五話【道中】
ニール村の依頼で俺達は準備を済ませて向かう事になった。
街道の道は途中まで魔生獣除けの外灯があるので気にせず歩けるが途中からは無い。
既に買った食糧を懐に抱えて食べ始めているエイルに聞いてみた。
「せっかく温かいので早く食べないと勿体無いじゃないですか! それに悪くなってしまう前に食べないと!」
聞いているのはそこじゃない。
「……そうじゃなくて、なんで外灯が途中までしか無いんだ?」
「ふぁいとう《外灯》……、ゴクン……、ですか?」
「そ、そう……」
「外灯に使っている魔導石は結構高価で、時間と共に効果が落ちてくるので、効果が落ちたら新しく交換しないといけないんです。 だから沢山は作れませんし、この外灯の光りが効かない魔生獣もいるので、遠くまでは作れないようですね」
ずっと使えるわけじゃ無いのか。
「ニール村まで歩いて三日位だよな?」
「そうですね」
「乗り物とか使えば良かったんじゃ無い?」
「獣車ですか?」
魔生獣が引っ張ってたのは獣車ってやつか。
「そう、それそれ」
「獣車に使うお金無いです」
「ニール村までだといくらくらい?」
「獣車によりますが、500、600ジル位だと思います」
うん。 その抱えてる食糧代で乗れたね……。
その後、外灯のある場所までは魔生獣も襲ってくる事無く、休憩も兼ねて歩いた。
「日も暮れて来たので、今日はここで野宿しましょう」
「ここで!?」
俺は生まれて一度も野宿やキャンプはした事が無いから、屋根が無いのは不安だ。 しかも魔生獣もいるって言うのに……。
「大丈夫ですよ。 ここならまだ外灯の光りがありますし、むしろ外灯が無いここからが大変なんですから、少しでも休んでおかないとダメです」
そうか、この先は外灯が無いのか。 さすが慣れてるな。
「わかった、それじゃここで野宿しようか」
「はい」
エイルは鞄から一人用の小さいテント、調理器具を取り出している。
「この小さいテントで二人で寝るのか?」
俺はこの時ただ疑問に思った事を普通に聞いてしまった……。
「え!?」
エイルにびっくりされ、自分が何を聞いたのかこの時気がついた。
「何言ってるんですか! ふ、二人なんて!! そんな訳ないじゃ無いですか! 一人は見張りで交代で寝るんですよ!!」
エイルが頬を膨らませプイッとそっぽを向いてしまった。
「ご、ごめん。 野宿は初めてで……、別にそう言うことじゃ無くて……」
「…………」
エイルはそっぽを向いたままだ。
怒らせてしまったか……しまったよなあ……。
「……な〜んて、ね。 別に怒ってませんよ。 ケンジはまだまだこの世界についてよく知らないんでしょ? それなら仕方無いじゃ無いですか」
「ありがとう、これから気をつけるよ」
「いいですよ。 ケンジはエッチと言う事にしておきます。 さ、ご飯の用意しましょう」
この時、俺はエイルにエッチ認定された……。
二人で薪を集め、椅子になりそうな石や木を探す。
「それじゃ火を着けますねー」
どうやって火を着けるのかと思っていたら、魔導法術機を使うようだ。
使う所初めて見るな。
エイルは魔導法術機が付いている方の手を薪に向け、指を差し目を閉じる。
「ファイヤ」
エイルの指先から小さい火が薪に飛び、火が着いた。
「おお! すげえ! これが魔法!!」
異世界って言ったらやっぱりこれだよな〜。
「そうですか? この位は生活でも使う魔法なので殆どの人は出来ますよ」
「俺もやってみたい」
「良いですよ。 やってみますか?」
エイルが魔導法術機を貸してくれた。
だけど、エイルの手は俺より小さいので入らない。
「手にはめなくても大丈夫です。 魔導法術機を手に持って、自分の魔力を魔導法術機に流す感じでやってみて下さい」
エイルがやっていたように目を閉じて魔導法術機に集中する。
「ちょ! ケンジ! ケンジ!!」
エイルに呼ばれ目を開くと、目の前に火の玉がどんどん大きくなっていく。
「うわっ! エイルこれどうしたら!?」
「わからりません! そ、そら、空に撃って下さいー!!」
言われたように空に向けて唱える。
「ファイヤ!」
俺の手からバランスボール程のサイズがある火の玉が空に向かって飛び、空中で花火の様に破裂して消えた。
「あ、危なかった……」
俺はだいぶビビっていたが、エイルは……。
「ケンジ……、凄い! 凄い! あれ私の魔導法術機だよね!? 私でもあんなサイズ出来ないよ! しかもこの魔導法術機で出来るなんて!!」
エイルは俺の腕を取り、興奮するようにブンブンと振ってくる。
「あ、魔導法術機壊れて無いよね?」
俺は持っていた魔導法術機をエイルにそおっと返す。
壊れて無いよな……。 確か高価って聞いてるし……。
エイルは手にはめて色々調べてる。
