二十八話 【フォグ村の獣人】
帝都を出て二日。
食糧も底をつきかけ、エイルのお腹も瀕死状態で、やっと【フォグ村】に到着した。
「ほら、着きましたよ」
エイルを背中に乗せているレアはエイルを振り落とす。
「ぐふっ! レア〜、もう少し丁寧におろしてよ〜」
「甘えないで下さい」
小さな猫へと変身したレアはルルアの帽子の上に乗り、フォグ村へ入る。
「皆んなは少し休憩しててくれ。 俺は何か仕事が無いか聞いてくる」
路銀が無いので、少しでも稼がないとな。
このフォグ村は見た感じ畑が多い。
畑の手伝いで少しでもお金が稼げれば良いけど。
村人に話しかけ交渉する。
こちらが【守護盾】だと知ると、皆が揃って畑を荒らす魔生獣を倒して欲しいと言ってくる。
「うちの畑も荒らされてよ」
「うちだってそうさ、大切に育てて来た野菜が」
「こっちはガウピッガーが三頭もいなくなったんだぞ! 多分魔生獣の仕業だ」
食べ物に関係する事ばかりだ。
その魔生獣を退治してくれたら報酬を出すからと、村の村長に頼まれた。
「許せません! そんな魔生獣は直ちに討伐しましょう!」
木の木陰で休んでいた皆んなに、この事を話すと、エイルは立ち上がり気合を入れた。
探索に強いレアと、俺が畑の近くで待ち伏せし、エイルとルルアは離れて魔生獣が逃げた時に逃げ道を塞ぐ役割を任せた。
村人に魔生獣が出現しそうな場所に目星を付けて、夜まで待って待ち伏せする。
「……ご主人様、来ました」
月に雲がかかり薄暗くても、レアの探索によって何かが畑に近づいてくる事がわかる。
「……あれ? このにおい…………。 ご主人様、畑を荒らしていたのは魔生獣では無いかも知れません」
「どう言うことだ?」
「前に嗅いだことのあるにおいがします」
レアが思い出していると、畑に黒い影が入って来た。
野菜に手をつけようとする所で声をかける。
「おい! 何をしている!!」
月にかかっていた雲が晴れ、月の明かりで照らされると、影の人物が見えた。
黒いローブに身を包み、黒く広い鍔が付いている帽子をかぶっている男。
前にドオレスに行く途中、獣人の女の子を探していたやつだ。
「チッ!」
ローブの男は舌打ちをした後、もぎ取った野菜を投げ捨て逃げて行く。
だが、そっちにはエイルとルルアがいる。
「観念してください!」
「してください!」
エイルとルルアがローブの男の逃げ道を塞ぐように立ち塞がり、ローブの男は動きを止めた。
「追いついたぞ!」
俺とレアも追いつき、ローブの男を挟み込む。
だが、その男は戦闘を仕掛けてくる事もなく、逸脱した動きでエイルとルルアの間をすり抜け、家の屋根から屋根へ飛び移り、村の外へ逃げて行ってしまった。
エイルとルルアは動きについていけず、ポカーンとしている。
「あの男、強いですね。 戦っていたらエイルとルルアは危なかったかも知れません」
確かに、パワーアップした俺より早く動いていた。
「今の俺では勝てなさそうだ」
「そうかも知れません」
翌朝、逃してしまった事を伝えるが、犯人が特定出来ただけでも良かったと村長さんにはお礼を言われた。
「魔生獣で無ければ村人でも対処が出来るじゃろう。 これはお礼です」
村長さんからお礼のお金と野菜を分けてもらった。
このお金でも全員分の通行料にはならないが、足しにはなる。
「ほうほう、村から北の【ライガー砦】へ向かい、アームダレスへ向かうと……、ならば……、ノノルはおるかーー?」
村長が集まっている人だかりに声をかける。
「はいはい、呼んだかい?」
一人の女性が顔を出す。
「確か息子さんが【ライガー砦】で働いていたな」
「ええ」
「この人達が【ライガー砦】を抜けてアームダレスに行きたいらしいのじゃが、お金が足りないようなんじゃ。 息子に言ってどうにかならんか?」
「そうだねえ……、どうなるかわからないけど、村の恩人だ。 息子に一筆書いてみるよ」
ノノルさんが息子さん宛てに手紙をしたためてくれた。
「ありがとうございます」
手紙を受け取り、宿の空き部屋を無料で提供してもらい、皆んなでお昼まで睡眠をとり、それから出発する事にした。
「また山登りですか……」
村を出てからまだ一時間程度の時間しか経っていないが、【ライガー砦】が山の上にあると聞いたエイルは既にうなだれている。
「休憩しながら行こう」
「今回は乗せませんからね」
レアに先手を取られ、エイルは更にうなだれた。
「そう言えばエイルさんは錬金技巧術師なんですよね?」
「そうだよ」
「その錬金術で体力回復のポーションとか作れ無いんですか?」
「う〜ん……、作れなくは無いけど、持ってる素材じゃ作れないな」
「そうですか。 この辺にその素材は無いんでしょうか?」
確かに道を少し外れれば植物が沢山生えている。
「探してみないとわからないですね」
「それなら私探します!」
ルルアはエイルに必要な材料を聞いている。
でもそんなポーションが有れば便利かも知れない。
「俺も探してみるよ」
山登りの前に素材採取をエイル以外の皆んなで始める事にした。
エイルが錬金の準備をしていると、ルルアが一つ目の材料を見つけて来た。
「ありました! これで大丈夫ですか?」
「どれどれ〜、うん、大丈夫!」
「じゃあ、次探してきます! 私が戻るまで錬金しないで下さいね〜!」
どうやらルルアはエイルの錬金術が見たいようだ。
俺も探して全部の素材が集まった。
「では、始めますね」
ルルアは目を輝かせて、ワクワクしている。
「まず、このキノコモドキを粉末にします」
「それキノコじゃ無いのか?」
「これはキノコモドキ。 キノコの形をした植物です。 そして、このエナジスト鉱石を蒸留します」
フラスコや試験管をチューブで繋ぎ、火にかける、
「そしてこの錬金釜に………、材料を入れます」
「この釜の中には何が入っているんですか?」
「魔力水だよ。 そして、最後に私が作ったポーションを入れて、魔力棒でかき混ぜれば………」
釜の中がボコボコとしてくると、一瞬光り、ポーションの瓶に入るだけの量の液体が出来た。
「すっごーい! これが錬金術なんですね!!」
ルルアは興奮気味だ。
エイルは「ふふ〜ん」とドヤっと鼻を擦っている。
「これで私が乗せなくて済みますね」
レアの発言に少しがっかりしているエイルだった。
そして道を進み、山道に差し掛かる。
「ここからが本番ですね」
体力回復のポーションがあるので、エイルは強気の発言だ。
山道の上の方に砦が見える。
「半日も有れば着きそうだな」
山登りを始めた頃、天候が崩れ始めていた。
読んで頂きありがとうございます。
次話も頑張ります。




