九十一話 【脱出】
エイシスとの戦闘でムーンから紅玉のレリックを受け取ったサンドライトは己の体に埋め込むと、エイシスを圧倒した戦闘力で頭を吹き飛ばした。
「はぁ、はぁ……、どうだ……」
エイシスの体はその場に倒れ込んだ……。
「ムーン……」
エイシスを倒したサンドライトはムーンに歩み寄り手を握る。
「……なかなか面白いですね……」
頭が吹き飛んで無くなっているエイシスは立ち上がると、頭がヌルンと再生をした。
「なっ!」
サンドライトは驚いた表情を見せる。
俺だって驚いている。
頭を吹き飛ばされて生きているなんて……、人間じゃない。
「なにあいつ!」
「再生したにゃ」
「……びっくり……」
「てめえ……、もう一度頭を吹き飛ばしてやる!」
「それは出来ないと思いますよ」
サンドライトはさっきと同等の速さでエイシスの頭に爪をかけたが、エイシスの頭が消えた……?
いや、亀の頭の様に引っ込んだのか?
サンドライトは瞬時にエイシスの体を爪で貫通させているが、エイシスの体がサンドライトの腕ごと押さえた。
「くっ! 抜けねえ! ……グアア!!」
エイシスの体を貫いている腕が溶かされしまう。
すかさず距離を取るサンドライト。
「くくく、だから出来ないと言ったでしょう。 既に月は二つになっていますからね。 そのレリックは月の力を借りてその者の潜在能力を引き出し、パワーアップさせる代物ですから。 月が一つになった時だけの不死身では私は倒せませんよ」
エイシスはレリックについて説明しながら何事も無かったように元に戻る。
「お前……、なんなんだ!?」
「不思議ですか? 答えは簡単ですよ。 種明かしをするなら、私達ヴァルスケルハイトは人造人間なんですよ」
「人造人間!?」
「それは無いにゃ! 人造人間はご主人様と私、あとはフランだけのはずにゃ!」
「確かに純粋な人造人間は貴方達でしょう。 私達は今この時代に造られた人造人間なんですから」
「人造人間を作った……?」
「そうか、だから緋燭の塔で私達を探していたのかにゃ!?」
そう言えば研究の為とか言ってたな。
「そうですね。 塔では既に復活してしまっていたし中はめちゃくちゃで困りました。 その後、そこのネコが変身する所を見ましてもしやと思い、シャッテに連れてくるように伝えたのですが、逃げられてしまって困ったものです」
「もしかしてフランを研究していたのもお前か!」
「もちろんです。 ですが、完全な人造人間では無かったので、廃棄処分しようと思っていたら逃げた様ですね」
「その研究結果で自分達を人造人間に改造したのか!?」
「おや? おかしな事を言いますね。 人造人間は人の細胞から作り上げていくので、改造とは違いますよ。 私もシャッテも一から生み出された生命体ですよ」
ヴァルスケルハイトの全員がそうだと言うのか……?
「誰がお前達を作ったんだ!?」
「ふふ……、それは私を捕まえられたらお教えしましょう」
エイシスの体が触手の様に伸び、いつの間にか空に浮かんでいる魔導飛空船から出ているハシゴに捕まる。
「ではまたお会いしましょう!」
魔導飛空船 は何処かに飛んで行った。
「待ちやがれ!」
サンドライトは失った腕を少しずつ再生させながら、エイシスが乗り込んだ魔導飛空船の後を追う為に穴が空いている天井に向かった。
「おい! ムーンはどうするんだ!」
「俺とムーンは既に一心同体! 奴を倒して弔いとする! 亡き骸はお前達に頼む! アームダレスの見晴らしの良い場所に埋めてやってくれ!」
「なにを言って……!」
サンドライトは行ってしまった。
……ムーンを連れて行こう。
「ご主人様! この獣人の娘、かろうじて生きてますにゃ!」
「なに! 本当か!?」
「多分レリックの効力がまだ残っていたのかも知れないわ。 でも私の治療薬を全部使っても、長くはもちそうに無いわ……」
「……リュビナイトならなんとか出来るかも……」
「リュビナイトに行ければ……」
しかしリュビナイトはヘイトルーガ。
とても間に合わない。
「私に考えがあるわ」
「何か良い手があるのか?」
「ここの魔導飛空船を拝借してリュビナイトに急ぐのよ。 上手くいけばギリギリ間に合うかも」
「魔導飛空船を盗むのか……、それしか無いかも知れないな」
エイルの提案にのり、アンとエイルが爆弾を仕掛けた魔導飛空船の場所に急ぐ。
「ここか……」
そこには魔導飛空船がずらっと並んでいる。
二、三十機はあるんじゃないか?
