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三十七話 【洞窟】

  俺とエイルは帝都より南東にある洞窟に向かい、レアとルルアは前に住んでいた家に向かった。

 その道中、エイルが帝国生まれと言う話しを聞く。

 この話しはあまりしないようにしておくか。


「どうしました?」

 洞窟に向かいながら歩いているエイルはあまり気に留めていないようだ。

「この辺りから外灯が無くなるから、気を引き締めて行こう!」

 この辺りからは行き交う人も少なく、たまに見かける位だ。

 

「この森の先に洞窟があるはずよ」

 森を抜けると、崩れた遺跡がポッカリと口を開けている。

「これが洞窟?」

「そう。 古代遺跡の洞窟には魔生獣も沢山いるのよね」

「もしかして、この中にもアーティファクトがあったりする?」

「洞窟も調べ尽くされているから期待は出来ないと思う」

「それは残念だな」

 それは仕方ないか、今は洞窟の魔生獣を討伐する事が重要だ。


 蔦に覆われた入口を入ると、中は暗く明かりがない。

「これを使うわ」

 エイルは鞄から手の平サイズのクリスタルの形をした物を取り出した。

「それは?」

「これは明かりを灯す道具で、錬金術で作ったんです!」

「凄いな」

「でしょー」

 錬金術を褒められて嬉しかったのか、上機嫌で軽やかに通路を進むエイル。


「あんまりはしゃぐと危な━━」

 俺が声をかけると同時に、エイルは通路の石に躓きその場に前のめりでうつ伏せに転ぶ。

「ぐえっ!」

「大丈夫か?」

 差し出した俺の手を「あはは……」 とか言いながら掴もうとした途端、床に穴が開きエイルは落ちて行った……。

「きゃああああぁぁぁぁ〜〜!!」

 バシャン!!

 明かりごと落ちて行ったので、穴の底の方が僅かに光って見える。

「大丈夫かーー!!」

「ぷは〜……、何とか無事〜〜!」

 下はみずのようだし、光るクリスタルを振って無事の合図を送ってくれているから、とりあえずは一安心だな。


「俺も今降りるから、危なく無いように端にいてくれ!」

「わかっ…………、今降りるのは良くないかも……」

「どうしたーー!?」

 良く聞き取れない。

「今降りちゃダメーー!! きゃああ!!」

 明かりを持って走って行ってしまった。

 どうやら何かに追われているのが、薄明かりで微かに見えた。

 床の落とし穴の仕掛けも元に戻ってしまったので、何処か別の場所から急がないと!


 暗くなってしまった通路だが、多少の夜目が効くようになっていた。

 これもパワーアップしたおかげか?

 洞窟を進むが、出てくる魔生獣は【スライム】のみ。

 こう言う暗くジメジメした場所を好む魔生獣だ。

 見た目、陸に対応したクラゲだな。

 サイズもそう大きくは無い。

 ただこいつの消化液には要注意だ。 個体によっては鉄の鎧すらも溶かしてしまう。

 心臓となる核を破壊すれば倒せるので、楽ではあるけどね。


 何匹かのスライムを倒しながら進む。

 消化液を吐く【ブルースライム】 毒を吐く【パープルスライム】 形を変えて包み込んで溶かしてくる【グリーンスライム】 と色によって攻撃方法が違うが、色で判別出来るので戦い方は楽だ。

 エイルを探して洞窟を進む。


「エイルーー!!」

 少し広い場所に出たので、エイルを呼んでみるが、返事は無い。

 ここじゃ無いか。

 この洞窟、意外と広い。

 古代の遺跡は空間が歪んでいたりするらしく、見た目以上に広かったり、古代の技術で地下なのに偽物の空が広がっていたりするらしい。

 古代の技術ハンパないな……。


「来ないでーー!! あっち行ってーー!!」

 奥の方からエイルの声が聞こえる。

 あっちか!

 声のする方へ走って向かうと、部屋の隅で崩れたガレキを何かに投げつけているようだ。


「エイル! 無事か!!」

「ケンジ! こっち来ないでくださーーい!!」

 走ってエイルに近寄ると、こっちにもガレキを投げつけて来た。

「ちょっ! おい!」

 エイルの腕では当たる事は無いので、魔生獣に襲われそうになっているので更に近寄った。

 近寄って行くと、来るなと言う理由がわかる。

 エイルの服がボロボロになって肌があらわになっていたのだ。

 そのエイルの目の前には、今まで戦ったどのスライムよりも巨大なスライムがエイルの投げたガレキを体に取り込み溶かしながらエイルに体を伸ばして掴もうとしている。


 スライムに走って向かい、体を伸ばしてくるスライムをもらった剣で斬り裂くが、そのスライムの体は直ぐに戻ってしまう。

 そしてスライムの攻撃は俺に移った。

 この剣ではスライムの核には届かない。

「こうなったら……」

 スライムの攻撃を躱しつつ、スライムに突進する。

「ケンジ! なにを!?」

 思いっきり突進した俺はスライムに飲み込まれ、直ぐに消化が始まる。

 だが、俺の再生能力の方が優っていたので、溶かされるのは服だけだ。

 剣も少し溶かされたが、俺の剣が巨大スライムの大きな核に届いた。


 核を砕かれたスライムは塵となって消えて行ってしまう。


「ケンジ無茶しすぎです! 溶かされちゃったかと思いましたよ!!」

「ごめん、ごめん。 でも倒せただろ」

「そうです……けど…………」

 エイルは後ろに向くと、ガレキをまた投げつけて来た。

「あっち行ってーー!!」

「な、なんだよ!?」

 エイルはチラッとこっちを見ると、また後ろを向いてガレキを投げつけてくる。


 俺は離れると、自分の姿に気がついた。

 服は溶かされて裸だったのだ。

 エイルも半裸だし……。

 しばらく沈黙が続くと、エイルが落とした鞄を指し示し、それを取りエイルに投げる。

 エイルは鞄からローブを取り出して羽織ると、俺には大きめのタオルを手渡してきた。


 俺は下半身をタオルだけで隠す。 エイルはほぼ下着の状態でローブを羽織っている。

 あの穴に落ちた時、巨大スライムに追われても消化液に溶かされなかったのは、魔力が込められたマントと服のおかげだったらしい。


「でもどうしよう、あの魔生獣消えちゃった」

 そう、塵となって消えた。 塵となって消えるって事はあの生物は魔導獣だったと言う事だ。

 なんでこんな場所に魔導獣が?

 しかも魔生獣を富豪の家に持って行くと言う計画が……。


「まずは洞窟を出て服を手に入れないとな」

「そうね……、あんまりこっち見ないでよ」

「わかってるよ」

 人造人間になってからは性的な欲求もあんまり無い気がする。

 でも人だった時の本能なのか、男としての本能なのか、プロポーションの良いエイルの事は気になってしまう。


 出てくる普通のスライムは俺が倒しながら出口に向かう。

 戦っている最中エイルは目を瞑り、俺のタオルがめくれる姿を見ないようにしていた……。

 たまに解けて下に落ちてしまうからな……。


 洞窟から出ると、一人の黒いローブを着た小柄の人立っている。

「誰だ!」

 小柄の人は無言のまま一通の手紙を渡して来ると、走っていなくなった。

「なんなんだ?」

「手紙とかいいから、早く町で服買いましょう!!」

「そ、そうだったな」

 タオル一枚の俺と、ローブの下は半裸のエイルで帝都まで戻る事になった……。

 読んで頂きありがとうございます。

 次話も頑張ります。

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