1
ある大型連休、純のスマホにレイの友人の一人、烏間クロエから一件のメッセージが届いた。
“やっほー。緑川君、別荘買ったんだけど遊びに来ない?バーベキューでもしようじゃないか”
メッセージには別荘から見える景色の写真も貼付されていた。その全てに上半身裸の巨体が見切れているのが少し気になる。
「いい景色だけど、結構山の中だな。まぁ暇だし良いか。“ちょうど暇してたとこなんで、良いですよ”っと」
“では明日の朝『トリカブト』に集合で。そちらに迎えを寄越そう”
そして翌日。スナック『トリカブト』にはクロエの友人であるレイ、小百合をはじめ、『トリカブト』の店主の紅緒ママに純、そして毛利と松永。クロエからの招待を受けた面々が集まった。
「まさか僕まで呼んでもらえるとは。…それにしても、ひとつ屋根の下に複数の男女か…イイね」
「死ねよマジで」
「松永さん…僕はいい加減松永さんのこういう感じには慣れましたけど…」
「毛利くんは分かるけど、松永ってクロエ達と面識あったっけ?」
「いい質問だね純くん。実は神崎さんとは以前から面識があってね。その繋がりで今回呼ばれたというわけだよ。書かれてないとこでも色々とあるのさ」
「ふ~ん、世間って狭いな」
などと他愛もない話をしていると、店の前に見事なリムジンが停まった。
「来たな」
「皆様、お揃いのようですね。ではクロエ様の別荘までお送り致します。荷物はこちらへ」
運転手の案内で荷物を荷室に積み込み、リムジンに乗り込む。
「では発車致します」
「初めて乗ったんだけど、リムジンってとっても広いのね〜。乗り心地もいいし、冷蔵庫まで付いてるじゃない」
「僕は運転手さんが神崎さんみたいな裸族じゃなくて安心しました」
「その冷蔵庫に飲み物がございますので、皆様ご自由にどうぞ」
純達を乗せたリムジンはどんどん山奥へと入っていき、暫く進んだところで停車した。
「皆様申し訳ありません。ここから先この車は通れませんので、歩いて頂く様になります」
皆がリムジンを降りると、眼の前には深い谷があり、そこを川が流れている。そしてその谷にはこちらと向こう岸とを繋ぐ吊り橋が架けられていた。どうやらこの吊り橋を渡っていけということらしい。
「クロエ様の別荘はこの吊り橋を渡ってすぐ見えますので。ではまたお帰りの際はここまでお迎えに上がります」
運転手は再びリムジンに乗り込むと来た道を引き返していった。
「こんな推理小説の舞台になりそうな場所本当にあるんだな」
「ここでずっとこうしてても仕方ないし、早いところ別荘に行こうか。吊り橋も頑丈そうだし、僕らが全員乗っても大丈夫だろう」
「松永さんもまともな事言うんですね。それじゃあ行きましょうか」
純達は吊り橋を渡って向こう岸に辿り着いた。そこには変態紳士でお馴染みのクロエの執事神崎が待っていた。
「皆さんようこそお越しくださいました。クロエ様が館でお待ちですぞ。ささ、どうぞこちらへ」
神崎の案内でクロエの別荘である館に到着。入口の扉を開ると、そこは大きなロビーになっていた。
「クロエ様、皆さん到着なさいましたぞ。クロエ様ー?」
神崎が呼びかけるとロビーから上の階へと続く階段の手すりを滑り台の様にクロエが滑り下りてきた。そしてキレイに着地を決める。
「やぁやぁ、皆よく来たね。どうだねこの館は?本来ならこの規模のものは億はくだらんだろうが、相場の四分の一程の値段で手に入ったよ」
「そんなに安くなってるって、ここ何かあったのか?」
「知りたいかね?ふふん、ならば教えてやろう。実はな、この館の前の持ち主がある嵐の夜に何者かに一家全員惨殺された所謂曰く付きの物件だからさ」
「そんな事故物件を買って更には僕らを招くなんて気は確かですか?」