百二話 【不思議な島】
宴会は続いている。
エイルはもう出来上がっている様子で、色々な人にからんでいる。
しかし……、この飲んでいるお酒の入ってる箱や樽……、ヴァルスケン帝国の印が入っているんだけど……。
「飲んでるかい?」
赤い髪の女性がジョッキを持ったまま、肩に手を回してきた。
「あの、このお酒って……」
「ああ、これはヴァルスケンに持ち込まれる予定だった酒さ。 その商船からちょっと拝借してね」
「拝借って……、あの、ここの人達はどう言った方達なんですか?」
「ん? あたし達の事かい? なんだ、あたしに興味あんのかい?」
「い、いえ、そう言う訳では無くて……」
肩に手を回したまま、グイグイと押し付けてくる。
何がとは言わないが……。
「ふふ……、まあいいや、あたし達は海賊ってやつさ」
「やっぱり!」
「なんだ、知ってたのかい?」
「いえ、あのボルディさんを見てそう思っただけです」
「ああ! 確かに、何処から見ても海賊だ!」
女性は高らかに笑っている。
「そうそう、あんたケンジってんだろ? あたしはルディ、これでもボルディの妻をやってるのさ。 それであそこでケンジの仲間に相手をしてもらってるのはあたしの娘でキャンディさ。 可愛いだろ?」
「そうですね」
キャンディちゃんは酔っ払ってレアにからんでいるエイルと、それを払いのけているレアを見て楽しんでいる。
「可愛いからって嫁にはあげないからな。 キャンディはあたしのだから! キャンディーー!!」
ルディさんはキャンディちゃんの元へ走って行き、持ち上げて頬をスリスリしながら抱きしめている。
キャンディちゃんも嫌そうな顔はしていない。
海賊だからと言って、悪い人では無いようだ……。
いや、海賊行為は悪い事だな。
宴会はまだまだ続きそうなので、ダルマッチさんを探して船の様子でも聞こうと探すがダルマッチさんがいない。
酔っ払っている青い制服の人に聞くと、船のドックにいるらしいので、向かって見ることにした。
あまりうろつき回るなと言われているが、ダルマッチさんを探すだけだし、良いだろう。
しかしこの施設……、見れば見るほど不思議な感じだ。
とても海賊が作り上げたとは思えない。
かと言って、今までの様な古代の遺物って感じでも無い。 もっと新しい近代的な感じがする。
ダルマッチさんを探して通路を進む。
結構あちこちに青い制服を着た人がうろついているな。
なんか見つかったら怒られそうなので、見つからない様にコソコソ進む。
結構入り組んでる……。
「ドックは何処だろう……」
ぼそっと口から出てしまった。
「そこを右ですにゃ」
「うわっ!」
「ご主人様、声が大きいですにゃ!」
「ご、ごめん、なんでレアがここに?」
「ご主人様が中に入るのを見たのでついて来ましたにゃ」
俺にも気配を気づかせないなんてやるなレア。
「それと……、その子はなんでいるの?」
レアの後ろに隠れているのは金髪の髪の毛を三つ編みにした女の子、キャンディだ。
「私がご主人様の後を着いて行ってたら、この子が私の後を着いて来たにゃ」
「え〜と……、キャンディちゃんだよね? どうして着いて来たの?」
「……ママが離れるなって言った……」
「そ、そうか……」
よくわからん……。
ま、この子が見つかっても問題は無いだろう。
「……船のドックはあっち……」
キャンディちゃんは通路の曲がり角に来ると、ドックまでの道を教えてくれる。
入り組んだ通路をキャンディちゃんの案内でぐるぐると進みドック前に辿り着いた。
ドックの入り口には二人の青い制服の男性が立っている。
見張りか?
すると、キャンディちゃんがスタスタと歩いて行き、二人の男性と話しをすると、こちらに軽く目配せをして二人と別の通路に行ってしまった。
見張りをどかしてくれたのか。 ありがとう。
ドックに入ると、シュシュリラが綺麗になって、更によくわからない部品まで付いている。
そしてダルマッチさんが設計図を持って指示を出していた。
やはりただの海賊には不釣り合いな程の場所だ。
設備も整いすぎている。
ダルマッチさんに色々聞いてみた方が良さそうだ。
ダルマッチさんの場所に行こうとすると、ボルディさん、ルディさん、その後ろにキャンディちゃんと、青い制服の人達がゾロゾロと出て来て俺の行手を塞ぐ。
「客人、どうだ? 驚いただろう! これが俺達の隠れ家の秘密だ!」
「ちゃんとケンジを連れてこれるなんてキャンディは天才ね〜」
ルディさんはキャンディちゃんに頬擦りをしている。
「なんで、お二人がここに?」
「それは勿論キャンディに案内させたからよ。 あたし達がここまで来る時間をちゃんと稼げるなんてキャンディはえらい! もう! チュー!」
「やめてよ、ママ」
チューは流石に恥ずかしがっていますよ。
「さて、俺達の秘密を知っちまったんだ。 どうなるかわかってるよな?」
「……どうなるんですか?」
「ふふ、そんなの決まってらあ! おい! お前達!」
「「はい! 準備は出来てます!」」
運ばれて来たのは一つの樽。
「さて、力比べといきますかい。 俺に勝ったらお咎め無しだ。 負けたら俺達の仲間にでもなってもらうぜ」
ボルディさんは樽に丸太の様な腕を置いて酒の入ったジョッキを持って俺を待っている。
「ご主人様、頑張って下さい!」
なんか変な事になったな……。
だけどこの勝負には負けられない。
いざ、勝負!
お互い腕を交差させると俺もジョッキを待たされた。
「ルールは簡単だ。 自分の酒をどれだけ飲み干したかで勝負が決まる。 つまり、相手に飲ませない様に腕を引いたり倒したりすれば良い。 飲み干せば決着だが、この砂時計が落ち切るまでにどのくらい飲んだかでも決着が決まる。 ようは自分の酒を飲み干しゃ良いんだ」
「成程、わかりました」
ボルディさんは既にだいぶ飲んでいるはず。
俺は酔わないから、俺に部があるはずだ。
「それじゃいくよ。 二人共いいね」
ルディさんが手を振り下ろし勝負が始まった。
読んで頂きありがとうございます。
次話もがんばりますよ。




