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二十六話 【パワーアップ】

 最上階で動く鎧を倒し、人造人間の俺にしか反応しないエレベーターでパワーアップが出来ると言う地下の場所まで下りてきた。

 俺がエレベーターから降りると、明かりが灯り、少し長めの通路を照らす。


「この紫紺燭(しこんしょく)の塔にパワーアップ出来る場所があるなんて、なんで知ってるんだ?」

 今更ながら聞いてみた。

「私はご主人様のサポートをする為にいますから……にゃ」

「そ、そうか……。 もしかして他にも塔があったりするのか?」

「ありますにゃ」

「その他の塔も回れば更にパワーアップ出来たり?」

「出来ます! 世界には六つの塔が存在するはずです」

「そんなにあるのか!?」

「ご主人様がいた緋燭の塔を入れて六つになります」

「その全部を回れば俺かなり強くなれるんじゃないか?」

「ご主人様が最強です! にゃ!」

 最強か……、多少武術をかじった俺が最強になれるとは……。

 もしやこれがチート……、良い響きだ。


 通路の奥、扉の前に立つと自動ドアの様に開き中に入ると照明が点く。


 部屋の中は俺が入っていたようなガラスの筒が二つある。


「ご主人様、その筒に入って下さい」

「これに入るのか?」

「片方には私も入ります。 そうすればご主人様はパワーアップ。 私もサポート機能がアップします」

「わかった」

 ここはレアを信じよう。


 筒に入りレアを待っているとレアはなにやら機械をいじっている。

 サポート役だから使い方がわかるのだろうか?

「ではいきますよ」

 筒の扉が閉じ、頭の上から酸素マスクの様な物が降りて来る。

「それを着けて下さい」

 酸素マスクの様な物を着けると、下から何か青紫の様な液体が上がってくる。

 俺がちょっと慌てると、レアは「大丈夫です」 と合図をしてきた。


 青紫色の液体で一杯になると、思わず息を止めてしまう。 我慢できなくなり、息を吐き、吸う事が出来た。

 これまんま酸素マスクだったのか……。


 並んでいる隣の筒にレアが入ったようだ。

 この液体、目に悪そうだから目を開ける気にならないが音でわかった。


 少し体に電気が走った様なピリピリした感じがする。 少しの間その感覚が続き、液体が引いて行く。

 終わったのか?

 全部引いた所でマスクを外し隣を見ると、レアが全裸で液体に浸かっている。

 青紫色の液体なので良く見えないが、レアはちゃっかり服を脱いで畳んである。

 俺は脱いでないからビショビショだ……。

 先に言ってくれよ……。


 レアの方も終わったようで、液体が引いて行く。

 流石に裸を見るわけにもいかないので、後ろを向いてレアが着替えるのを待つ。


「ご主人様なんで後ろ向いてるにゃ?」

「いや、だって、レア裸だろ?」

「私はご主人様のしもべですよ。 ご主人様になら何されても大丈夫です。 裸位いつでもお見せしますけど?」

「い、いや、今度で!」

「照れなくてもいいにゃ」

 レアが腕に抱きついて来る。

 この腕に伝わる感触は……。

「早く服を着ろーー!!」


 レアはブツブツと「仕方ないにゃあ」 と言いながら服を着る。


「それで、俺はパワーアップしたのか?」

 自分の姿を軽く見回すが、特に変わった感じも無い。

「しています。 今のご主人様なら先程のアーティファクトの動く鎧も苦戦はしないでしょう」

 それなら先にパワーアップしたかったな……。


 俺達が戻ろうと部屋から出ると、部屋の照明は消え、部屋から機械が動く音がし始めると通路の照明も消えて行く。

「ご主人様早くエレベーターに乗るにゃ!」

 通路を走ってエレベーターに乗る。

 走った感じ、確かにいつもより早く走れた気がする。


「なんで急に走ったんだ?」

「あのままあそこにいたらエレベーターも止まってしまって、閉じ込められる所だったにゃ」

「最後にそんな仕掛けがあるのかよ!」

「万が一の仕掛けだと思います。 パワーアップしたご主人様が走って丁度良いタイミングになっているんじゃないかと思います……にゃ」

 それじゃパワーアップして無かったらと思うと少しゾッとした。


 エレベーターで上まで戻ると、皆んな準備して待っていてくれた。


「お待たせ」

「パワーアップ出来ましたか?」

「もちろん」

 俺はエイルに力こぶを見せるが、あんまり変わっていない。

「良くわかりませんね」

 見た目変わってないから仕方ない。


 塔を降りながら三人がどうしてここに来たのか理由を聞く。


「またルルアが狙われたのか?」

「そのようですね」

 エイルが侵入者に気がついたようだが、姿は見ていない。

 何者なんだ?


