表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生した弓使い少年の村人冒険ライフ! ~従姉妹の金髪お姉さんとモフモフ狼もいる楽しい日々です♪~  作者: 月ノ宮マクラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/80

070・隠し通路

第70話になります。

よろしくお願いします。

 エルダー神殿の最下層。


 構造は、上階と変わらない。


 でも、空気は重くなり、スケルトンやゴーストとの遭遇率も高くなった。


 ガシャッ


 今も廊下の奥から、スケルトンが10体以上も現れた。


「アタシがやるわ」


 ここまで魔石回収しかしていなかったアリアさんは、前に出た。


 魔法石を光らせ、杖を振るう。


 ボシュウ


 スケルトンの群れが、発生した白い水蒸気に包まれた。


 アリアさんの手には、開封された聖水の瓶もあるので、どうやら聖水の混じった水蒸気みたいだ。


 パシッ パシッ


 白い水蒸気の中で、聖なる火花が散った。


 やがて、蒸気が消える。


 すると、そこには無数のスケルトンの姿はなく、大量の白い人骨が床に転がる光景だけがあった。


「……よしっ」


 アリアさんも満足そうに頷いた。


 …………。


 少数の敵には、姉さんとレイさん。


 多数の敵には、アリアさん。


 それぞれの攻撃の特性に合わせて分担することで、より効率的に魔物を倒しているみたいだ。


(……さすが)


 この辺は、3人の経験ゆえだ。


 …………。


 魔石を回収して、僕らは再び先へと進んだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 地下3階には、光る結晶――魔鉱石がたくさん生えていた。


 僕らはそれも集めていく。


 地下2階より、結晶のサイズも大きい。


 集めた鉱石はそれなりの重量になるので、ミカヅキの荷物鞄に入れさせてもらった。


「楽だわぁ」


 と、笑うアリアさん。


 姉さんも「ありがとね、ミカヅキ」と黒い毛を撫でた。


 ミカヅキはフンと鼻を鳴らして、『別に大したことじゃない』と得意げな顔だった。


 モフモフ


 僕も笑って、その首を撫でてやった。


 そんな中、


「…………」


 レイさんは神殿の地図を見ながら、少し難しい顔をしていた。


(???)


「どうしたの?」


 僕は聞いた。


 レイさんは、


「目ぼしい場所は回ったが、依頼された魔鉱石の量まで足りていなくてな」


 と困ったように言った。


 え……足りないの?


 僕らは顔を見合わせてしまった。


 レイさんの話によれば、どうも神殿内で生成されている魔鉱石の総量自体が少ないみたいなんだ。


 レイさんは悩ましげに、


「前回の採掘から再生成までの時間が足りなかったのかもしれない」


 と呟いた。


 つまり、神殿に訪れる間隔が短すぎた、と。


 この場合、責任を負うのは、依頼者からクエストを受諾した冒険者ギルドだ。


 元々、品がないのだから僕らに非はない。


 でも、クエスト自体は達成されないので、当然、報酬は減額だった。


 アリアさんは「マジで……?」と嘆いた。


 姉さんは、


「冒険者をしていると、たまにこういうこともあるんだよ」


 と、ため息だ。


(そっか)


 見たら、レイさんも端正な顔を残念そうにしていた。


 気にしていないのは、人間社会の事情がわからないダークウルフだけだ。


 …………。


 僕は、これまで歩いてきた廊下を振り返った。


 ここまで、見つけた魔鉱石は全て集めた。


 これ以上は、もうそんなに探索する場所もないらしいし、魔鉱石もそこまでないだろう。


(……あれ?)


 その時、ふと違和感を覚えた。


 その理由を考える。


 …………。


「レイさん、ちょっと神殿の地図見せて」

「うん?」


 僕は、レイさんから地図を借りた。


 地面に置いて、四つん這いになって覗き込む。


 ここを歩いて……。


 ここで曲がって……。


 これだけ歩いて……。


 頭の中で思い描いた地図と、目の前にある地図を比べていく。


「アナリス?」


 姉さんは不思議そうな顔だ。


 レイさん、アリアさんも僕の行動を怪訝そうに見ていた。


 …………。


 やっぱりおかしい。


 僕は地図の1点を指差して、


「地図のここ、おかしい。実際に歩いた距離はもっと短いよ? この壁の後ろに、少し空間があると思う」


 と言った。


 3人のお姉さんは、顔を見合わせた。


 でも、僕の森で鍛えた空間把握の感覚では、明らかに地図と実際の構造に差があったんだ。


 僕は立ち上がった。


 姉さんを見つめる。


 姉さんは頷いて、


「そうだね。アナリスが言うんだもの。その壁、ちょっと調べてみよう?」


 そう微笑んでくれた。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 その壁までやって来た。


 一見、廊下の突き当りにある普通の壁だ。


 でも、


(やっぱり違う)


 実際にそこまで歩いた距離と、地図では差があった。


 レイさん、アリアさんにはわからないみたい。


 でも姉さんは、僕を信頼した顔だ。


 コンコン


 鞘に入った山刀で壁を叩く。


 カンカン


 他の壁とは、ここだけ明らかに反響する音が違った。


 間違いない。


「ミカヅキ」


 僕は頼れる相棒に頼んだ。


 巨体のダークウルフは『ワォン』と応じて、壁へと近づき、太い後ろ足を振るった。


 ドゴォン


 衝撃音が響き、蹴られた壁に大穴が開いた。


 穴の向こうには、空間が広がっている。


 やっぱりだ。


 姉さんたち3人は、とても驚いた顔だ。


「隠し通路?」

「……嘘」


 姉さん、アリアさんが呟いた。


 レイさんは、


「これまでの探索で誰1人、見つけられなかったのか……」


 と呆然としていた。


 3人が僕を見る。


「本当に凄いな、アナリス君は」


 レイさんが3人の気持ちを代弁するかのように、そう言った。


 褒められて、少しくすぐったい気持ち。


(えへへ……)


 僕は照れ笑いだ。


 これまでの冒険者も、ギルドでさえも把握していなかった未知の領域。


 でも、だからこそ、魔鉱石も、そして、もしかしたらそれ以上のお宝も見つけられるかもしれない。


 危険度は増すけれど。


 それでも、僕らは冒険者だ。


 特に姉さん、レイさん、アリアさんの3人の瞳には、未知へと挑む強い輝きが灯っていた。


 僕は笑った。


「この先に行ってみよう?」

「うん」

「あぁ」

「もちろんよ!」


 3人も笑って頷いた。


 …………。


 エルダー神殿に隠された謎の通路。


 その暗闇の奥へと、僕ら4人と1匹は入っていったんだ。

ご覧いただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