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不可思議な像


「ついたー!」

 

 目的の大部屋、そこに到着である。

 部屋の入口からは竜をモチーフにした石像のオブジェが二つ見える。センリが手に持つランタンで照らされるそれは、石の上に乗っておりそれなりの大きさである。センリ三人分くらいだ。

 しかしその石像が初見で竜に見えるか、というと難しいだろう。なぜなら、翼に当たる部分がないからだ。牛のように見える人もいるだろう。


「おっきい兎さんだ……」ミコさんが感嘆して言った。

 

 ……感じ方は人それぞれである。

 ちなみに、今目視できるのは二体だが、この部屋には全部で八体の石像がある。

 

「さて――」

 

 調査開始である。といっても僕は石像の構造自体は既にある程度知っている。今日は彼女の眼——【鑑定眼EX】で視てもらうために来たのだ。

 

「ミコさん、どうですか。この石像」


「どうって……まあわたしの趣味とはちょっと違うかなぁ……」


「いや、そうじゃなくて【鑑定眼EX】で本質を視てください」


「あっ、そうだった!」

 

 忘れてたのかよ、と思わずツッコミを入れたくなったが、すんでのところで自分を食い止めることができた。

 ……正直言って、僕もここに着くまで忘れてたんだよな、ミコさんの能力。道中関係ない話ばっかりしてたし。

 うーん……と考えこむように竜の顔とにらめっこをするミコさん。

 

「生……いや死……? いやいややっぱり生……?」

 

「……生命的なイメージ、ということでしょうか?」

 

「生命……または、人生の始まりと終わり……運命の歯車の鍵……。ごめん、これ以上はわからない……」

 

「充分、伝わりましたよ。後は、僕が考えます」

 

 ——運命の歯車の鍵。生と死と人生。それがこの石像の『本質』。

 特に気になるのは、運命の歯車の鍵という言葉だ。恐らくこれは何かの暗喩だと考えられる。彼女の捉えたイメージの形——それが言葉となって出たもの。センリはしばらく考え込んだが、不安そうな顔で覗き込んでくるミコさんを放っておけなくなって話しかけることにした。

 

「大体ですが——わかりました。この石像が表すもの——それが何なのか……」


「ほんと!? センリくんすごい!」


「ミコさんのお陰です」


「はぁ~……良かった……。役に立てなかったらどうしようって、心配で……うう、良かったあ」

 

「そもそも、僕が理解できるかとは関係なく目的は達成されているんです。ミコさんが感じたイメージを知りたいというのが今日の目的ですから。期待以上の成果といっていいでしょう」

 

「そっか、そういう考え方も……。それで、それで? これは……わたしのイメージは、何を表してるの?」

 

「生と死ですよ」

 

「——それって……わたしが言ったことじゃないですかぁ!」

 

「そうです。つまり、ミコさんが感じたイメージがすべてなんですよ。僕はそう理解しました」

 

「あ、頭の中が混乱してきた」

 

 はぐらかすようなことを言ってしまったが、嘘や冗談ではない。オブジェとは、イメージの表現なのである。だからその『本質』のイメージさえ理解できれば、オブジェを理解したことになるという訳だ。

 ただ、センリは意図的に話を逸らした。それは、自分の仮説に確証がなかったからである。夢物語に近い予想……。

 ……なにか証拠でもなければね……。と、センリは探偵のようなことを思うのだった。

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