表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

56/109

53 離したくないあなたは……僕の暗殺者②

◇◇◇


 ベッドから起き上がると、アンドレから買ってもらった服が目についた。


 もう畑に行くわけでもないし、せっかくだから着替えるかと思い立ち、特に気に入っている一着に袖を通し寄宿舎へ向かう。


 この白いワンピースは、少しだけ大人っぽい印象を与えるデザインだ。胸の辺りから袖にかけ、透ける素材でできているのが珍しくて一目ぼれした。


 お高い品だったため、ちょっと気が引けたのだが、アンドレが値段も気にせず気前よく買ってくれたものだ。


 ふんわりと広がるスカートが可愛いくて、無意味にスカートを摘まんで広げてみた。


 乙女なんだから、今までこんな格好をしていた気もするが、ずっと憧れていた感覚がある。


 着替えを済ませ、気持ちを新たに屋上の扉を開けると、ふわっと温かい風が吹く。

「あら、ジュディちゃん。起きて大丈夫なのかい?」


 扉の近くにいたエレーナがすぐにわたしに気づき、顔を向ける。

 そんな彼女の少し後方にいるアンドレが、目をパチクリさせている。


「ご心配をかけました。すっかり元気ですから」

「そんなことを言って、無理してないのかい?」


「ええ。本当にもうなんともありません。お仕事を途中で投げ出してごめんなさい」

 しゅんと小さくなって伝えた。


「いいの、いいの。そんなことは気にしないで。ここは片付いたし」


「あっ……洗濯が全部終わってる……」


「アンドレさんにシーツを全部乾かしてもらったところだからね。私は上階から敷いてくるから」


 そうなれば、わたしは下の階から各部屋にシーツを敷きに行けばいいのだろう。

 仕事はそれで十分に理解した。

 にこっと笑いかけてくるエレーナは、洗い終わったばかりのシーツを半分ほどカゴに詰めて抱え、パタパタと速足で寄宿舎の中へと入っていった。


 そうすればアンドレとこの場に二人きり。わたしの傍に歩み寄る彼が、不安気な声で名前を呼んだ。


「ジュディ……」

「部屋まで運んでくれたのはアンドレでしょう。ありがとう」


「もう起きて大丈夫なんですか? ここに来るとは思ってもいなかったので驚きました」


「へへっ、すっかり目が覚めたもの」


「屋上で何があったんですか?」

 真っすぐ見つめてくるアンドレが、怖いくらい真面目な口調で訊ねてきた。


「あ~ぁ、心配かけてごめんなさい。アンドレに手伝ってもらわなくても、自分でシーツを洗ってみたくて。魔法を発動してみたんだけど、風魔法に失敗しちゃったのよ。ふわっと自分の体が浮いて驚いたわ」


「本当にそんなことですか? 倒れているジュディの雰囲気からは、そうは見えなかったけど」


「本当よ。その前は水魔法でちょっと失敗したのよ。思いのほかたくさん水が出てきて、びっくりしちゃったわよ」


「なんだ……そうですか。ほどほどにしてくださいよ。僕がどれだけ心配したと思っているんですか」


「またまた、ふふふ。そんな顔をして大袈裟なんだから」


「もう、無理なことはしないでくださいね」

 安堵のため息を零すアンドレだが、張り詰めた表情は一向に緩む気配がない。


 きっと彼が心配してくれたのは真実だろう。雇い入れた新人が倒れていたのだから。


 彼に嘘を吐いたことも、余計な心配をかけたことも申し訳ない。

 けれど、これ以上不安にさせまいと、にっこりと笑いかける。


「うん。次からはもっと気をつけるわ。運んでくれたお礼は、いつか返すわね」

「当然のことをしただけですから、気にする必要はありませんよ」


 お礼を返すと言ってみたものの、確かに返せる見込みはない。にこっと笑って誤魔化した。


「ふふっ。さぁてと、わたしも部屋を回ってくるわね」


「待ってください。ジュディはその格好で兵士たちの部屋に入る気ですか⁉」


「うん? そうだけど」


「早番や非番の兵士に遭遇したらどうするつもりですか⁉ 僕も一緒に行きますよ」


「どうしてよ、一人で大丈夫だから問題ないわ」


「その服は……。肌が透けているでしょう。兵士たちが動揺するから駄目です」

「何を言ってんのよ。誰も動揺なんてしないわよ」


「僕は動揺してますけど。どちらにしても、二人の方が早いでしょう」


 穏やかな笑顔を見せるアンドレに「一人で大丈夫だ」と何度も断ったのだが、しつこい位譲らない。

 結局、二人で寄宿舎の中を、一部屋ずつ回ることになった。

お読みいただきありがとうございます!

次話もジュディ!

引き続きよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