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四話【初めての依頼】

 守護盾(ガルガード)に合格した俺はエイルと一緒に依頼を受けようと守護盾(ガルガード)支部までやってきた。

「最初はどんなのが良いんだ?」

 最初の依頼だ、きっちりこなさないとな。

「こんなのはどうですか?」

 支部の中にある依頼板の中から一枚の紙を指差す。


【[討伐依頼] 最近、畑を荒らす魔生獣が出て困っています。 その魔生獣の討伐をお願いしたいです。 ランク[アイアン]以上 [ニール村]】


「これランクが【アイアン】以上ってなってるけど、俺まだ【ブロンズ】だよ」

「それなら大丈夫です。 私が【アイアン】ですから」

 そうだ、エイルは【アイアン】になったばかりだったな。

「それなら良いけど、アイアン以上の魔生獣ってなんだろ?」

「う〜ん……、ミリムさんに詳しく聞いてみましょう」


 ガットレージの受付嬢のミリムさん。 緑の長めの髪を三つ編みにして結構なボリュームがある。

 そんな三つ編みを揺らして話を聞いてくれる。


「この依頼の魔生獣ですか? え〜と……」

 ミリムさんは棚から資料を取り出してくる。

「確かに【アイアン】以上のランクじゃ無いと駄目ですね。 魔生獣が【ガウボア】とあります」

「ガウボア?」

「はい。 良く畑を荒らすので駆除対象になる事が多いです。 突進が強く、牙が鋭いのでアイアン以上となっています」

「ケンジと私の小型爆弾(コロボム)が有れば大丈夫です!」

 エイルの小型爆弾(コロボム)にはあんまり期待出来ないけど、なんとかなるだろう。

「この依頼の報酬ってどうなってますか?」

 借金があるから報酬は大事。

「そうですね、討伐依頼となっていますから1200ジルです」

 多いのか少ないのかわからん。

「エイル、どうなんだ?」

「ちょっと少ない気もしますが、後は現場行ってからですね」

「そうか、ならこの依頼受けよう」

「はい!」

 俺達はこの畑を荒らす魔生獣の討伐依頼を受ける事にした。


「この【ニール村】は何処にあるんだ?」

「このガッドレージから北にある農村です。 ここで取れる野菜は美味しいんですよ」

「なるほど」

 エイルって実は食いしん坊なんじゃ無いか?