「うん、大丈夫ですね。 魔導石も問題無し。 さっきの魔法は殆どケンジの魔力だったみたい。 ケンジは魔法使えるのかも知れないですね」
マジか。 それが本当なら嬉しい。
「こんなの見せられたら益々手放せないですね……」
エイルがボソッと何か言っている。
「何か言った?」
「いえ、なんでもないです。 それじゃ料理を始めますね」
エイルは買ってきた食材を切り、鍋に放り込む。
そして飲み水用の皮袋から鍋に移す。
「水はその魔導法術機の魔法で出せないのか?」
「青い魔導石を使えば出せますけど、私は水の魔導石と相性が悪いみたいで、この鍋に水を出したら魔導石をかなり消耗してしまうので、割に合わないです。 ケンジなら出来たかも知れないですね……。 そっか……先に実験しておくんだった……」
エイルが少しガクッとしてしまう。
「俺が魔導法術機を持ったら試してみるよ」
どの位の依頼をこなせば買えるかわからないけどな。
鍋がコトコトと萎えている。
「エイルはなんでガルになったの?」
「私ですか? 私は……錬金技巧術師の修行が終わった後、旅に出たんですが路銀が尽きてしまいまして……。 そこで、私の得意な錬金術で食べていこうと思ったんですけど、上手くいかなかくて……」
「それでガルになったの?」
「それだけって訳でも無いんですが、お腹空かせて倒れていた所、守護盾の人に助けてもらって、私もガルになりました。 依頼さえこなせば安定してご飯が食べられますから」
色々ツッコミたい。
「エイルはずっとガッドレージでガルをやって行くの?」
「いえ、私は色々な場所の【古代遺跡】を回って、お宝……じゃなかった、【レリック】を探しているんです」
レリックか。 確か古代の超技術で作られたアーティファクトだったな。
「レリック探してどうするんだ?」
「レリック一つ見つければ大金持ちになれます。 ご飯も食べ放題です! それに錬金技巧術師にとっては研究の材料にもなりますから」
「そ、そうか……」
恐らく前半の理由が主だろうな……。
「うん、美味しく出来た。 それじゃ頂きましょう!」
この日はエイルの作ってくれた野菜と肉(多め)の鍋で夕飯を取ることが出来た。
「美味しかったよ」
「でしょ? 腕にはちょっとは自信あるんだから」
夕飯も終わり、後片付けを済ませる。
「それじゃ私が見張りしますからケンジが先に寝てても良いですよ」
「俺が先に見張りしてなくて良いのか?」
「はい」
「それじゃ……、何かあったら直ぐに呼んでくれよ」
「もちろんです」
俺は先にテントに入り仮眠をとる事にした。
「……ンジ……、ケンジ……」
体をユサユサと揺らされる。
「……ん……? 交代か……?」
「そうですけど、疲れてたらもう少し私が見張りやりましょうか?」
「いた、大丈夫。 変わるよ」
「お願いします」
エイルと交代で見張りに着く。
俺が寝ている間に薪を集めて来てくれたのか、薪が増えている。
助かるな。
俺は剣を隣に置いて石に座る。
夜空には星がよく見える。
月は二つあるのか。
手前に小さい月と奥には大きい月。
それ以外は地球と変わらないな。
静かな夜に、火にくべた薪がバチッと弾ける。
俺はこの後どうすれば良いのか。
地球には戻れないだろうな。
地球では死んでるはずだし。
せっかくだからこの世界を旅して楽しもう。 うんそうしよう。
月が沈み、朝日が顔を出し始める。
エイルが起きてきたらニール村まで急がないとな。
後二日か。
【ガウブル】とはどんな魔生獣なんだろうか?
弱い魔生獣なら助かるんだけどな……。
少し弱気な考えで夜が明けていった。
読んで頂きありがとうございます。
次話も頑張ります。
【黎明のミニ劇場】
〜〜〜〜《エイルの買った物》〜〜〜〜
「パンはパンでも〜長いパン、短いパン、野菜にお肉にフルーツパン、甘いたっぷりクリーム〜♪」
上機嫌で鼻歌を歌いながらパンを買い漁っている。
「移動中にお肉が食べれるか食べれないではやる気が変わりますから、塊で買っておきます」
そこそこの塊を買ったけど、これ腐らせないで食べ切れるのか? それとも鞄に入れておけば腐らないとか?
「腐りますよ。 だから二日で食べ切ります」
「そ、そうか……」
「野菜も大事ですね。 この辺のまとめて買いましょう」
野菜も大量購入。
「そうだ、干し肉は多めに買っておかないと」
干し肉は結構しょっぱめで固い。
でもダシになるんだとかで買い込む。
「後は水を汲んで……と……。 よし、これで準備出来ました」
俺は密かに計算していた。
この食糧にかかったジルは“1150ジル”だ。
足りない分は負けてもらって丁度1000ジルにしてもらっていたが……。
俺の分もあるけど、報酬と割にあっていないよなあ……。




