三十六話 【大富豪屋敷への道】
暗緑燭の塔でヴァルスケルハイトの一人、【ムーン】と出会う。
そのムーンは獣人のサンドライトの妹だった。
妹のムーンと戦うサンドライト。
ムーンの圧倒的な強さだが、間一髪でサンドライトを助ける事が出来た。
そのサンドライトから獣人攫いの情報をもらい、俺達は今、ヴァルスケン帝国を目指している。
「ケンジさん、ちょいとバード村に寄ってもいいですかい?」
「かまわないですよ」
熊吉さんは何か用でもあるのかなあああぁぁぁーー!!
一気にスピードを上げた獣力車は瞬く間にバード村へ到着した。
そしてとある一軒家の前に止まると、「ちょいと待っててくだせえ」 と家に入って行った。
しばらくして包みに入った長い物を持って家から出て来ると、その包みを渡してくる。
「これは?」
「これはちょいと頼まれましてね。 この得物をケンジ殿に渡すように姉さんから言われてるんでさあ」
包みを取ってみると、中から一本の剣が出て来る。
「これを兎美さんが?」
「そうですぜ。 この剣はあっしが姉さんから預かっていた得物でしてね。 ケンジ殿がこれから向かう先には何があるかわからないから持たせるようにと言われてるんでさあ」
「本当にいいのか?」
「もちろんですぜ。 もらっていただかねえと、あっしが姉さんにおこられちまわあ」
「そう言うことなら、ありがたく頂戴します。 兎美さんにはお礼を伝えといて下さい」
こうして俺は新しい剣を手に入れるた。
今度本人にお礼を伝えておこう。
砦で熊吉さんと別れ、俺達は再度ヴァルスケン帝国へ戻って来た。
アームダレスから入るのは王様のおかげで無料だ。
さて、帝都に入ってやるべき事はアームダレスのお姫様の捜索だ。
ヴァルスケンにはガル支部は無いから、どこから手をつけようか……。
とりあえずサンドライトに聞いた大富豪の屋敷でも目指してみるか。
大富豪についてはルルアも良く知らないようだ。
マブルさんなら知っていたかもな……。
屋敷の場所は帝都を抜けた遥か先。
「向かうのは明日にして今日は宿に泊まるか」
アームダレスの城を出る前に王様に少しの資金としてジルを貰っている。
これはお姫様を助ける為のジルなので、無駄遣いは出来ない。
「……と言うわけで、全員同じ部屋になります」
俺の財布をいつのまにか管理しているレアは宿代を節約して全員同じ部屋にしてしまった。
ここはケチらなくても良いだろうに……。
「安心してください。 ご主人様とは私が寝ますので!」
確固たる意志を感じる。
「え〜! 一緒に寝ようよ〜! ルルアちゃんもレアと一緒に寝たいよね? ね?」
エイルはルルアを味方に引き入れる算段か。
「……はい……」
少しモジモジしながらレアを見つめるその瞳はキラキラとしていて……、うん、俺が一緒に寝てあげようかな?
「ルルアの頼みなら……仕方ありませんね…………、ご主人様申し訳ありません」
「いや、構わないさ」
ルルアに頼まれては仕方ない。
「では、私と、ルルア、ご主人様と寝ますので、エイルさんは一人でベッドを使って下さい」
「なんでそうなるのさーー!!」
朝、部屋のドアがノックされると、宿の主人が俺宛の手紙を持ってきた。
誰からだ?
手紙の差出人は兎美さんだ。
蝋で封をされている手紙を開くと、お姫様の行方の手がかりが書いてある。
【姫は東の大富豪が近々開催する[裏武術大会]に出る可能性が高い。 [裏武術大会]はスカウトの目に止まらないと出場は難しい。 目立つように暴れるべし】
との事。
目立つように暴れろと言われてもな……。
それにしても兎美さんなんでお姫様の事を?
深く考えても仕方ない。 せっかくの情報だ。 役立たせてもらおう。
この手紙の事を起きた皆んなに話し、暴れる場所の目途を立てる。
一つ、酒場で喧嘩をふっかける。
これはスカウトの目にも止まりそうだが、兵士の目にも止まりそうなので却下。
二つ、屋敷の前で暴れる。
これも兵士を呼ばれて終わりだろう。
三つ、屋敷から離れるが南東に向かうと洞窟があるらしく、そこにいる魔生物を倒して屋敷に運んでお目通りをする。
これが一番良いと思う。
節約のために軽い朝食を取り、南東にある洞窟へと向かう事にした。
ただ、ルルアは前に住んでいた家に一度戻りたいとの事だったため、護衛としてレアを一緒に行かせた。
洞窟に行くのは俺とエイルだけだ。
「私、この辺に来るのは初めてです」
帝都から長く続く石畳みの道をキョロキョロしながら歩く。
この石畳みの道は魔生物除けの外灯が付いているので、安心して歩ける。
「エイルって帝国初めてじゃ無いんだな?」
「え? あ……」
しまったーー、と言う顔を向けてくるが、言いたく無ければ聞く気は無い。
「ごめん!何か理由があるなら言わなくて良いよ」
「……、いえ、もう仲間に隠し事は良くありませんからね。 私はこの帝国生まれなんです。 私の両親は帝国の研究者で、研究中の事故で亡くなったと聞いています。 そして一人になってしまった時、私の師匠と出会いました」
「そうだったのか……」
もしかしてその研究者って前にマブルさんが話していた人なのかも知れないな。
「小さかったので、帝国の記憶は殆どありませんけどね」
エイルは軽く笑うと、クルクル回りながら先に進んで行く。
俺達皆んな親がいないのか……。
でももう家族みたいなもんだしな。
過去より現在、そして未来だ。
その為に早くお姫様を助けて、また世界を巡ろう。
先に進んで目を回しているエイルに追いつくと、洞窟を目指した。
読んで頂きありがとうございます。
次話も頑張ります。




