三十一話 【アームダレスのガルガード】
アームダレスに着いた俺達は当面の資金の為に依頼を受けるのと、ルルアの安全な場所を見つける為、ガル支部を訪れた。
「いらっしゃーい。 今日はどんな御用かしら〜?」
受付で出迎えてくれたのは少しおっとりした感じの兎耳のお姉さん。
「あら〜? 獣人じゃ無い人は久しぶりね〜。 何かお困り事でも〜?」
「いえ、俺達は守護盾です」
「あらあら、そうなの〜? アームダレス守護盾支部へようこそ〜。 私はこの支部の受付をしている【ホラン】です〜。 それでどうしたのかしら〜?」
俺はこの眼鏡をかけたむっちり系の兎耳のホランさんにアームダレスに来た経緯を話した。
「━━そうねぇ〜……」
ホランさんはもちっとした頬に手を当てて考えている。
「ここは獣人の国だから〜、人族用の依頼って殆ど無いのよ〜」
「そうなんですか……」
これは困ったな。
「もともとこの支部にくる依頼は〜、少なくて〜。 皆んな殆ど自分達で解決しちゃうから〜」
確かにホランさん以外の人は見当たらない。
「そうだ〜!」
ホランさんが手を鳴らし、何か思い出したように奥の棚から一枚の紙を持って来る。
「ケンジさんと〜、エイルさんのランクっていくつかしら〜?」
「二人共シルバーです」
ヴァルスケン帝国ではガルが無いし、人攫いなどで依頼を全く受けれていなかったので、ランクは上がっていない。
「シルバーね〜……、シルバー、シルバー…………、え!? 二人共もしかして〜、エルメリオン王国で未知の敵と戦ったりした〜!?」
「はい、そうです」
「…………うん、これならいけるわ〜。 二人共この依頼受けてみない〜?」
差し出された一枚の依頼書。
「今〜、このアームダレスでは〜、獣人攫いが頻発していて、困っているのよ〜。 この依頼を見事に解決してくれたら、報酬ははずむわよ〜。 それにルルアちゃんの住む場所も〜私が面倒見るわよ〜」
ガル支部の受付嬢ホランさんが面倒見てくれるなら安心だな。
「ですが、他のガルの人が受けてたりしないんですか?」
依頼を横取りされた! なんて後から言われても困る。
「それなら大丈夫よ〜。 他の〜、ガルは今別の依頼受けていたりしますから〜」
それで人がいないのか?
「それにしても他のガルの人いませんね」
「そうなのよね〜、このガルには三人の守護盾がいたんだけど〜、一番熱心に働いてくれてた人が辞めてしまって〜……。 今は二人しかいないのよ〜」
「その二人は別の依頼を受けていると?」
「そ、そうね〜……、依頼受けてるの一人だけど〜……」
歯切れが良くない。 一体どう言う事だ? あと一人は?
「それで、どうかしら〜?」
ランクがシルバーで受けられて、報酬も高い。 ルルアの居場所も出来るなら断る理由は無いが、条件が良すぎる気もする。 でも……、一文無しは辛い……。
「わかりました。 お受けします」
「ほんと! ありがとうございます〜。 それじゃ案内するわね〜」
ホランさんはトライアングルの様な楽器を取り出した。
その音色はトライアングルより少し高い音だが、耳にキーンとくる様な音色ではなかった。
すると二階からドタンッと何かが落ちる音が聞こえ、ドタドタと部屋を出てくる音がする。
「ホランーー! その音やめてーー!!」
階段から降りて来たのは獣人の子共?