「準備をして行きましょう」

「そうだな」

 俺が持っている武器と言えばマドルさんに貰った短剣(ダガー)しか無い。 体力の回復薬なんかは必要だろう。


「ケンジの武器が短剣(ダガー)しか無いのは戦力的に乏しいですから、少し遠いですが武器でも買いに行きましょう」

 ジャイアントリッパーの魔石を売って三人で分けた分があるから、そこそこの武器は整えられるだろう。

 ジャイアントリッパーの死骸はエイルが鞄に詰めて町に戻った時に売りに行ってた。

 あのサイズが入るとは驚いたが俺もあの鞄欲しいな。


「なあエイル、その鞄はどうなってんだ? 俺もこれから必要になるかも知れないから欲しいんだけど?」

 腰のベルトに着けている鞄を見てちょっと良いなと思ってた。

「この鞄ですか? これは錬金術で作った鞄なんです。 結構入る便利な鞄ですよ」

 エイルは鞄をポンポンと叩きながら説明してくれる。

 結構とか言うレベルでは無かったよな? あのジャイアントリッパーを丸ごと入れてたし。

「エイルは作れる?」

「ごめんなさい。 私には作れないんです。 私の錬金術とはまた少し違くて……」

「じゃあその鞄は買ったの?」

「この鞄は錬金術の師匠から旅立つ日に貰いました」

「師匠がいるのか?」

「はい、前に話した【フルスレイグ】で錬金技巧術師(アルケミスター)になる為に勉強していた時にお世話になった師匠です」

「フルスレイグはエイルの故郷なのか?」

「いえ……、そうでは無いんですけどね……、あ、武器屋に着きました」

 話しながら歩いていると結構直ぐに着いたな。

 武器屋か……、ちょっと興奮する。


 入口の扉を開けると中には普通のおじさんがいた。

 武器屋だからもっとゴツい人を想像してたよ。


「お、いらっしゃい。 ん? 今日は彼氏連れかい?」

 おじさんは俺の方を見てエイルに冗談を言っている。

「え〜、違いますよ〜」

 はっきり言われるとなんだろう……。 ダメージがあるな」

「それで、今日はどうしたんだい?」

「はい、こちらのケンジさんに武器を見繕ってもらおうと思いまして」

「ふむ、こちらの兄ちゃんにか……、もしかして兄いちゃんも【ガル】かい?」

「?」

「ガルガードの事です」

 エイルが耳元で囁くように小声で教えてくれる。

 そう言えばガルガードの通称が【ガル】だったな。

「ええ、そうです」

「なら、そっちにある剣をなんでも良いから握ってみな」

 店の端にある樽の中に乱雑に置かれてる色々な剣が置かれている。

「これですか?」

「そうだ」

 なんだかわからないが、とりあえず目に付いた一本を手に取り握ってみる。


「軽く振ってみな」

 言われるままに軽く振る。

 ブォンといい音が鳴る。

「なるほどな……、兄ちゃんに合う剣はこいつだな」

 棚に掛けてあった剣を取り、渡してくる。

「降ってみな」

 良くわからないけど、とりあえず降ってみるか。

 今度はフォンと風を切る音がする。

 さっきの剣より握りやすく振りやすい。

「どうだ?」

「ええ、良いです。 振りやすいし、扱いやすいです」

「だろう。 わしの見立てに間違いはねぇのよ。 買って行くかい?」

「おいくらですか?」

「800ジルだ」

 800! 高い! ジャイアントリッパーの魔石を三人で分けた分のジルじゃ足りない!