この中の一機を奪って逃げる。
黒ローブの奴らがウロウロしているが、構ってる暇は無い。
「皆んな、一気に突入する。 ムーンはレアに任せる。 アンは先頭で出口に近い魔導飛空船を奪ってくれ。 レアはその後を、エイルは二人の援護を頼む」
「ケンジはどうするの?」
「俺はゲートを開きに行く」
「……それなら私が行く?」
「いや、魔導飛空船は俺じゃ動かし方が分からない。 三人に任せる」
「……わかった、気をつけて……」
「ああ、勿論だ」
三人が魔導飛空船に向かいやすいように敵を誘き寄せるか。
反対側で火の魔法をぶちかまし、黒ローブの奴らを誘き寄せた。
「侵入者だ!」
「捕まえろ!」
誘いに乗ってきたか。
あちこちに魔法をぶちかました。
「なんだこいつ!」
「火を消せ!」
黒ローブ達はだいぶ動揺している。
「よし、皆んなは乗り込んだな。 ゲートを開けに行かないとな」
入り口を操作する部屋を探して、ゲートを開ける。
「なんだ! ゲートが開き始めたぞ!」
「あそこにいるぞ! 捕まえろ!」
「早くゲートを閉じろ!」
「なんだ! 魔導飛空船が動き始めてるぞ! 他に仲間がいるのか!」
ゲートが完全に開くまでここは死守しないとな。
部屋の入り口の扉が叩かれる。
開かないようにぶっ壊したからな。 ちょっとは時間が稼げるだろう。
「逃すな! 魔導飛空船を撃ち落とせ!」
黒ローブ達が皆んなが乗っている魔導飛空船を囲む。
ゲートがギリギリ魔導飛空船を通れる位開いたので、操作する機械を破壊した。
そしてガラスを破り、魔導飛空船へ走る。
既に魔導飛空船は浮き上がり、出入口のゲートへ向かい始めた。
「ご主人様! 急いで下さいにゃ!!」
魔導飛空船のハッチからレアが叫ぶ!
だが黒ローブ達に邪魔され、皆んなの魔導飛空船に追いつかない。
「ダメか……、ならここで食い止める!」
覚悟を決めた時、俺の体にアンのスライムが紐状に巻き付き、俺も空中に上がる。
「……ケンジ……、重い……早く登って……」
「ご主人様!」
二人で俺を支え、何とか魔導飛空船の中に入る事が出来た。
「二人共助かったよ。 運転しているのはエイルか?」
「ケンジの回収出来たなら、こっち手伝ってよ〜!」
エイルはなんとか運転してるって感じで、魔導飛空船もフラフラしている。
「ご主人様! 来ます!」
魔導飛空船の窓から後ろを見ると、基地から何台も魔導飛空船が追いかけてきている。
「エイル、爆弾はどうした?」
「そうだ! 忘れてた! 運転変わって」
エイルから運転を変わると、鞄からスイッチを取り出す。
「いっくよ〜!! ポチッとな」
エイルがスイッチを押すと、さっきの場所から火の手が上がる。
爆発は次第に大きくなり、巨岩の大地を半分吹き飛ばす程だ。
それでも数台は追いかけてきている。
「ご主人様どうするにゃ?」
「なんとか巻ければいいんだが……」
俺達の乗っている魔導飛空船が爆発音と共に激しく揺れる。
「きゃあ!」
「……攻撃されてる……」
「こっちも反撃しないとやられるぞ! 何か無いのか?」
「この船にも攻撃する手段があるはずです」
「操縦はご主人様に任せますにゃ。 二人共、反撃しに行きますにゃ」
「ええ」
「……任せろ……」
俺はとにかくヘイトルーガのリュビナイトに向けて舵を切った。
読んで頂きありがとうございます。
次話も頑張ります。




