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おっさん、説明を受ける

 その道中にて、この世界の説明を受ける。


「まずは異世界人を前提として話そう。というより、何か聞きたいことがあれば質問してくれたら良い」


「ありがとうございます。そうですね……この世界には魔法があり、魔物と言った生き物いるとか。その魔物とはなんですか? 何故、倒したら石になるのですか?」


「まずは魔法というものはある。魔力を使い、超常現象を起こす技が魔法だ。魔物は、普通の生き物とは違う生物だ。一つは我々の食料になる魔獣と呼ばれる生物で、これらを食べることで我々は生きている。もう一つが先程のようなオーガを魔物と言い、倒すと魔石というモノになる」


「なるほど……その違いはなんですか?」


「うむ、難しい質問だな。基本的に二足歩行で歩くのは魔物だと思って良い。そして、魔物とは邪神が使わした生き物だと言われている。瘴気溜まりが発生し、そこから現れる。普通の生き物とは、そもそも違う生物だ」


「なるほど……まあ、とりあえずは良いです」


 邪神とか、よくわからんし。

 とりあえず、魔物はふつうの生き物ではなく、倒すと魔石という物になると。


「それで良いと思う。私自身も、詳しくはわからない。とりあえず、魔石は魔法を込めたりできるので生活の役に立っている。さて、他に何かあるかな?」


「そうですね……できれば静かに暮らしたいのですが、それは可能でしょうか?」


どうやら、ドラゴン殺しとは珍しいらしい。

絵本の中では英雄になったり、国を作ったりしたとか。

だが、俺はそんなものに興味はない。


「なに? ドラゴンを倒したのだぞ? 英雄や、貴族にだってなれるぞ? 皆から、一目置かれる存在になる」


「いえ、そういうのには興味ないので」


 なにせ、こちとら庶民である。

 しかも実力で倒した訳でもないし、威張れるようなことじゃない。

 そもそも、力は誇示するものではない。


「……ははっ! 珍しい殿方だっ!」


「そうですかね?」


「ああ、普通なら地位や名誉を欲するものだ。それに、強き者は傲慢になりやすい」


「俺としては、のんびり過ごせれば良いかなと。無論、降りかかる火の粉は払いますが」


 店をやっていた時も、地上げ屋やチンピラが来たこともあったが……。

 それらは、《《話し合いをして》》解決してきた。


「それは当然だろう。しかし、気に入った」


「ありがとうございます」


「それで、他にはあるかな?」


「我々は何処に向かっているのでしょうか?あと、俺の立場というか……」


「向かってるのは、迷宮都市レガリアだ。そして、お主の立場か……命の恩人であるし要望は叶えたい……ふむ、郊外からやってきた田舎者ということにしよう。そうすれば、知らないことが多くても問題ない。それに、目立ちたくないとのことだったしな」


「そうしてくれると助かります。まあ、望んで目立つことはないかなと」


「本当に変わった殿方だな。そういえば、何かしたいことはあるか?」


「したいこと……とりあえず、料理がしたいですね」


 したいことを考えた時、自然とその言葉が出てきた。

 こんな世界でも、俺はやりたいことが変わらないらしい。

 そんなことが、少し誇らしく思う。


「ほう? 男性なのに料理を作るのか? ……いや、すまん、今のは忘れてくれ」


「えっと……よくわからないですが、男性は料理を作らないのですか?」


「ああ、基本的には作らない。必要に駆られたり、野営とかになれば話は別だが。料理をしている男性は、馬鹿にされたりすることもあるくらいだ。そんなのは、女がやることだとか言ってな……」


「なるほど……俺は料理が好きなことに誇りを持っています。なので、誰になんと言われようと関係ありません」


「………」


 ん? なんだ? なにやら、目をまん丸くして固まってしまったぞ?

 俺は、何か変なことを言っただろうか?


「平気ですか?」


「……ひゃい!」


 なんか、可愛らしい声が出た!

 しかも、心なしか頬が赤くなってる気がする。


「ど、どうしました?」


「な、なんでもない! ほら! ささっと行くぞ!」


 クレアさんはそう言い、馬車のスピードを上げる。


 うーん、相変わらず女心はわからん。




 ◇



 私は……な、何を動揺している!?


 ……いや、理由はわかっている。


 不覚にも、ソーマ殿の言葉に胸を打たれてしまったのだ。


 誰になんと言われようと、自分の好きなことに誇りを持つという言葉に。


 今の自分にとって、それはとても胸に響く。


 私は皆に反対される中、強くなるために稽古をし続けてきた。


 しかし、この世界は戦う女性に厳しい。


 斥候や魔法使いはともかく、前衛の戦士は求められていない。


 そういうのは、男の仕事だからと。


 そもそも、女性は家に入り夫を支えるのが一番だと言われている。


 そんな中で、女で強くなろうとしている私は異端扱いだった。


 それでも反対を押し切り、今日まで研鑽を積んできたが……最近は限界を感じていた。


 中々強くならないし、年齢も上がってきて……その夢を諦めそうになっている。


 いや、違う……いつまでやってるんだと馬鹿にされるのが辛いのかもしれない。


 だからこそ、彼の言葉に動揺してしまったのかな。


 好きなことに誇りを……そして、誰に何を言われようと関係ないか。


 ソーマ殿か……ふふ、不思議な殿方と出会ったものだ。


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