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3 陰謀③

お読みいただきありがとうございます꒰* ॢꈍ◡ꈍ ॢ꒱.*˚‧

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「フィリ」……。

 婚約者のわたしでさえ、照れくさくて呼べていないのに……この二人は普通に使っているのか……。


 周囲の目も気にせずイチャイチャする二人を見て、全身にざわっと鳥肌が立つ。


「そうですか。フィリベール様とリナは……以前から関係があったのね……」


「ああ、今まで気づかなかったのか?」

「……どうして」


「王太子の婚約者が果たすべき式典を、お前が何年も放棄し続け、私の横にいたのは常にリナだったからな。王太子としての重責に悩む私の手を取ってくれたのは、いつもリナだった」


「ですから、わたしは──」


「今さら何を言おうがもう遅い。私は彼女と真実の愛に目覚めたんだ。お前が黒魔術を使っていると知り、鬱積した気持ちを晴らしてくれたのは、この可愛いリナだ」


「フィリったら。そんなはっきり言ったから、お姉様が驚いた顔をしているわよ」


「いいんだよリナ。私たちは真実の愛で深く結びついているからね。もう我慢せずに、あの女に教えるときがきたんだよ。何度も愛し合ったんだ。既にリナが私の子どもを宿していても、おかしくないんだから」


 フィリベールが、リナの肩を抱く手とは反対の腕を、リナのお腹の辺りへ伸ばし、慈しむようになでている。


「それは……世間では不貞というものです。誇らし気に語るのは、おかしいですわ」


「何が不貞だ! 私はリナを側室として迎えるつもりだったが、婚約者のお前が禁術に手を出しているとなれば、話は変わる。お前は罪人だ」


「これで、フィリはリナだけの旦那様になるのね♡」

「ああ、そうだよ」

 二人の世界を作り、うっとりと見つめ合っている。

 

「信じられない……。リナ……。あなた、初めからわたしから立場を奪うつもりだったんでしょう。わたしが犯罪者だと言いがかりをつけて」


「お姉様ってば酷いわ──……。リナを疑うなんて……」


 リナが泣きそうな声を出すものだから、フィリベールがますます激昂する。


「おい! ジュディット、お前よくもリナを泣かせて」

 あんな芝居じみた声に騙されて、愚かすぎるだろう。この男、何も見えていないな。

 ──って呑気にしている場合ではない。このまま、ここにいては危ない。投獄されてしまう。


 この四人には、何を言っても無駄だ。誰か味方はいないか……。


 そうだシモンがいる。

 王宮騎士団の第二部隊長であれば、わたしが黒魔術を使っていないことは、分かってくれる。


 今の今まで一緒に森へ入り、瘴気だまりを浄化してきたのだから。


 異常な瘴気だまりに、彼も違和感を覚えていたんだもの。


 そう思うわたしは、廊下へと続く扉までの距離を確認する。

 逃げるために催眠魔法でも使いたいが、魔法の使用を禁じられている王宮で彼らに何かすれば、それこそ言い逃れができなくなる。


 ──全力で走ればなんとかなりそうだ。


「お前はこの国の重要危険人物だ。お前のその力を封印させてもらう」


「他人の魔力は干渉できないことくらいご存じでしょう。そんなこと……できる訳がないわ」


「ふん。王族の血には、闇属性という特別な力があるんだ。魔力を封じる事もできれば、記憶も封じる事もできる」


「それなら、陛下が気づいて解呪なさるわ」


「くくっ、愚かだな。所詮禁術に頼るしか能がないからその程度の知識なのか? 魔法契約は同じ血の人間しか解呪できないだろう」


「──何ですって」

 一時的な魔法じゃなくて、魔法契約。

 それはまずい。魔法契約なんて結ばれたら、一生消えない。


 逃げなきゃ──。

 と思って立ち上がった時だ。ぐぅわぁんっと頭の中で渦を巻き、足に力が入らなくなった。

 そのまま倒れるわたしの目に留まる白いティーカップ。


 そうか……。

 フィリベールが淹れたお茶に……何か仕込まれていたのか……。


 ……あぁ、オレンジの皮は味を誤魔化すために入っていたのね。


 なんだ……わたしを思ってくれたわけじゃ……なかった。

 馬鹿だな。騙されて。もう、恋なんて懲り懲りだわ。


 もし……このまま死ぬなら……。

 あなたの婚約者のまま、死んでたまるか……。そんな汚名は、ご免だ……。


 ローテーブルの上に乗る白い紙へ、必死に手を伸ばす──。

 紙の角に僅かに触れた瞬間、一気に自分の魔力を通す。

 その数秒後、紙の中央に魔法陣が光ったのをガラスの天板越し……床から見上げた。


 お望みどおり、婚約の解消はしてあげたわ……。あなたと繋がっているなんてうんざりだもの。



 既に限界を超えていたわたしは、にやにやとわたしを見下ろすリナとフィリベールの目の前で、意識を手放してしまう。


 そして次に目が覚めたときは、全く知らない男の元だった。

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