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五十ニ話 【凱旋】

 なんだか良い匂いがする……、お日様のような匂いだ。

 枕もふかふかで柔らかい。

 これは起きたくなくなる……。 もう少し寝たいよう……。 むにゃ…………。


「……ンジ……ま、……そろそろ……て……」


 ん……、……もう少し寝てたいんだ……。


「ケンジ様……、もう起きてくれませんか?」


 眠い目を擦りながら上半身を起こすと、ポインっと、クッションに阻まれた。

 意識がはっきりしてくると、俺が寝ている場所はどうやらお姫様の膝の上……。

 良い匂いがしていたのはお姫様自身、そしてクッションはお姫様の豊満な胸。

 低身長ながらエイルを超えるサイズ……。

 戦いに夢中で気にしなかったけど、戦っている時もすっごい揺れてたしな……。

 部屋の中ではエイルとルルアに冷ややかな目で見られている……。


「やはり優勝者には美女が似合うね〜」


 この声は……ラヴィンさん?

 なんでラヴィンさんが俺の部屋に?

 ……て言うか、ここ何処だ?

 起き上がり辺りを見渡すと、最初に通された屋敷の部屋だった。

 部屋の中には、お姫様、エイル、ルルア、ラヴィンさん、そしてお姫様の侍女がいる。

 レアがいない……。


「レアはどうした?」


 レアの事を聞くと、屋敷に取り残されている奴隷がいないか確認に行っているようだ。

 アンは試合が終わると姿を消してしまい、 皆んなも一度屋敷内を確認して来て、戻って来たばかりだと言う。

 そして戻って来れば俺が侍女に見守られながらお姫様の膝の上で寝ていたってわけだ。

 お姫様に申し訳なく謝るが、ラヴィンさんには「その位は特権だよ」 と言われてしまった。

 まあ……悪くない……。

 そう考えていると、また二人に冷ややかな目で見られた。


「ご主人様、具合はどうですか?」


 レアが戻って来た。 地下は異常無しって事だ。

 どうやら奴隷は全員解放されたって事だな。 良かった良かった……。


「レア、確認ありがとう」

「いえ、私はご主人様の手間を省いただけですよ」


 俺が起きたら確認しに行くと言うだろうとふんで、先に確認して来てくれたらしい。 流石レアだ。

 それで、俺はなんでここにいるか聞いてみると……。

 ヴァルスケルハイトのハイブラをなんとか撃退出来たが、精魂尽き、魔力も尽きた俺はあの闘技場で倒れた。

 その俺をレアが部屋まで運んでくれたって事だ。

 誰もいない部屋でお姫様が先に起きたから、膝枕をしてくれていたらしい。

 何故、膝枕?


「それで、ケンジ君はこの後どうするんだい?」


 それは勿論お姫様をアームダレスに送り届けないといけないからな。


「アームダレスにお姫様をお連れするつもりです」


 俺のお姫様呼びが気になったのか、お姫様が俺の前にくると、肩に手をかけ名前を名乗る。


「私の名前はライア……、アームダレス国王キングダレスの娘、獣闘士(じゅうとうし)の【ライカン・ダレス・ライア】です。 これからはライアとお呼び下さいね」


 お姫様に両手で手を握られ…………手を離してくれない……。


「ちょっと! ご主人様から離れて下さいませんか?」


 手を離さないライアにレアが文句を言い始めた。


「あら? 何故離さないといけないのかしら?」

「ご主人様が嫌がっていますから!」

「そうは見えませんが?」

「それにお姫様が異性にそのような事をしているのはいささか問題があると思いますが?」

「それならご案内ください。 我がアームダレス王国は強き者の国。 父上が技を授け、私を打ち破り、あの不気味なヴァルスケルハイトをも退けました。 婿の資格は十分でございますわ」

 む、婿?


「そんなのダメに決まっています! 私のご主人様は私と一心同体なんです!」

「一心同体とは言っても、ご主人様なら問題ないですわよね?」

「ケンジは私が見つけたんだから、私のだよ!」


「ガルルル!!」

「フシャー!!」


 息巻く二人の間にエイルも加わり、一触即発、どうにもならん……。


「はい、はい、そこまでですよ」

 割って入ったのはラヴィンさん。


「まずはアームダレスに向かいましょう。 お姫様をお届けしないとですからね。 外には竜車を呼んであります」


 とりあえずその場は収まり、客車の大きな竜車に乗り込む。

 ここでも俺の隣りで言い合いが始まったので、先に乗り込んでいたルルアの隣に座った。


「え? 私の隣で良いんですか?」

「もちろんだよ。 それとも俺じゃ嫌かな?」

「そんな事無いです!」


 少し照れているルルアの横に座り、アームダレスに向かう事になる。


「ラヴィンさん、リーナさんは?」

「リーナならあの後修行の旅に出たようだよ」

「そうですか」

 今度お礼を言わないとな。

 かなり大変だった武術大会、その開催地である屋敷が遠のいて行く。


「あの屋敷はどうなるんでしょう?」

「国が管理する事になるだろうね」

 話していると、ヴァルスケンの紋章が入った竜車が数台通り過ぎて行く。


 今回の事で分かったのは、まだまだ実力が足りない。

 他の場所に行ってもっとパワーアップしないとこの先、ヴァルスケルハイトが立ちはだかったら太刀打ちできるかわからない。

 そして俺の右手にある魔導法術機(ガルファー)はどうなっているのかルルアのお爺さんに調べてもらわないとな。

 考え事をしていると、向いの席ではまだ三人が言い争っている。

 それを止めるルルア……。


 やかましい竜車の屋根に寝っ転がりながら、あくびをしている女性が一人、いっ時の平和を楽しんでいた……。

 読んで頂きありがとうございます。

 次話も頑張ります。

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