三十話 【獣人の国 アームダレス】
魔生獣【ニルドバード】の強襲が有り、ルルアが崖から落ちると言うハプニングも合ったが、やっと【ライガー砦】へ到着した。
「やっと着いたな……」
「そうですねえ……」
エイルはニヘっと笑いながら大地に降り立つ。
「まったく…………」
エイルは結局レアの背中に乗せてもらって来た。
「おや? こんな時期に旅人さんかい?」
砦の兵士が登ってくる俺達に気がつき歩いてくる。
「ええ、これからアームダレスに行きたいのですが、出来ますか?」
「手続きをすれば可能だが、待合所で服を乾かしてから行ったらどうだ?」
ビショビショに濡れている俺達の姿を見て言ってきている。
確かに皆んなビショビショだ。
エイルやルルアが風邪を引いたら大変だからな。
兵士の人に待合所まで案内してもらう。
「ここは温かいですね」
「そうだな」
案内された待合所の室内は暖かい。
「ここはな、魔技師が作った道具で魔石を使って部屋を暖かくしているのさ」
「へー、さすが魔技師の国ですね」
「だろう。 ま、ゆっくりしていけよ」
兵士の人はそれだけ言い終えると、持ち場に戻るのか部屋から出て行った。
「ひとまず、服が乾くまでここで休むしか無いな。 …………ルルア何してるんだ?」
ルルアは濡れている服の事などお構いなしに、部屋を暖かくしている道具が気になるのか隅々まで見て独り言を言っている。
「……なるほど……、ここが……、ここに魔石を使って……ふむふむ……」
あー、こうなったらしばらく声は届かないだろう。
服を早く乾かす為に、体を布で巻き服を脱いで乾かす。
レアは小さい猫の姿となり、ルルアと温まっている。
「今日はこのままここに泊まる事になりそうだな」
「そうですね」
ここで一泊と思ったが、このライガー砦には旅人などが泊まれる部屋が無いとの事だったため、待合室で一泊過ごさなければいけない。
部屋が無いならしょうがない。 屋根があるだけましだな。
それにこの部屋は暖かく温度も丁度良い。
翌朝、俺達は手続きを済ませ、ついに獣人の国【アームダレス】に入る。
「ここから山道を下りて一番近い【バード村】へ行ってアームダレスまでの足を探しましょう」
「そうだな」
新しい国アームダレスを知っている仲間はいない。
何処かで地図かなんかが手に入ると良いんだけど……。
「ここがアームダレスなんですね!」
初めて違う国に来たルルアはテンションが上がっている。
砦のある山の上から眺めれば運河と草原が広がっているのが見える。
風が気持ちいい。
国が変わるだけでこんなにも風景が違うのか……。
アームダレス側の砦には少し変わった獣車が置いてある。
これに乗れれば早く着きそうだけど……。
「この変な形の獣車初めて見ますけど、魔生獣がいませんね?」
エイルも初めて見る形の獣車のようだ。
五台程置いてある獣車には魔生獣がいない。 使えないのか?
俺達が獣車を眺めて不思議がっていると、五人程しゃがんでタバコを吹かせていた体格の良い男性達がゾロゾロと近づいてくる。
法被の様な服を着て、ねじり鉢巻をした男性達は俺達に近づくと、俺の頭二つ分位の高さから腕を組んで見下ろして来た。
「け、ケンジさん……」
「お……大きい……」
エイルとルルアは小刻みに震えしがみついてくる。
確かに……ちょっと怖ぇ……。
レアはすまして立っている。
「兄ちゃん達……、獣力車を使用で?」
体格の良い男は俺の顔を覗き込む様に話してくる。
「じゅ……、獣力車ですか……?」
「なんだ、獣力車を知らないって事はアームダレスは初めてか? いいねえ、それなら安くしといてやるから、いっちょどうだい?」
男は肩に手を回して指を擦る仕草をしてくる。
圧が凄い!
「で、ではよろしく……お願いします……」
圧に負けてしまったが、ま、まあ、良いだろう……。
獣力車は二人乗りになっている。形としては人力車を少し大きくした感じだ。
一台目には俺とレア、二台目にはエイルとルルアで乗る事になる。
「よっしゃ、いくぜ!!」
俺達が座席に着くと、男が獣力車の梶棒を持ち、姿が変わる。
身体が膨れ更にデカくなる。 しかも全身に毛が生えてモフモフし始めた。
もしかして獣人!? そういえば獣耳が生えていたような……。 体のデカさにビビって見えたなかった。
二人共軽々と獣力車を引き始めた。
「いやー、久しぶりだぜ、人族を乗せるのはよ」
走りながら話しかけて来た。
「あんまり人間は来ないんですか?」
「そうじゃねえ、人族もたまに来るが、どいつもこいつも俺達獣人を見下すんでな。 気に入った人族だけを乗せる事にしたんだよ」
俺は気に入られたのか?
