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転生した弓使い少年の村人冒険ライフ! ~従姉妹の金髪お姉さんとモフモフ狼もいる楽しい日々です♪~  作者: 月ノ宮マクラ


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009・魔物の子

第9話になります。

よろしくお願いします。

 翌日も僕と姉さんは森へと入った。


 いつも通りに『薬草摘み』をしつつ、昨日、狼の子供がいた場所へと向かう。


 …………。


 その茂みには、何もいなかった。


 灰色の毛玉みたいな子狼の姿はなく、置いておいた3つの干し肉も消えていた。


(そっか……)


 僕は、大きく息を吐いた。


 地面に荒れた様子もないので、他の肉食獣に襲われたということもなさそうだった。


 つまり、自分の足で移動したということ。


 それだけ元気になったということだ。


 姉さんも笑って、


「よかったね、アナリス」

「うん」


 僕も素直に頷いた。


 その日は、心を軽くしながら『薬草摘み』に精を出した。




 あれから、2週間が経った。


 今日はいつもと違って、湖に近い採取ルートで薬草を集めていた。


 木々の奥に、湖が見えている。


 太陽の光を反射して、水面がキラキラと光っていた。


「……わぁ?」


 その美しさに、姉さんは翡翠色の瞳を細めている。


 ……えっと、


「今日は、あの湖の近くで休憩しよっか?」

「う、うん」


 僕の提案に、姉さんは嬉しそうに頷いた。




 湖の砂浜にあった倒木に、僕と姉さんは腰を下ろした。


 今日のおやつは、サンドイッチ。


 森の木苺や果物をジャムにして、パンで挟んである。……実は、僕の好物なんだ。


「……ん、美味しい♪」


 それを頬張って、姉さんは幸せそうだ。


 湖を渡ってきた涼やかな風に、長い金髪が柔らかくたなびいている。


 そんな姉さんに、つい僕も笑ってしまった。


 ハムッ モグモグ


 うん、美味しいね。


 甘いサンドイッチと穏やかな時間に、僕も青い目を細めてしまった。


 そんな時だった。


 ドサッ


 後ろの方から物音がした。


(ん?)


 姉さんも聞こえたのか、一緒に振り返る。


 そこに、灰色の毛玉がいた。


 え?


 先日、助けたあの狼の子供が、けれど、生命力に溢れた姿でそこに立っていた。


 僕と姉さんは、目を丸くする。


 そんな僕らを、子狼の金色の瞳がジッと見つめた。


 そして、


『ワフォン!』


 1つ、元気な吠え声を響かせた。



 ◇◇◇◇◇◇◇



「……もしかして、この間の子?」


 姉さんが聞いてきた。


 僕は「うん、多分」と頷いた。


 手当をした時の傷の位置に、まだ傷跡が残っている。特に、おでこの三日月のような傷跡は印象的だった。


 だから、間違いないと思う。


(……元気になったんだね?)


 よかった。


 僕はホッとして、笑ってしまった。


 でも、この短い間に、これほど回復するなんて……野生の動物って凄いなぁ。


 パタパタ


 その子狼は、大きな灰色の尻尾を左右に揺らしている。


 その足元には、


(ん?)


 なぜか、角の生えた黒いウサギの死体があった。


 …………。


 姉さんも気づいて、思わず「!?」と槍を構えようとする。


 僕は、そんな姉さんを手で制した。


 さっきの物音は、これを落とした音かな?


 パタパタ


 そんな僕らを、子狼は尻尾を揺らしながら見つめている。


 もしかして、


「僕らにくれるの?」


『ワフッ』


 子狼は返事をするように吠えた。


(そっか)


 要するに、恩返しなのかもしれない。


 でも、自分より大きな体格の魔物を狩るなんて、この子、凄くない……?


