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失われた文字のための攻略法


 センリはミコさんの手を引き、竜忘れの洞窟の最奥へ走った。ミコさんの手は暖かくて少し汗ばんでいる。部屋についた頃には二人ともが大きく肩で息をしていた。

 

「確か四番目の石像……」

 

 手を繋いだまま、センリはもう片方の手でランタンをかざし、歩き出す。

 この大部屋は入り口から見て左右に翼のない竜の石像があり、その石像が奥の祭壇まで四体ずつ等間隔に向き合って並んでいるという構造だ。

 つまり、右側二列目の石像、それがこの洞窟の秘密を握る鍵であり、センリが感じた違和感の正体だった。

 

「センリくん、ここでするの……?」

 

「見てください、ミコさん」

 

 興奮するミコを無視してセンリは石像を照らした。

 

「この像だけ、後ろに下がっていると思いませんか?……向こうの像と見比べてください」センリは繋いでいた手を放し、手前にある右側一列目と比べられるようにランタンを持って移動した。奥にある三列目も同じようにして見せる。

 

「あ……ほんとだ」

 

「僅かですが確実な差です。照らすのが面倒なので反対側は省略しますが、あちら側は正確に均等な距離であるはずです。この像だけ、位置が違うんですよ」

 

 センリはこの部屋から立ち去ろうとしていた時に生じた違和感を思い出していた。

 どこがおかしいのかわからない騙し絵のようなあの感覚。

 

「僕たちがこれに気が付かなかったのは、この部屋があまりにも広く、暗かったからです。このランタンの灯りでは、入り口からは二体の像しか見えないほどでした。同時に視認することができなければ——微妙な位置のズレに気づくことは難しい」

 

 そう、だから——僕は帰り道で気がついたのだ。部屋の探索を終え、全ての像の位置を確認した後だったからこそ、周りを見回した際に位置のズレを感じることができた——。

 

 

「もう一度、この像を調べてみましょう」

 

 記憶と灯りを頼りに、他の像との差異を探す。結果はすぐに出た。

 石像を載せている石の背面に、一行ほどの文字のようなものが刻み込まれている。が……。

 

「読めませんね。全く知らない文字だ」

 

「わたしも見たことない……」

 

「ミコさん……この文字を【鑑定】してみてもらえませんか?」

 

「えっ?文字を——【鑑定】? 考えたこともなかった……」

 

「はい。ミコさんのスキルは——モノの本質を見通す能力。これが文字や文章という『モノ』なら、文法や発音がわからなくても——それが意味するイメージを掴めるかもしれません」

 

「やってみるねっ!」

 

 首を突き出し、むむむ、とやるミコさん。

 

「光……祭壇……捧げ物……かな。これってさ、もしかして……」

 

「ええ……やってみる価値は、ありそうですね」

 

 僕たちは息を飲み、再びあの何もない祭壇へと向かって二人で歩を進めた——。

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