「俺は合格って事ですか?」
「兄ちゃんと一緒のその娘さんは、獣人だろ? 兄ちゃんにべったりくっついてるしよ、着ている服も悪かねえ。 獣人を大切にしてるって事だ」
そう言う事か。
てことは、レアのお陰なのかも知れない。
「それで、バード村までで良かったのかい? 兄ちゃん達なら同じ値段でアームダレスまで連れてってやるぜ」
それは助かる。 値段が同じならこのままアームダレスまで行くのもありだな。
「では、お願いしても良いですか?」
「おうよ! 任せときな!!」
獣人の男は脚に力を込め、速度を増して獣力車を引く。
土煙を上げて道を進むと、前に魔生獣【ガルムアント】の群れが待ち構えている。
「どけどけえ!!」
獣力車は速度を落とす事無く、むしろ更に加速してガルムアントへ突っ込んで行く。
「ちょ! まえ! まえーー!!」
ガルムアントも向かってくるが、獣人の男に弾き飛ばされ宙を待っている。
俺達の乗った獣力車はガルムアントの群れを吹き飛ばし突き進む。
日も暮れ始めた頃にはアームダレスに到着していた。
「着いたぜ」
アームダレスの城下町まではこの獣人のお陰ですんなり入る事が出来たが、俺達全員グロッキーとなり目を回していた……。
「うう…………気持ち悪い……」
エイルは座席で青くなっている。
「激しすぎです…………」
ルルアもダウンだ。
レアも少し頭を押さえているけど、俺は吐きそうな位の衝撃だった……。
「あれま、少し激しかったか?」
獣人の男性は頭を掻いている。
「あんた達、またやらかしたね!」
獣力車が沢山止まっている場所の建物から兎耳をした女性が煙管をふかしながら出て来た。
兎耳……、そして服から肩を出した花魁風の着物だ……。
「すいやせん、あねさん」
「……、まあいいさ。 あんた達がここまでやるのは久しぶりだ。 よっぽど気に入った連中なんだろうさ」
その兎耳の人は獣力車でダウンしている俺達をぐるりと見回し、煙管を一服。
「フ〜……。 あんたなかなか良い男じゃないか。 どうだいアタシと一夜」
俺の近くまで来ると、煙管を吸い口の方に回し、顎に当てて俺の顔を覗き込んだ。
「ダメにゃーー!!」
隣に座っていたレアが自分の方に抱き寄せる。
「…………ふ……ふふ、あっはっはっは! 冗談、冗談さ。 こんなに可愛い子がいるんじゃアタシの出番は無いさね」
すごく笑っているな。
「……気に入ったよ。 ウチの獣力車を使う時はアタシに言っておくれ。 安くしてやるよ。 そうそう、名をまだ名乗っていなかったね。 アタシはこの【荒物組】を仕切っている【兎美】ってもんだ」
「俺はケンジと言います。 こっちはレア、後ろの二人はエイルとルルアです」
「ほう、女三人とは兄さんもなかなか隅に置けないお人だねぇ」
「い、いえ、そう言う関係では無くて━━」
「いいさね。 ま、何かあったら尋ねてきな。 力になるよ」
「え? あ、ありがとうございます」
「ふ……、お前達、今の聞いたね。 今度からこのケンジが来たらアタシに通しな」
「「わかりやした!!」」
ここまで運んで来てくれた獣人達の良い返事。
この獣人達にもお礼を言い、ジルを払う。
そして町中の建物を良く見ると、瓦屋根の家が多い。
エルメリオン王国やヴァルスケン帝国でも見た事のある建築もあるな。 和洋折衷な感じの町だ。
「さて、ガル支部に顔を出しておくか」
まずは資金の調達だ。
場所はさっき聞いたので真っ直ぐ向かう。
さすが獣人の国。 どこを見回しても獣人達だらけ。 他の種族は殆ど見ない。
レア以外の俺達が目立つ。
エイルはまだ体調が回復してないので、俺にしがみついて歩いている。
ルルアは色々な獣人を見て、目を輝かしている。
もふりたい気持ちはわかるぞ。
レアはエイルの反対側で俺に抱きついているので、歩きづらい。
「エイル着いたぞ」
「……は〜い……」
さっきよりは調子良くなったみたいだ。
アームダレスのガル支部は和洋折衷のような建物のようだな。
少しガル支部で休ませてもらうとするか。
入口の扉を開けるとチリンチリンと鈴の音が鳴り、中に入る。
読んで頂きありがとうございます。
次話も頑張ります。