「ほらほら〜、お仕事ですよ〜」
「わかった、わかったって!」
その子はルルアより背は高いが、完全に獣人の犬っぽい顔をしていた。
「こちらは〜、ケンジさん〜」
ホランさんに紹介されると、俺の前に立って挨拶してくる。
「どうも初めまして。 僕はラカンです。 ランクはアイアンです」
「初めまして、ケンジです。 ランクはシルバーです」
お互い挨拶を済ませると、ホランさんに俺達を案内する様にと頼まれていた。
「わかりました! では行きましょう!」
ラカン君に案内されながら、町を歩く。
「ケンジさんはエルメリオン王国で未知の敵と戦ったんですよね!?」
「そうだよ」
「そっかーー! カッケーー!!」
なんか元気な子だな。
「僕、人族のガルに合うの初めてなんです! その初めてがケンジさんみたいなカッコいい人で良かったーー!」
ラカン君は尻尾をパタパタと振っている。
子犬みたいで可愛いな。
「そうです。 ご主人様はカッコ良くて凄いんです!」
なんだかレアも得意げだ。
「ラカン君はアームダレス支部のガルなの?」
エイルは私も戦いましたと、ラカン君にアピールしながら聞いている。
「ラカンでいいですよ。 僕はこの支部でガルになったんです。 今は修行中です」
「それで、何処に行くんだ?」
「えーと、城ですね」
「え!? アームダレス城?」
「はい。 依頼は城からなんです」
まさかいきなりお城に行く事になるとは……。
ラカン君に案内されながらも、町の住人からはジロジロと見られている。
誘拐事件でよそ者を警戒しているのかも知れないな。
「レアさんは獣人なんですよね?」
ラカン君はレアに同じにおいを嗅ぎ取ったのか、質問している。 やはり気になるのか?
「そうですよ」
本当は少し違うが、レアはあっさりと答えた。
「レアさんはどの獣人なんですか?」
どの獣人とは?
「何故ですか?」
「アームダレス王都では変身の違いで住む場所が変わるんです。 僕は元々獣人の姿だけど、変身すると四つ足の獣人に変わるんだ。 でも早く走れるようになるよ」
「他にはどんな変身があるの?」
「他には、レアさんの様に人族に近い姿から獣になったり、変身そのものが出来なかったりとかかな」
「そんな違いがあるのか」
獣人には色々なタイプがいるんだな。
「さ、着いたよ」
入口の門の向こうにはジャングルが広がっている。
「本当にここ?」
「そうだよ。 この奥に城があるのさ」
このジャングルの向こうか……。
入口の獣人の兵士さんにはラカン君が話してくれ、あっさりと通された。
「本当にジャングルみたいだな……」
「僕らは獣人だからね。 この方が敵が攻めて来た時、戦いやすいんだ」
「なるほど。 獣人としての戦い方か」
ジャングルを抜け、ラカン君に案内されたのは今まで見た城よりゴツい。
石で出来た宮殿の様な城だ。 ちょっと日本の様な和の城を期待したんだけどな。
「それじゃ、僕はここまでだから」
そう言って、ラカン君は手を振って帰ってしまった。
兵士に案内され、一室に通された。
「ここで少しお待ちください」
通された部屋の調度品はどれも豪華そうだ。
「それにしても、ここまでの道凄かったね」
エイルは城までのジャングルで魔生獣でも出て来ないかとビクビクしていた。
「ちょっと探検してみたいな」
ルルアはあのジャングルを探検したいなんて……、子供の好奇心恐るべし。
「……、それにしてもいつまで待たせるのでしょうか?」
案内されてから、一時間は経過している。
「そうだな。 少し時間かかり過ぎな気もする」
「忙しいんだよきっと」
グ〜キュルル。
「あ!」
ここまで我慢していたエイルのお腹が限界を迎えた音が聞こえた。
「お腹空きました〜」
エイルがソファーに倒れ込むと、ノックする音がする。
「失礼します」
一人のメイドさんが入って来る。
「大変お待たせしております。 今しばらくかかりそうですので、お風呂でも如何でしょうか?」
「え!? 風呂あるの!?」
しばらく入ってないし、風呂は嬉しい。
「私はお腹空きました〜〜」
「お食事はお風呂で後にご用意しております」
「それなら直ぐ行きます!」
メイドの背中を押して部屋を出るエイル。
「私も行きますー!」
ルルアが後を追う。
「俺達も行こうか」
「はい」
俺とレアもエイルの後を追った。
読んで頂きありがとうございます。
次話も頑張ります。
最近時間が無くて更新遅くて申し訳ないです。