 感心しつつ、


「ありがとう」


 僕は手を伸ばして、その子の頭を撫でた。


 モフモフ


 灰色の柔らかな毛が気持ちいい。


『クゥ~ン』


 その子の金色の目も、心地良さそうに細まっていた。




 それからしばらく、僕と姉さんは、その灰色の狼の子供と一緒にいた。


「可愛い……」


 モフモフ モフモフ


 その感触が気に入ったのか、姉さんは、子狼の全身を撫で回していた。


 その子もされるがままだ。


 尻尾を揺らしているので、嫌じゃないみたい。


 そのあとは、おやつのサンドイッチをあげたりして、その子もガツガツと食べていた。


 うん、食欲旺盛だ。


 元気になった証だね?


 でも、狼って木苺とか果物のジャムも食べるんだっけ? ……ま、いいか。


 その子と砂浜を走ったり。


 木の棒を投げて遊んだり。


 薬草も摘まないで、いつもより長めの休憩となってしまった。


 …………。


 でも、楽しい時間も終わりが来る。


「それじゃあ、元気でね」

「……ばいばい」


 名残惜しいけど、帰らなきゃ。


『…………』


 手を振る僕と姉さんを、その子の金色の瞳は、ジッと見つめていた。




 森を抜け、やがて村へと着いた。


 でも、僕と姉さんは少し困っていた。


「…………」

「…………」


 後ろを見る。


 僕らの10メートルほど後ろに、あの灰色の毛玉みたいな狼の子がいた。


 村までついて来ちゃった。


「ど、どうしよう?」


 姉さんが不安そうに呟いた。


 …………。


 うん、本当にどうしようね……? 

 


 ◇◇◇◇◇◇◇



「――どうかうちで飼わせてください、お願いします」


 僕は、深く頭を下げた。


 前世では後ろめたくて使えなかった『一生のお願い』って奴です。 


 姉さんも、隣で頭を下げてくれていた。


『キュウ?』


 そんな僕の腕には、灰色の毛玉が大人しく抱っこされていた。


 丸っこい顔は、キョトンとしている。


 …………。


 父さん、母さんは、とても驚いていた。


 事情を伝えると、それから2人でしばらく話し合って、やがて僕らの前に戻ってくる。


「わかった」


 父さんは短く頷いた。


(!)


 僕は顔をあげる。


 母さんは頬に手を当て、


「この5年間で、初めて言ったアナリスのわがままだもの。仕方ないわね」


 そう苦笑した。


 母さん……。


「でも、ちゃんと世話するのよ? しつけもして、悪い子にならないようにね?」

「うん! ありがとう、父さん、母さん!」


 ギュッ


 僕は笑って、腕の中の毛玉を抱きしめる。


『クェ?』


 ちょっと苦しそうだ。


(おっと、ごめんごめん)


 謝る代わりに、モフモフ撫でてやる。子狼は、すぐに表情を蕩けさせた。


 姉さんも笑って、


「よかったね、アナリス」

「うん」


 僕は大きく頷いた。


 そんな僕らを、父さん、母さんは目を細めて眺めていた。


 やがて、


「アナリス。1つ、伝えておく」


 不意に、父さんが言った。


(ん?)


「飼うのは許す。だが、知っておけ。その生き物は、狼の子供(・・・・)ではない」

「え……?」


 キョトンとなる僕と姉さん。


 そんな僕らに、父さんは告げた。


「それは、魔物の子(・・・・)だぞ」


 って。

ご覧いただき、ありがとうございました。


明日からは1日1話更新となります。

もし『面白かった』『続きが気になる』など思って頂けましたら、ブクマや★★★★★の評価などして頂けると嬉しいです。どうぞ、よろしくお願いします♪

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― 新着の感想 ―
[良い点] 連続更新ありがとうございます&お疲れ様ですヽ(´▽`)/ 遂に最後のモフモフ要員が参入してきましたね。 これでユーフィリアに対するアニマルセラピー効果で新しい両親との仲の改善も期待して良い…
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