待ち合わせはショップカルテラで
翌日。
待ち合わせた時間より二十分早く【ショップ カルテラ】に着いたセンリは、昨日買い忘れたランタンを購入した。店員はフォルト族の彼女ではなく違う女性だった。多分、あれが店長だろうとセンリは思った。
店から出ると、ちょうどそこに彼女はいた。
白いワンピースを着ていて、昨日とはかなり印象が違う。大人びているが、可憐な少女のような美しさだった。しっぽが視認できるのだが、あれはどんな構造になっているのだろうか。なんだか深く考えてはいけないことのような気がして、センリは考えるのをやめた。
「あっ、センリくん!」
「おはようございます。お姉さん」
「ミコ・イヌイル、ミコって呼んでくれたら嬉しいなっ」
なんだか元気だ。まあよく考えてみれば、昨日は仕事の最中だったのだ。こっちが普段の顔なのかもしれない。
「はい、ミコさん」
「あは、敬語もいらないよっ。それにしても……来るの早いんだねー。わたしが先かと思ったのにー」
「ああ、そうですね。実は、もっと早く来ておけば良かったと思っているくらいですよ。人を待たせるのは好きじゃないんです。僕が待つ分には構わないけど」
「しっかりしてる……。わたしもちゃんと時間守らないとね……。あれ、これって二人が待たせないようにしようとしたら、予定時間がどんどん巻き戻っちゃうね……」
そう言ってミコさんは笑った。
それから少し話してから、ミコさんと一緒にミノウ平原へと歩き始めた。
センリはリュックサックから地図を取り出して目的地までのルートを確認する。「カルテラ」からだと南東に三キロほどだ。徒歩ではなかなかの距離である。
「ちょっと遠い、ですよね……。女の人にこんなことを付き合わせてしまって、すみません」
「大丈夫ですよ! あ、知ってます? フォルト族は人間に比べて三倍の体力があるらしいですよ! この程度よゆーです、よゆー」
一応、センリはそのことを知っていた。ただ、フォルト族の知り合いがいないので、すべてのフォルト族がそうであるとは思っていなかった。なにはともあれ、彼女には感謝の気持ちしかない。
「でも、あんな場所……っていったらあれだけど、ミノウ平原の洞窟に、何かあるの?」
ミノウ平原のモンスターはおとなしく、弱い。初心者も安心のフィールドである。センリたちが目指している洞窟は同様に危険度が低く、そのため有用なアイテムはあまり手に入らない。大したメリットがないので立ち寄ることもない、影の薄いダンジョンというのが一般的な冒険者たちの認識である。
だが、センリはそう考えてはいなかった。
「あそこ……不思議な場所がありませんか? 祭壇のような……行き止まりの大部屋……」
「ああ、そういえば……。あそこは一度しか行ったことはないけど、記憶にある……。宝箱があるのかと思って、探したけどなかったんだ……」
「そこです。僕はあの場所について調べてるんです」
「へえー、たしかに気になる! なんだか神秘的な場所だよね」
「ミコさんも行ったことあるんですね」
「うん。お店の手伝いでね。商品になるアイテムを集めてたときに行ったの。あそこだったらわたしでも探索できるから」
「頑張り屋さんですね」
「えっ!? そ、そうかな……へへ」
「冗談ですよ」
「なにそれー! わたしの照れを返してよ!」
「物質ではないので……」
などと適当な会話をしていると、目的地はもうすぐそこであった。案外三キロメートルって近いものだ、とセンリは思った。
ここまでモンスターに遭遇しなかったのは幸運だった。もちろん、この周辺のモンスターであれば遅れをとることはまずないが、できるだけセンリは戦いたくなかった。
――そう、僕は戦いたくない。
この世界には平和なエリアがあって、そこから出なければモンスターに襲われて殺されることはまずない。ミノウ平原も平和なエリアの一部だ。だからセンリはそうした場所でひっそりと暮らすのである。
戦わず。
血を流さず。
失わず。
でも……それって……。
投稿してみると序盤の分量が思ったより少なく、まとめて投稿すればよかったと後悔中……。