「負けてもらう事は……?」

 負けてもらわないと買えない金額だ。


「仕方ねえなあ、750でどうだ?」

 750か……、実は600ジルしか持っていない。

 本当ならここから借りていた分を返す予定だったんだけどな。 こうなったら……。

「今は600ジルしかありません。 前金として600ジル払います。 依頼の報酬が出たら残りを払うので、どうでしょうか?」

「おじさん、お願いします」

 エイルも一緒に頼んでくれる。 ありがたい。

「仕方ねえな。 それで良いぞ。 だがな兄ちゃん、剣は己を守る物だ。 金が無くて買えないなんて事が無いようにしろよ。 でないといつか命を落とすぞ」

「はい、肝に銘じときます」

「肝? 良くわからんが、ほら、持って行け」

「ありがとうございます」

 600ジルを支払い、剣を手に入れた。

「やったねケンジ。 結構似合ってるよ」

 腰に身に付けた格好を見てエイルは笑顔で言ってくれる。

 なんだかこれで俺も正式にガルガードになった気がする。


 武器を買って全財産が無くなってしまったので、回復薬とか買えないなあ……。

「次は魔導石が売っているお店に行きますよ」

 魔導石……、そうか、【魔導法術機(ガルファー)】を使う為の物だったな。


 魔導石の売っている店は武器屋の目の前にある。 武器屋の隣は薬などを扱っている店などこの辺は冒険者向けの店が集まっているんだな。


「いらっしゃーい」

 魔導石の売っているお店は若い女性が店番らしい。

「あらエイルちゃん、いつも金欠で魔導石買えない〜って言ってたのに、臨時収入でもあったのかしら?」

「ま、まあ一応……」

 エイルは恥ずかしそうに頭をかいてる。

 そうか、いつも金欠なのか。 何故かは大体想像がつくけど。

「それで、今日はそちらの彼氏さんとお買い物?」

「だから違いますってば!」

 なんかさっき見たやりとりだ。

「依頼で【ニール村】まで行く事になったので、その準備ですよ!」

「冗談冗談、そんなに慌てなくてもわかってるって」

「もう〜〜」

 エイルの頬が少し膨らんでいる。 耳は真っ赤なままだけど。

「さてと、冗談はこの位で、いつもので良いのかな?」

「はい」

 いつもので話が通るのか。

 エイルは赤い綺麗な長方形の板を三枚買っていた。

「まいど〜、また来てね〜」


 店を後にした後、その魔導石を見せてもらった。

「綺麗なもんだな。 これを魔導法術機(ガルファー)にセットすると魔法が使えるのか?」

「そうです。 私は攻撃重視の火の魔導石を買いました」

「火の魔導石? と言う事は火の魔法が使える?」

「はい、でもこの魔導石では初級の魔法だけになりますけどね」

「魔法にもランクがあるのか?」

「はい、【初級】【中級】【上級】とありますが、中には【特級】を扱える人もいるとか」

「特級か、それは凄いな」

「私の魔導法術機(ガルファー)では中級までしか使えませんけどね」

魔導法術機(ガルファー)にも使えるランクがあるのか」

 エイルが手にはめている魔導法術機(ガルファー)を見つめる。


「この魔導法術機(ガルファー)は私の手袋型だけで無く、武器に着けている人や防具に付けている人もいます」

「武器にも付けられるのか?」

 もしかして剣に火を纏わせたり出来るのかも知れない。

「そうですね。 でもそう言う武器は高いですよ」

 高いのか……、やはり金だな……。


「次は薬屋にでも行くのか?」

「いえ、薬はまだあるので大丈夫ですね」

 薬の在庫はまだあるの?

「見せてもらっても良い?」

「ん? どうぞ」

 この異世界ヴァーラシアは薬草かポーションか、どっちだ?

 エイルが鞄から取り出したのは瓶に入った液体のポーションだ。

「これポーション?」

「はい。 薬草を煎じたり、粉にしたりして作ります。 私はここだけの話し、上級ポーションを作れます」

 ポーションにもランクがあるのかよ。

「これを見て下さい」

 ゴソゴソと鞄から取り出したのは小さな樽……。

 それ爆弾じゃない?

「これは薬爆樽(ポーションボム)です。 ケンジさんが寝ている間に作りました」

「ボム……、爆発するの?」

「そうです。 投げて爆発すると、中の薬粉が周りに飛び散って回復させる私のオリジナルです!」

 エイルがドヤってる。

「ポーションに粉があるとは……、ポーションって全部飲み薬だと思ってたよ」

「ポーションの種類は飲み薬、塗り薬、粉薬がありますね。 作る人によって変わります。 私は錬金術で作れるので、粉薬が得意です」

「そ、そうか…」

 傷はあまり負わないように注意しよう。


「これで準備は完了ですね……、あ、肝心な物がまだでした」

「肝心な物?」

 武器、回復薬、魔導法術機(ガルファー)用の魔導石は揃えたけどな?

「食糧です!!」

 そうか、ニール村はここから三日位かかるんだったな。

「早速買いに行きましょう!」

 エイルは早足で買いに向かって行った。

 お金使い切らないと良いんだけど……。

読んで頂きありがとうございます。

次話も頑張ります。


    【黎明のミニ劇場】

〜〜〜〜《エイルの買い物》〜〜〜〜

ガッドレージの屋台が並ぶ場所までやって来た。

エイルは稲妻の如き俊敏な移動で食糧を売っている屋台を回っている。

「は、早い……」

 そして一件の屋台前で立ち止まり、悩み出した。

「どうしたんだ?」

「これなんですけど……」

 屋台を見ると、ホットドッグのようなパンにソーセージを挟んだ物が売っていた。

「食べたいの?」

「そうなんですけど……、もう食糧用に分けているジルが無いんです」

「いくら分分けてたの?」

「……1000ジルです」

 俺の剣より多いじゃないか!

「全部使ったの?」

「……はい……」

 どれだけ買い込んだんだ……。

「ま、まあ、それだけ買い込んだなら大丈夫じゃ無いか?」

「ニール村までなら大丈夫だと思いますけど、これは今買わないといけない気がします!」

「いやいや、それは気のせいだと思うよ」

 エイルの腕を引っ張り、ニール村に向かった。

「あ〜ん! 私の食糧〜〜!!」

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