 ドオレスの町に戻って来た俺達は、食事の出来る酒場で話し合う事にした。

「さて、これからどうしましょうか?」

 エイルは肉を頬張りながらこれからの予定を聞いてくる。

 問題は三つ。

「まず一つ、路銀を稼がないといけない。 この帝国には守護盾(ガルガード)の支部が無いから、別の国に行く方が良いかも知れないな」

ほれはほうかも(それはそうかも)

 うん。 エイルは食べてなさい。


「二つ目、装備を充実させないとこれから先、あんなアーティファクトだったり魔導獣だったりが現れたら太刀打ち出来ない」

「そうですね。 私のルルアーハンドも動かなくなっちゃいましたし……」

 ルルアーハンド……。 あのマジックハンドのことかな?


「三つ目、ルルアとマブルさんを安全な場所に連れて行くこと」

「わしらの為にすまんのう」

「いえ、魔導法術機(ガルファー)を直して頂いたお礼ですよ」

「それなら帝国の北にある獣人の国、【アームダレス】はどうでしょうか?」

「獣人の国!」

 エイルの提案になんか少しワクワクする。

 やっぱ俺ってケモミミ属性なのか?


「他に南に行くとか、エルメリオン王国に戻るとかじゃダメなのか?」

「南の砂漠の国は広いんですが、治安があまり良くないって言われています。 エルメリオン王国は守護盾(ガルガード)の本部もありますが、魔導獣の襲撃やシャッテのサラマンダーの件でまだ町の整備なんかに追われてバタバタしていると思いますよ」

「そうか……、なら獣人の国【アームダレス】を目指してみるか」

「あ、でも……」

 ルルアが何か言いたそうだ。


「ルルア、どうしました?」

 レアがルルアに聞いてみる。

「あ、あの、獣人の国【アームダレス】は人間にあまり良い感じでは無いそうなんです……」

 それだとルルアとマブルさんを預けるにはちょっと問題あるか……?

「ぷはー……、でも【アームダレス】は世界最強の部隊を持っていますよ。 もしシャッテとサラマンダーが現れても平気だと思います」

「世界最強の部隊?」

 そんな部隊を持っているのか?

「はい。 陸、海、空を守護する戦竜(ドラグネス)隊と言う部隊があります」

 戦竜(ドラグネス)隊……、前にそんな話しを聞いたような気もするけど、厨二感がくすぐられる!

 ワクワクが止まらないぞ。


「よし、決まりだな。 【アームダレス】を目指そう」

「良いんですか?」

 ルルアには不安がありそうだ。

「こっちには少し違うが、獣人のレアもいる。 そこまで邪険にはされないだろう」

「それなら良いんですが……」

「決まったようじゃの。 ならルルアを頼むぞい」

「え!? お爺ちゃんは来ないの!?」

「わしはちょっと気になる事があっての。 別行動させてもらうよ」

「そんな! お爺ちゃんも一緒じゃなきゃ危ないよ!」

「なに、こんな老いぼれ誰も気にせんじゃろ」

「俺達と別れて何処に行くんですか?」

「わしは南にある砂漠の国【ヘイトルーガ】へ向かうつもりじゃよ」

「さっきエイルが治安が良くないって言っていた国ですか!?」

「そうじゃ。 なに、心配いらんて。 ちょっとしたツテがわしにはあるからの」

「それなら私もお爺ちゃんと一緒に行く」

「いや、わしと一緒で襲われたら守れんわい」

「なら俺達も一緒に行きましょうか?」

「わしのツテはわし一人の方が都合が良くての。 【アームダレス】で良い場所が出来たら、その時はわしもそっちに向かうとしよう」

「そうですか……」

 マブルさんは何を調べようとしているのか?


「では話しも纏まったので、今日は宿を取って明日向かいましょう」

 宿でルルアはマブルさんと一緒の部屋に。

 一時とは言え別れる事になるので、マブルさんと寝る事になった。

 俺はエイルとレアと同じ部屋。

 レアとエイルは一緒のベッド。 俺は椅子を並べて寝る。

 一人部屋が良かったが、そんなお金は無い。

 ここの宿代はエイルが持ってくれたが、エイルももう路銀が尽きると言っていた。

 【アームダレス】に着いたら稼ぐからね。


 翌朝、隣の部屋からドアの開く音がする。

 目が覚めるとマブルさんが出発するようだ。

 俺はそっと部屋を出ると、マブルさんに挨拶をする。

「マブルさん、出発ですか?」

「うむ、ケンジさんや、孫をよろしく頼みましたぞ」

「もちろんです」

「ではな」

「お気をつけて」

 マブルさんは旅立った。


 三人が起きたら俺達も【アームダレス】へ向かおう。


 読んで頂きありがとうございます。

 次話も頑張ります。

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